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11 13, 2020
11 13, 2020

総合格闘技とCounter-Strikeの奥深さ

総合格闘技とCounter-Strikeの内側を知る

総合格闘技:痛いものは痛い

CS:位置が最も重要

総合格闘技とCounter-Strikeの奥深さ

Duncan "Thorin" Shieldsが、総合格闘技とCounter-Strikeの両方に存在する奥深さと、多くの人がそれらを観戦するようになる理由にフォーカスしたコラムをPinnacleに向けて初めて執筆します。

Anderson Silvaによるこれまでの強烈なノックアウトやOleksandr "s1mple" Kostylievのモンスター並みの爆発的なMVPパフォーマンスを見れば、スポーツとしての総合格闘技とeスポーツとしてのCounter-Strike: Global Offensive (CS:GO)が新しい観客に容易に、そして急速に受け入れられている理由がすぐにわかります。派手な戦いに隠されたスタイル、戦略、戦術について考えようとするかなり前に、これらの種目はあらゆるエンターテイメント要素を満たすのです。

私が仕事と生活で大切にしている哲学は、「手に入るものは自分が差し出すものによって決まる」という考えです。総合格闘技とCS:GOは画面で見られる最もスリリングな戦いに含まれますが、もう少し深く掘り下げてゲームについて学ぶまでは、全体の一部しか見えないでしょう。

総合格闘技の戦いでは荒々しさが際立った攻撃しか楽しめず、危険で展開の速い乱闘のみをCS:GOゲームとするなら、時にがっかりすることになるはずです。しかし私のコラムをお読みいただければ、表面下で展開するチェスの試合を知ることができ、これにより別の種類の争いで満足を得られるかもしれません。

コインの裏側

総合格闘技では、その競技が一気に広がり、多くのステレオタイプが生まれました。おそらく定番で伝統のある重量級ボクシングのタイトルマッチ以外に、本格的な格闘技やさまざまな種目を見たことがない人たちが、ノックアウトが一般的でありながらも予測不可能に見える新しいスポーツを発見したのです。

Astralisは長年、Team Liquidを意のままにしてきましたが、それはチームの大部分が待ち伏せを得意とし、奇襲の力を借りて彼らを倒してきたからです。

新しいファンは劇的なノックアウトや極め技に中毒的な興奮を感じましたが、一方で格闘技の表面的な部分しか見ていませんでした。こうした「血だけを求める」ファンは、自分が理解できる暴力とノックアウトを求めました。確かにこれは最初に総合格闘技を消費するための1番手っ取り早い方法であり、競技の解釈としては1番浅いレベルです。

しかし、総合格闘技のファストフード的な魅力には不都合な点があります。それは、こうしたファンは試合でレスリングのプレッシャーやテイクダウンのディフェンス、ブラジリアン柔術の極め技の攻防が中心になると概して不満を感じることです。彼らには、選手たちが戦いを避けているか、現代の戦争のイメージに関わることを恐れているように見えるのです。

この競技の露出が増え、あまり知られていない種目から偉大なチャンピオンが生まれ、総合格闘技の解説や分析が増え続けることによって、Khabib Nurmagomedovの痛くて苦しいレスリングが、対戦相手を遠くに吹き飛ばすAlistair Overeemのノックアウトのように素晴らしく恐るべきものであると多くの人が理解するようになりました。Demian Maiaのブラジリアン柔術の名人技も、必殺の左手で対戦者に触れるだけで戦いの風向きをあっという間に変えるConor McGregorと同様に芸術的なものです。それでも、基本的かつ必須のコア概念に気づく方法を知ることで、その直感的な学習をスピードアップさせることができます。

同様に、Nikola "NiKo" Kovačの滑らかながら驚くほどぶれないAKでの狙撃や決闘スタイルは感覚的なレベルですぐに視覚に訴えるもので、多くの注目映画の素材になりそうです。天才スナイパーKenny "kennyS" Schrubの非現実的なフリックをエンターテイメントとして認識するのに、理解はほとんど必要ありません。

CS:GOには、「血だけを求める」ファンがいて、お気に入りのチームについて、体力サポートの要素やチームのダイナミクスを犠牲にして、射撃能力や素質のあるプレイヤーをさらに追加するように求めるコメントを投稿することがあります。AstralisやENCEのように両面で成功することで、そのようなファンにゲームの別の面を見せ、プレイヤーの頭脳やコミュニケーションスキルがマシンを操作するスキルや射撃の才能と同じくらい重要であると伝えることが望まれます。

Astralisの強者Danesが終盤戦で戦術を実行する力は、Na`Viを劣勢から勝利へと導く、ありえないレベルの"s1mple"のノースコープに匹敵します。Finn "karrigan" Andersenのチームの「高速チェス」ミッドラウンドコーリングスタイルは、Jonathan "EliGE" Jablonowskiの分散を恐れない一斉射撃と同じくらい価値があります。

フィルターをリセットすれば、「床の上でただ取っ組み合っている」ような「退屈な」戦いが、実は心臓が口から飛び出そうなくらいの激しい争いであるとわかり、この倒れた対戦相手が隙を見せれば、Khabibに手ひどくやられることになると理解できるでしょう。AstralisとTeam Liquidの「スローな」対戦は、実際に過去の数々の試合を反映したゲーム内のゲームであり、他のほとんどのチームにとって危険な侵略者である北米のコブラがデンマークのマングースの攻撃を警戒しているのがわかります。

頭脳ゲーム

総合格闘技で、強力なストライカーがブローを決めるチャンスだけを狙っているところや、優れたグラウンドファイターがテイクダウンを狙って抱え込んでるところを想像するのは簡単でしょう。しかしながら、総合格闘技の「総合」の部分は、ファイターがアリーナに入った瞬間から常に発生していると認識することが重要です。

CS:GOには、「血だけを求める」ファンがいて、お気に入りのチームについて、体力サポートの要素やチームのダイナミクスを犠牲にして、射撃能力や素質のあるプレイヤーをさらに追加するように求めるコメントを投稿することがあります。

強いレスラーと戦う優れたストライカーは、遠慮なくコンビネーションや激しいパンチを自由にくりだすことができません。なぜなら、当てそこなうと対戦相手にテイクダウンのチャンスを与えることになり、ラウンドの残りを相手のファイターが得意な分野で苦しむことになるとわかっているからです。有名なブラジリアン柔術一族の一員であるGracie一族は、かつて「グラウンドは海であり、私はサメである。そして、ほとんどの人は泳ぎ方すら知らない」と述べました。

レスラーが優位な体勢でグラウンド戦に持ち込むと、それほど動きがないように見えることがあります。初心者は「ただ相手の上に乗っているだけで、下の相手は逃げ出そうともしない」と言うかもしれません。レスリングは、相手の意思とは反対に、そして自分の思い通りに相手の身体を動かすスポーツです。KhabibやGeorges St-Pierreなら、グラウンドポジションの間中ずっと相手に自分の体重をかけるでしょう。

立ち上がろうとしているのに背中に身体の大きな男が乗っているところを想像してください。あなたが手で守るのをやめた瞬間、彼は殴りかかってくるでしょう。もしくは、彼の体勢によく注意していないと、極め技をかけてくるかもしれません。これは15分から25分間(インターバルあり)に起こりうることで、そこに倒れている間ずっと、今後の稼ぎが決まる試合で負けそうになっていると見られていると思ってください。

これは、最高のストライカーは長所だけにこだわり、レスリングのテイクダウンの防御やブラジリアン柔術の極め技のよけ方を学ぶことに時間を使っていないということではなく、対戦相手が彼らの種目の技では世界最高レベルだということです。あなたは三角締めやアームロックなど、主な基本的な極め技に対する防御やカウンターを知っているかもしれませんが、相手選手はグランドマスターであり、あなたは良いチェスプレイヤーにすぎません。

優れたブラジリアン柔術の選手は移行するときにゆっくり動かず、何をしようとしているか、どこに移動しようとしているのかを悟られないようにします。股関節の動きと過去の攻撃に関する多くの経験から、彼らは対戦相手に対し3つか4つの動きをつなげ、流れるようにローリングして、マウントするか、優位な体勢に持っていくことができます。

戦いで極め技の持つ強みは、上にいるファイターが有利だという従来の原理を覆すこともでき、チャンスがあれば下側から極め技によってすぐに戦いを終わらせることができるという脅しをかけられることです。Tony Fergusonは快適な「ボトムポジション」(他のほとんどのファイターが恐れるポジション)のおかげで暫定王者になりました。

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フェイントとコンビネーションには攻撃に匹敵するものもあります。ここで重要な概念となるのは、手の速さや力ではなく、正確さとセットアップです。キックからジャブ、そしてフェイントのテイクダウンにより、相手の両手が開き、下を見るので、どこからでもアッパーカットでノックアウトできるようになります。

自宅で観戦している分にはとんでくるパンチが見えますが、ファイターの視点からは相手が急に腕や脚を引いた瞬間しか見えず、多くの優れたファイターは突然ブローがとんでくると言います。スタンディング戦ではフェイントや攻撃を生まない素早い動作が多いのも不思議ではないため、ソファーでごろごろしてテレビを見ている人にとっては無意味に見えるかもしれません。

痛いものは痛い

思わず笑いを誘う、80年代の名作映画「ロードハウス」で、Patrick Swayzeが演じる人物が「痛みは痛まない」とひねったセリフを述べることで、銀幕にしか存在しない「タフガイ」という概念を示しました。総合格闘技の奥深さやニュアンスのもう1つの要素は、はた目にはわからなくても、それほど暴力的に見えない、もしくは痛そうに見えない特定の動きがどれほど痛いかということです。

Khabib対Justin Gaethjeの試合で、KhabibはグラウンドポジションでGaethjeの口を繰り返し覆うという彼の特徴的なアプローチを用いました。たとえ一瞬であっても、これにより1人分の体重がかかるファイターは十分な酸素を得ることができなくなります。彼は繰り返しGaethjeに顔にネッククランクをかけようとして、このアプローチに変化をつけたものでした。

総合格闘技のレジェンドDominick Cruzが解説ブースからすぐに指摘しましたが、これは首を締めたり、極め技をかけたりするための動きではなく、ただ相手に痛みを与えるものでした。あなたは骨が折れるかもしれないというプレッシャーを感じているときに、観客はあなたが意識を失う危険はないのに、戦いから抜け出したくて床をたたいているのだろうと考えているところを想像してください。

ボクシングのファンは、レバーブローがいかに残酷であるかを知っているかもしれません。あまりの痛みに相手は意識を失う可能性がありますが、最も正当な評価を得ていないブローはキックです。キックはあまり痛そうには見えず、ファイターはできるだけ痛みを表に出さないようにするので、ただブローが通り過ぎたように見えるかもしれません。

しかし、脚の筋肉へのダメージは痛みだけでなく、後からファイターの動きに影響し、最終的に数週間動けなくなることもあります。Jose Aldoのキックが痛いかどうかは、Urijah Faberに聞いてください。

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相手を繰り返しキックすると、すぐに戦いのペースが上がることが多く、相手は前に飛び出して強力な攻撃をくりだすか、テイクダウンを狙ってきます。痛みを感じたり、動きの制限が避けられないときにそうなります。

位置が最重要

Counter-Strikeでは、ゲームを単純に一連の戦闘に分けることができます。これらはよくプレイヤー同士の1対1の決闘、もしくは各チームの人数によって3v3、3v4などと呼ばれます。ここで認識すべきコア概念は、戦略のスタイルと特定の戦術的な動きに基づいてプレイヤーは戦いが起こる場所に配置されるということです。

"s1mple"は、私自身も含めて多くの人から歴史的なベストプレイヤーとして称賛されていますが、Astralisに負けることがよくあります。というのは、Astralisは集団で彼に戦いを挑み、彼を配置地点から追い出し、ほとんどの状況で彼が有利になるユーティリティを使用しない1対1の戦いを避けるためです。

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T側(ゲームの攻撃側)が早くからマップで攻撃を始めた場合、最前線のポジションにいるプレイヤーはただ戦闘を待っているのではなく、後から続いてくるチームの仲間のために空間を作ろうとしています。最初に閃光手りゅう弾を投げ、様子をうかがうことは、時に誰もおらず、無駄に見えることがありますが、実際は陣地をとって確保するためであり、チームの残りのメンバーはチームのスタイルに基づいて、次の戦術またはプロセス段階に移行することができます。

チームがチームプレイと実行能力に優れているほど、彼らはユーティリティを投げ、一度にすべてを使い切っているように見えることがありますが、これは優れたブラジリアン柔術の選手がサイドコントロールからマウントポジションへスムーズに移行する場合と似ています。

エントリープレイヤーが戦うときは、虚勢の張り合いは行わず、より優れた狙撃能力や力ですべての戦いに勝とうとします。彼らは完全に自分たちの役割をチェス盤の前線の駒として認識しています。ポーンを犠牲にして相手の駒の1つをとり、チェスで優位な位置をとろうとするように、彼らは「トレードフラッギング」の原則を適用します。この場合、チームの仲間は待機して、あなたをキルしたプレイヤーをキルするか「リフラグ」して防御側のプレイヤーを排除し、特定のマップロケーションを確保します。

Counter-Strikeの一般的なルールとして、キルのトレードは攻撃側が有利になります。残っている防御側プレイヤーはさらに散らばることになりますが、T側は撤退してマップの反対側を攻撃することを決めることができるので、両方のサイトを守らなければいけなくなります。ENCEやRenegades(のちの100 Thieves)のようなチームは、このアプローチを用いて、キルの能力がはるかに高く強力だと思われるチームに対して強いT側をぶつけます。

見えないプレイヤーの影響

マップ上のプレッシャーとユーティリティの残量は、時に敵の心に存在する見えない要素であり、画面上でプレイヤーの意思決定を解読するための重要なダイナミクスであることに変わりはありません。Astralisは長年、Team Liquidを意のままにしてきましたが、それはチームの大部分が「待ち伏せ」を得意としているからです。敵が誰もいないだろうと考えてマップの別のエリアに移動しようとしているところを、プレイヤーは待ち伏せし、奇襲の力を借りて彼らを倒すのです。

Astralisのプレイヤーの位置を把握している正面からの対決では、Team Liquidは優れたプレイヤーであることを証明できますが、Astralisとの大試合でAstralisのプレイヤーの正確な位置がわからず、彼らのコミュニケーションがいかに優れているかを知っていると、TLのスターはのぞき見のアングルや狙撃への集中よりもはるかに多くのことに気をとられることになります。

スターフラッガーが敵と戦う場合でさえ、武器の操作にそれほど優れていないプレイヤーが勝算を均等にできる方法があります。優れたコミュニケーションとチームプレイがあれば、チームはスターを追い払うか、隠し持ったグレネードで罠にかけると脅すことができます。

あなたは世界最高のアーチャーだとします。あちこちであなたに向かって照射し、背後から大きな音で耳が聞こえないようにしてくる誰かを狙っているところを想像してください。それによって慌ててしまうことが容易に想像できるでしょう。

ユーティリティがすぐに届かなくても、チームがユーティリティを節約することで有名であると知っていれば、同じ攻撃的なアングルを保つことはできません。上記のシナリオが再び現実になってしまうからです。

CT側でもT側でも、人数におけるアドバンテージはあらゆる種類の心理戦の前触れとなります。試合を見守っている私たちは、すべてのプレイヤーの位置と彼らがどれだけ素早くお互いに辿り着けるかを知っています。プレイヤー自身がわかるのは、自分の目で見たこと、やりとりしたこと、もしくは推測できることだけです。不利な点がたくさんあると、同じアングルをじっくり見て、横から攻撃される可能性があったり、すぐにマップの別の場所に移動する必要があるかもしれないと知ることができません。

この目に見えないプレッシャーは敵の心にのしかかり、優れたチームは敵の衝動的な行動を引き起こします。Gabriel "FalleN" ToledoのSK Gamingチームは、2016年にこのコア概念を習得し、その年は2度メジャーチャンピオンとなり、それ以降は終盤ラウンドのシナリオで一度も負けていないようです。

目を大きく開く

こうした概念を身に着け、今後観戦する総合格闘技の試合やCS:GOの試合でそれらを見つけようとすれば、試合のまったく新しい魅力を楽しめることに気が付くはずです。以前は、感覚的なレベルで面白い試合かつまらない試合か、しかありませんでした。まだ面白味に欠ける試合はあるでしょう。しかし、これらの種目の戦略的、戦術的な面が魅力的に見え始め、プレイヤーの精神、テクニック、スタイルの間で展開するチェス試合を楽しむことができるはずです。

アクションと一緒に、プレイヤーたちが見せる心理戦を楽しんでください。

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筆者について

Duncan Shields

Duncan "Thorin" Shields is the Esports Historian, having worked in the industry on games including Counter-Strike, League of Legends, and StarCraft since 2001. Renowned journalist and studio analyst, Thorin brings his wide expertise to a new column for Pinnacle.

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