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10 28, 2020
10 28, 2020

Fnaticのアイデンティティクライシスを解決した変革

eスポーツチームとしてのアイデンティティを見いだす

競争の激しいLeague of Legendsの進化

eスポーツチームでの信頼

eスポーツのプロの数値化できない資質

Fnaticのアイデンティティクライシスを解決した変革

LoLはキルとデスのみで定義されるゲームではありません。多くの数値化できない要素が影響します。この記事ではFnaticについて注目し、"Bwipo"と"Hylissang"がチーム内でどのように変革を起こし、ゲーム史に名高いチームというアイデンティティを克服できたかについて、詳しく調べています。

Fnaticのアイデンティティクライシスを解決した変革

FnaticのLeague of Legends (LoL)チームは、World Championshipの準々決勝でLoL Pro League (LPL)チャンピオンのTop Esports (TES)に3-2で敗れ、シーズンを終えました。2020年を振り返ると、Fnaticがチャンピオン候補をもう少しで破るところだったのは大変驚きでした。これから説明するとおり、Fnaticという集団にとって今シーズンは調子が悪く、ストレスがたまるものでしたが、最終的には今後に期待が持てる年となりました。

LoL European Championship (LEC)の春季リーグにおいて、Fnaticはプレイオフの始め頃は非常に好調にみえましたが、決勝戦ではG2 Esportsに3-0で完敗しました。その後、4ゲーム連続で負けるなど、悲惨なレギュラーシーズンがあった後、夏季リーグのプレイオフになんとか進むことができました。

夏季リーグは春季と同様の展開となり、Fnaticは、最初は調子が良かったのですが、決勝戦で再びG2 Esportsに(3-0で)あっさりやられてしまいました。FnaticはSummer決勝戦のわずか1週間前に見事なベストオブファイブマッチでG2を倒したばかりであったため(Fnaticのレギュラーシーズン中のパフォーマンスを考えると、勝利自体が非常に驚異的だったのですが)、この敗戦はよりいっそう辛いものでした。

FnaticはLECの大半のゲームで途方に暮れた様子で、それ以来プレイヤーたちはチームがアイデンティティクライシスに陥っていることを認めてきましたが、最終的には解決へと向かっているようです。

競争の激しいLoLの進化

何年もの間、私たちは韓国の完璧なマクロプレイにだまされていました。韓国チームは非常に長い間圧倒的な強さを誇っていたため、その低速で制御されたアプローチのみがゲームのプレイとして真に効果的であると、大勢が思い込んでいました。今も状況は変わらないと考えるエリート主義者もまだいますが、ここ数年での韓国の国際大会での戦績からして同意しかねます。

競争の激しいLoLは変貌しています。試合のテンポが大幅にスピードアップしたため、ビジョンのコントロールのみによる勝利は現実的ではなくなり、タレットプレートが追加されて、現在ではゲームの早い段階での積極性が不可欠となっています。

現在、世界の強豪チームは、独創性に恵まれ、容赦なく相手を攻撃するため、どのような小競り合いでも勝つことができます。そのため、LoL Pro Leagueのチームは成長しています。このようなチームは、勝算のある戦いについて、ゴールドでリードしている時や数の上で優位である時ではなく、敵に勝つことができると確信している時だと名言します。この理念によって、ほとんどのチームが想像だにしないチャンスを見つけることができます。

ヨーロッパ人のコーチであるJakob "YamatoCannon" Mebdiは、よく知られているように、Worlds 2018でEUチームをまとめるために「自分自身に忠実であり続ける」ように言いました。時間はかかりましたが、Fnaticはそれが自分たちにとって何を意味するのか、やっと気付きつつあります。

Fnaticの反撃

Fnaticの中では変革が起こりつつありますが、その立て役者はトップレーナ―のGabriël "Bwipo" RauとサポートプレイヤーのZdravets "Hylissang" Galabovです。この2人はチームの中核となるプレイヤーで、チームの再建に欠かせない人材です。

チームの才能ある人材を考えると、多くの人にとってこれは意外な事実かもしれません。ボットレーナーのMartin "Rekkles" Larssenがすでに伝説的なキャリアを持つ同グループの顔であることは間違いなく、キャリージャングラーのメタ(Oskar "Selfmade" Boderekが威力を発揮しています)によってFnaticがチームのスタイルを見いだしたことも、Oskerが明らかに今年のチームの成功の主な要因であったことも事実です。

ただし、Oskarの仕事は"Bwipo"と"Hylissang"のコンビがいなければもっと困難なものになっていたでしょう。彼ら2人が何年も罵りや非難に辛抱強く対応しなければならなかったことを忘れてはいけません。LECとFnaticのファンは両プレイヤーを何度も問題視してきました。交代させるよう訴えるファンまでいました。両プレイヤーは実際何度も死んでいるので、批判が挙がるのももっともですが、Fnaticにはこの2人がもたらす攻撃性が必要だと、私は心から信じています。

幸運にも"Bwipo"にインタビューする機会が何度かありましたので、感銘を受けた彼の言葉から、1つご紹介します。「もしチームが勝っていなければ、自分がFnaticに適したプレイヤーだと考えるのは難しいです。Hylissangも同じだと思うのですが、もしFnaticの成績が悪ければ、私たちはインティング(意図的にフィード)しているように見えます。私たちは戦わずに屈する気はありません。勝つ可能性が1%しかないと思っても戦います。100%何もしないより、その1%を取るほうがましです。」

最後の部分は、私が述べたLPLチームの理念と非常に似ているように思いませんか?

LoLはキルとデスのみで定義されるゲームではありません。多くの数値化できない要素が影響します。そして、この理念を"Hylissang"ほど体現しているプレイヤーはいません。このブルガリアのプレイヤーは謎に包まれています。World Championshipのサポートの統計データを見れば彼のトーナメントでの成績は良くなかったと思うかもしれませんが、実際にゲームを観戦した人であれば強く異議を唱えるでしょう。

TESとのシリーズの前は、Fnaticはマッチのうちすべてのシングルマッチでファーストブラッドを取り、キルの半分にボットレーンのコンビが関与していました。その後FnaticがTESに勝った2ゲームでは、両方のファーストブラッドキルを、"Hylissang"と"Rekkles"がどうにか敵を脅してボットレーンで取りました。シリーズを通して"Hylissang"の素晴らしい攻撃が見られました。ゲーム1だけで、元世界チャンピオンのYu "JackeyLove" Wen-Boを複数回のチーム戦でなんとかキャッチしました。

Bwipo:「私たちは戦わずに屈する気はありません。勝つ可能性が1%しかないと思っても戦います。100%何もしないよりもその1%を取るほうがましです。」

しかし、"Hylissang"はそれよりもはるかに多くのことをしています。多くのプロが指摘してきたように、彼のレーンにいる敵はめったに有利なリコールを見つけることができません。このブルガリアのプレイヤーは、常にとんでもない圧力をかけ、サポートが可能なプレイの限界を押し広げます。彼こそ、単独で横から攻撃したり、インヒビターにバックドアを仕掛けたりするつもりなのです! "Hylissang"は現在、最もユニークなプロプレイヤーの1人であり、G2創設者のCarlos "Ocelote" Rodríguez SantiagoがこのFnaticのサポートを「世界で最も過小評価されているシングルプレイヤー」と決めつけたのはそのためです。

LECアナリストの立場にある人たちが何度も言っていたのですが、Fnaticが恐ろしいのは、敵に何度も何度も、瞬時に判断することを強いる能力があることです。常に敵に圧力をかけてオブジェクトの交換か交戦かを迫るため、息をつく暇もありません。

当然、"Hylissang"が与える圧力は戦略に不可欠なのですが、"Bwipo"も重要な役割を担います。このベルギーのプレイヤーは、多くの試合で弱点となっているにもかかわらず、ほぼ常にゲームに関わり続ける方法を見いだしています。愚かなデスをするという評判がありますが、World Championshipの準々決勝の時点では、すべてのトップレーナーの中で平均デス数が2番目に少なく(2.3)、チームのダメージシェアの高さは2位タイ(25.7%)を維持していました。

TESと対戦したシリーズを再度見て、私は"Bwipo"がチームの戦いに与える影響に気付きました。"Bwipo"は有利な攻撃を数多く見つけただけでなく、TESのプレイヤーたちを繰り返し分裂させて、同時に3人のチャンピオンを撃退することができたため、チームは敵の残りのプレイヤーを追跡する前に、タンクや優先度の高いターゲットを狙い撃ちすることができました。

"Bwipo"には適応力もあります。予想外のピック(シンジドなど)を取ることや、TESとのゲーム5のようにキャリーの役割を担うことさえできます。このゲームでは17分の時点で最も多くのゴールドを所持し、Bai "369" Jia-Haoをソロキルしました(チームの他のプレイヤーはかなり後れを取ったので活用できませんでしたが)。柔軟性は重要な特性ですが、もっと重要なことは、敵に挑戦することへの恐怖心を常に持っていることです。

Fnaticの将来は明るい

準々決勝でのFnaticのコミュニケーションを聞いて、わずかですが興味深い成長の兆しに気付きました。ゲーム1では、"Hylissang"は素晴らしい究極のラカンを見いだし、"Rekkles"にトリプルキルをもたらしました。"Bwipo"がミッドのウェーブを攻撃してエンドに行くよう呼びかけると、"Rekkles"は安全にプレイしようと少しの間考えますが、最終的には"Bwipo"を頼りにして「君を信じるよ」と言っています。

かつて、必ずしも共通認識を持っていなかったように見えたのが、このやり取りをしたのと同じFnaticです。一部のプレイヤーが攻撃しようとしても、他のプレイヤーが従おうとしないことがよくあったのです。今では、そういった経験があるにもかかわらず、"Rekkles"自身が成長していて、インタビューで話していたように、より多くのリスクを引き受けることができるようになっています。

Fnaticが次のシーズンの前に登録選手を変更する可能性は十分あります。そもそも一流の組織は優勝のなかった年に満足しないためです。しかし私は、現在のラインナップが正しい道を進んでいると思います。

個人的には、Fnaticが"Hylissang"と"Bwipo"の攻撃に従い、この2人の能力を最大限に引き出すことに純粋に集中し、"Selfmade"とチームメイトとして戦ってほしいと常に考えており、そうなるだろうと思っています。

G2が、このままずっとヨーロッパでトップを譲らないプレイヤー集団となる可能性もまだありますが、そこに遅れずについていくことができるFnaticのラインアップがその座につく可能性があると私は考えています。

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筆者について

Jack Stewart

スポーツジャーナリズムで経験を積んだJackは、数年前、イギリスの新聞で初のeスポーツ常勤ジャーナリストとなったのを機にeスポーツ分野でのキャリアをスタート。ここ数年はLeague of Legendsを徹底的に追い求め、Pinnacleで専門的な見識を伝えています。

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