10 1, 2019
10 1, 2019

パート2:テニスの試合における勢いのモデル化

モデルの長所と短所を知る

第1セットから第2セットへの勢いを測る

サーブの確率とマッチトータルベット

サーブの確率とハンディキャップベット

パート2:テニスの試合における勢いのモデル化

前回の記事で、Jonathon Bryckiはテニスにおける勢いが試合結果にどう影響するのかを説明しました。今回の記事では、そのモデルをさらに細かく発展させ、さまざまなベット市場におけるテニスでの勢いの影響を分析します。詳しくは、この記事をお読みください。

モデルの長所と短所を知る

この記事のパート1で、サーブの確率を使用してテニスの試合におけるセット間の勢いをモデル化するためのアプローチを説明しました。その中で、各セットの最後にサーブの確率予想を更新するだけでは十分でないことを示しました。そうした理由から、このモデルは、トータルとハンディキャップの価格を付けられないという点で限界がありました。

パート2では、テニスの試合中のセット内およびセット間両方の勢いをより反映するモデルに更新する方法を取り上げます。

パート1で、選手は1セット目を取ると、平均して2セット目も取る可能性が高いことを示しました。より動的なモデルを構築するための第一歩として、1セット目の得点差が2セット目の勝者と得点差にどう関連しているかを見ていきましょう。

第1セットから第2セットへの勢いを測る

以下の図は、1セット目の勝者の(1セット目のゲームの)得点差と2セット目の勝率を示しています。例えば、試合に勝つ間接的確率が71~80%で、5または6ゲーム差(6-1または6-0)で1セット目を取った選手は、83%の確率で2セット目を取ります。 

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1セット目の得点差と2セット目の結果には、正定値の関係があるように見えます。この関係は大穴にとっては破綻を意味しますが(間接的確率が20%以下)、この範囲での試合はほとんど見られません。この結果をさらに分解して、1セット目の得点差と2セット目の得点差を比較してみましょう。

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ここでも、勢いの影響が見られます。平均的に、1セット目の得点差が大きいと2セット目の得点差も大きい傾向にあります。これらの結果を踏まえ、本記事のパート1で示した方法で、2セット目で必要となるサーブ確率の平均的な変化を更新します。

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これで第1セットの後で必要となる、2セット目のサーブ確率の更新の大きさがわかります(得点差もわかりました)が、これらを各ゲーム後、できれば各ポイント後へと、もっと動的に更新したいと思います。次は、セット中にどの差分更新を行うか決定します。

サーブの確率とセットスコアの関係(と必要なスケーリングの大きさ)を判断するために、30,000試合をシミュレーションし、さまざまなスコアのサーブ確率の差を計算しました。

私は各ゲーム後に選手のサーブ確率を変更して、セットごとの勢いを反映させることを提案します。この更新の計算は、スコア(サーブのブレイク数を含む)と、選手の実際のサーブ確率を両方使用します。

これら2つの変数の予測力はややかぶるところがあります。しかし、場合によっては、片方が何かを示し、もう一方は何も示さないことがあります。例えば、イーブンマネーの試合で、3-3のスコアと4-2のスコアを比べた場合、選手のサーブ確率は両方とも同じである場合がありますが、4-2でリードする選手はそのセット(と次のセットも)を取る可能性がより高くなります。同様に、3-3ではスコアこそ同じですが、サーブ確率は異なることがあります。

各ゲーム後に適用するサーブ確率の更新の割合を決めるために、30,000回のシミュレーションから推測した、各選手がセットを取る可能性を使用します。以下の図は、イーブンマネー試合のセット取得の可能性をまとめています。例えば、6ゲーム後でサービスブレイクが1回ある場合(スコアは4-2)、リードしている選手は88%の確率でセットを取ることが予想されます。私のモデルでは、試合のその時点で当該選手のサーブ確率を88%に調整します。

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この調整は、各ゲーム後の相対的なサーブの強さに応じて変更します。相対的なサーブの強さとは、選手1と選手2のサーブ確率の差です。 

サーブの確率とセットスコアの関係(と必要なスケーリングの大きさ)を判断するために、30,000試合をシミュレーションし、さまざまなスコアのサーブ確率の差を計算しました。例えば、2ゲーム差(6-4または7-5)でセットが終了した場合、サーブ確率の平均的な差は勝者の方が9%高くなります。 

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上記の計算を使用して、試合の各ゲーム後にサーブ確率を動的に更新することで、モデルのシミュレーションを行い、それをATPの実際の試合結果と比べます。以下の図は、モデルの30,000回のシミュレーションと2010年以降のATPの全試合を表したもので、(試合の勝者の)間接的確率は40~60%です。 

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このモデルは、本記事のパート1で示したものから改善されているようです。しかし、それでも18以下のゲームトータルを低く見積もっています。これは、一方的な試合の調整をより迅速に行う必要があることを意味します。

テニスはセットに基づく得点方式なので、1セットで1回または2回ブレイクされた選手は興味を失うか、次のセットに向けてエネルギーと集中力を節約するかもしれません。これ(より広く言うと、短期的な勢いも)を反映するため、「セット内」の勢いの要素を含めて、上記の「セット間」の更新を補完する必要があるのではないかと考えます。

ゲームごとのデータがなかったため、シミュレーションによりこの要素の大きさを算出しました。わかったことは、このモデルでは「セット内」のパフォーマンスを迅速に調整する必要があるということです。

必要になるサーブ確率の更新の大きさは、「セット間」変数のほぼ2倍でした。さらに30,000回シミュレーションを行うことで、「セット内」の勢い要素を追加して精度を向上させることができます。

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サーブの確率とマッチトータルベット

このモデルを使用して、マッチトータルの価格を知ることができます。まず、サーブ確率を変更するときに、トータルゲーム市場がイーブンマネー試合でどのように変化するかを見ていきましょう。以下の表では、各サーブ確率について10,000試合のシミュレーションを行い、マージン市場は考慮しませんでした。

選手の最初のサーブ確率が50%から72%に増えた場合、トータルゲームのラインは19.5から25.5に増えます。

サーブ確率

ライン

アンダー

オーバー

50%

19.5

1.99

2.01

54%

20.5

1.90

2.11

58%

20.5

2.05

1.95

62%

21.5

2.06

1.95

66%

22.5

2.00

2.00

70%

23.5

1.96

2.04

72%

25.5

2.02

1.98

サーブ確率が72%を上回ると、少なくとも26ゲーム(2回のタイブレークセット)が本命になります。これをコンテクストで見ると、ATPトップ50で最も高いサーブ確率を誇る選手は、サーブで約72%のポイントを稼ぐイスナーとフェデラーになります。

マッチトータル25.5を正当化するATPのマッチアップはごくわずかです。そのマッチアップは、同じくらい本命視されている、サーブが得意でリターンが苦手な選手同士の組み合わせとなります。イーブンマネーの試合ではなく、1.50の本命がいる場合、これらの市場はどうなるでしょうか?

サーブ確率
本命

ライン

アンダー

オーバー

50%

19.5

1.98

2.02

54%

19.5

2.04

1.96

58%

20.5

1.91

2.10

62%

20.5

2.08

1.92

66%

21.5

2.16

1.86

70%

22.5

2.19

1.84

72%

23.5

1.90

2.11

サーブの確率とハンディキャップベット

次は、ハンディキャップの試合を見ていきましょう。ATPの平均サーブ確率が64%の場合に本命およびアンダードッグ(格下)のサーブ確率を変えて、試合のオッズがゲームのハンディキャップラインにどう関係するかを調べます。 

サーブ確率
本命

サーブ確率
アンダードッグ

本命のオッズ

アンダードッグのオッズ

ライン

マイナス

プラス

64.8%

63.2%

1.80

2.25

1.5

2.01

1.99

65.4%

62.6%

1.60

2.67

2.5

1.96

2.04

66.6%

61.4%

1.40

3.48

3.5

1.92

2.09

68.0%

60.0%

1.20

6.00

4.5

1.97

2.03

69.6%

58.4%

1.10

10.66

5.5

2.01

1.99

これらをピナクルのテニス市場と照合すると、このモデルが非常によくキャリブレーションされていることがわかります。各試合の価格を見るために、最後のステップとして各選手のサーブ確率を予想し、選手固有のバイアスに合わせて調整します。この場合、特定の選手のパターンを反映するために勢いの要素を調整することもあります。それらについては、別の過去記事でたくさん取り上げています。

2つの動的な勢い変数をATPテニスモデルに加えた結果、サーブの確率からゲーム、セット、マッチ、トータル、ハンディキャップ市場の価格を見ることができる、よくキャリブレーションされたモデルになりました。

追加のステップとして、スコア固有および/または選手のバイアスを含めることができます。例えば、セットカウント*4-5または*5-6のプレッシャーの中でサーブを打つ場合、選手がサーブを決める可能性は低くなるかもしれません。このような要素を追加することで、モデルを簡単にインプレイモデルに拡張することができます。

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