サッカーの試合のプライスを計算するべき理由
バリューベットを特定するためには、ベットしようとしているオッズと、ある結果が実現する真の確率をより正確に反映しているはずのオッズとを比較する必要があります。ある事象が発生する可能性について、利用可能なオッズの方が自分の想定より低く見積もられている場合は、プラスの期待値が見込めます。
この考え方はシンプルで、十分理解できるものですが、大半のベッターは、ブックメーカーのオッズと比べるための信頼性のあるデータを作成するところで挫折してしまいます。複数のオッズを比較すれば、確かに、最適なオッズを見つけてベットすることはできます。しかし、自分で確率を出して、これをマーケットと比較すれば、正しい選択肢を見つけてベットすることができます。
多くの人々は、ベッティングで実際に勝つことの難しさを正しく認識していません。試合のプライスを自分で計算し始めたからといって、すぐにバリューベットが見つかるようにはならないのです。それでも、まずはとにかく始めることが必要です。試合のプライスの計算を始めることで、確率についての理解を深めることができます。知識を増やし、質の高い情報に触れ、さまざまなデータとプライスの計算手法を試せば、理にかなったベッティングのチャンスがわかるようになってきます。
この記事では、サッカーの試合のプライスを計算する方法について見ていきますが、マーケットのプライスを計算するという大仕事を何としても自分で行うことが必要なわけではない、と認識しておくことが大切です。マーケットを信用することにして、Pinnacleのような効率性の高いブックメーカーが提示する情報を使用し、他のブックメーカーとの違いを探す人もいるでしょう。
また、ブックメーカーとは比べものにならないほどのリソースを使って、独自のオッズを算出するという作業は手間のかかる作業に思われます。実際に、こうしたプロセスでは学習、間違い、必然的な失敗を受け入れることに時間を費やすことが必要となります。しかし、やり通す意思があれば、そこから学ぶことができます。
サッカーの試合のプライスを計算する方法
サッカーの試合にベットする場合にプライスの計算が重要となる理由を説明するため、簡単な例を使って、プライス計算の方法を示してみました。ただし、このアプローチには多くの欠点があるので注意が必要です(後ほどこの記事の中で説明します)。このアプローチを単独で使用しても、サッカーのベッティングマーケットでバリューを見出すことはできません。
この記事では、2020/21シーズンのPremier Leagueのファイナルラウンドの全試合に対して、1X2のオッズを作成するポアソンモデルを使用しました。このシーズンのInfogolの予想ゴール数データを使用して、各チームがホームとアウェーの両方で試合をする場合の攻撃力と防御力を計算することができました。
これで、得失点に関するチームの平均とリーグの平均の比を利用して、チームの能力を相対的に測定できます。実際のゴール数ではなく予想ゴール数を使用することで、チームの能力がより正確に反映されるようになり、38試合のシーズンに影響を与えるランダム性と運の要素が削減されます。
- ホーム攻撃力(HAS) = ホームゲームごとのチームの予想ゴール数(xG) / ホームゲームごとのリーグの平均予測ゴール数(xG)(高いほどよい)。
- ホーム防御力(HDS) = ホームゲームごとのチームに対する予想ゴール数(xGA) / ホームゲームごとのリーグに対する平均予測ゴール数(xGA)(低いほどよい)。
- アウェー攻撃力(AAS) = アウェーゲームごとのチームの予想ゴール数(xG) / アウェーゲームごとのリーグの平均予測ゴール数(高いほどよい)。
- アウェー防御力(ADS) = アウェーゲームごとのチームに対する予想ゴール数(xGA) / アウェーゲームごとのリーグに対する平均予測ゴール数(xGA)(低いほどよい)。
この計算には、次の2020/21シーズンのPremier Leagueのデータを使用します。
Premier League 2020/21の攻撃力および防御力
チーム
|
xG/ホームゲーム
|
xGA/ホームゲーム
|
xGp/アウェーゲーム
|
xGA/アウェーゲーム
|
HAS
|
HDS
|
AAS
|
ADS
|
Manchester City
|
2.24
|
0.86
|
1.78
|
0.87
|
1.46
|
0.63
|
1.30
|
0.57
|
Manchester United
|
1.81
|
1.33
|
1.67
|
1.17
|
1.18
|
0.97
|
1.22
|
0.77
|
Liverpool
|
1.93
|
1.24
|
2.11
|
1.33
|
1.26
|
0.90
|
1.54
|
0.87
|
Chelsea
|
2.12
|
0.89
|
1.69
|
0.89
|
1.38
|
0.65
|
1.23
|
0.59
|
Leicester City
|
1.78
|
1.45
|
1.58
|
1.26
|
1.16
|
1.06
|
1.15
|
0.83
|
West Ham
|
1.49
|
1.42
|
1.79
|
1.41
|
0.97
|
1.04
|
1.31
|
0.92
|
Tottenham Hotspur
|
1.73
|
1.27
|
1.38
|
1.56
|
1.13
|
0.93
|
1.01
|
1.02
|
Arsenal
|
1.33
|
1.32
|
1.56
|
1.13
|
0.87
|
0.96
|
1.14
|
0.74
|
Leeds United
|
1.78
|
1.33
|
1.49
|
2.12
|
1.16
|
0.97
|
1.09
|
1.39
|
Everton
|
1.38
|
1.49
|
1.26
|
1.45
|
0.90
|
1.09
|
0.92
|
0.95
|
Aston Villa
|
1.72
|
1.49
|
1.52
|
1.51
|
1.12
|
1.09
|
1.11
|
0.99
|
Newcastle United
|
1.57
|
1.42
|
1.05
|
1.96
|
1.02
|
1.03
|
0.76
|
1.29
|
Wolves
|
1.35
|
1.25
|
0.99
|
1.72
|
0.88
|
0.91
|
0.72
|
1.12
|
Crystal Palace
|
0.94
|
1.66
|
1.10
|
1.87
|
0.61
|
1.21
|
0.80
|
1.23
|
Southampton
|
1.27
|
1.28
|
1.20
|
1.83
|
0.83
|
0.94
|
0.88
|
1.20
|
Brighton
|
1.83
|
0.86
|
1.15
|
1.31
|
1.19
|
0.63
|
0.84
|
0.86
|
Burnley
|
1.23
|
1.52
|
1.04
|
1.66
|
0.80
|
1.11
|
0.76
|
1.09
|
Fulham
|
1.09
|
1.55
|
1.24
|
1.64
|
0.71
|
1.13
|
0.91
|
1.08
|
West Brom
|
1.11
|
2.03
|
0.98
|
1.93
|
0.72
|
1.48
|
0.71
|
1.27
|
Sheffield United
|
1.02
|
1.73
|
0.81
|
1.92
|
0.66
|
1.26
|
0.59
|
1.25
|
次にこれを、プライスを出したい特定の試合にまで分解する必要があります。さらに、ホームチームのHASとアウェーチームのADSを使用して、双方のチームの予測ゴール数を計算します。
Premier League 2020/21シーズンの第38節におけるWest HamとSouthamptonの試合について考えると、計算プロセスはこのようになります。
West Hamのゴール数
West Ham HAS x Southampton ADS x ホームゲームごとのリーグの平均xG
0.97 x 1.20 x 1.54 = 1.792
Southamptonのゴール数
Southampton AAS x West Ham HDS x アウェーゲームごとのリーグの平均xG
0.88 x 1.04 x 1.37 = 1.253
したがって、London Stadiumでの試合でWest Hamは1.792ゴール、Southamptonは1.253ゴールを決めると予想されます。ただし、スコアラインを1.792対1.253にはできないため、結果範囲の確率分布を調べる必要があります。
ExcelでPOISSON関数を使用すると、各チームが試合で取る可能性のあるさまざまな得点の確率分布を計算できます(この場合は0点から5点までの範囲を使用しました)。上記の例を使用すると、分布はこのようになります。
チーム
|
0ゴール
|
1ゴール
|
2ゴール
|
3ゴール
|
4ゴール
|
5ゴール
|
West Ham
|
0.167
|
0.299
|
0.268
|
0.160
|
0.072
|
0.026
|
Southampton
|
0.286
|
0.358
|
0.224
|
0.094
|
0.029
|
0.007
|
この分布を基に、それぞれのスコアラインの確率を計算できます。たとえば0対0の引き分けになる確率は次のようにして計算します。
0.167 x 0.286 = 0.0477 = 4.77%
このようにして、West Hamが勝つ確率、引き分ける確率、およびSouthamptonが勝つ確率をすべて計算できます。ポワソン分布に従った2チーム間の各スコアラインの確率は以下のようになります。
West Hamのゴール数
|
Southamptonのゴール数
|
0
|
1
|
2
|
3
|
4
|
5
|
0
|
4.77%
|
5.98%
|
3.74%
|
1.57%
|
0.48%
|
0.01%
|
1
|
8.55%
|
10.70%
|
6.70%
|
2.81%
|
0.86%
|
0.20%
|
2
|
7.67%
|
9.59%
|
6.00%
|
2.52%
|
0.77%
|
0.02%
|
3
|
4.58%
|
5.73%
|
3.59%
|
1.50%
|
0.46%
|
0.02%
|
4
|
2.05%
|
2.58%
|
1.92%
|
0.67%
|
0.02%
|
<0.01%
|
5
|
0.74%
|
0.07%
|
0.06%
|
0.01%
|
<0.01%
|
<0.01%
|
注意:ゴール数が6、7といった可能性もあるため、確率の合計は100%にはなりません。
この結果を基に、West Hamが試合に勝つ確率は49.32%、引き分ける可能性は23.72%、Southamptonが勝つ確率は26.96%と予測することができます。この予測をオッズに変換すると、以下のようになります。
結果
|
確率(%)
|
オッズ
|
West Hamの勝利
|
49.32%
|
2.03
|
ドロー
|
23.72%
|
4.22
|
Southamptonの勝利
|
26.96%
|
3.71
|
この試合でPinnacleの実際のクロージングオッズは、West Hamは2.17で勝つというプライスでした。つまり、この試合では、West Hamは過小評価された可能性があるということになります。
自分の弱点を特定してエッジを最大化
こうした試みは、差異を見つけることをお勧めしているように見えるかもしれませんが、ブックメーカーの方が正確であるとすれば、長期的には自分のサッカーベットからはやはり利益を得ることができない可能性があります。
同時に、バリューベットだと感じた対象に投資を始めることは魅力的かもしれませんが、たとえ少額であっても、これは高くつく試みになる可能性があります。したがって、このメソッドの実行可能性を調べるには、バックテストを行うことが最も有効なアプローチです。
このモデルで過去のイベントについて算出したオッズを比較し、さらにこれらをPinnacleのクロージングラインと比較すると、このプライス計算戦略がどの程度優れているかを確認することができますが、この方法が有効かどうかだけでなく、なぜ、有効なのかを理解しておくことも必要です。
ポアソンモデルで使用した上述の予想ゴール数は、サッカーの試合のプライスを計算するのに良い方法であるとは言えない理由は複数あります。データを最新のものに変えていくのではなく、前シーズンのデータを使用しているので、すぐに時代遅れになります。また、移籍や監督の交代が考慮されないので、チームの強さや試合に勝つ可能性の測定にゆがみが出やすい可能性もあります。
仮にこのモデルを使用してエッジがわかったとしても、その理由を理解することが必要不可欠です。ブックメーカーや他のベッターが考慮していなかっただけなのでしょうか? ベットしたタイミングによるものでしょうか? データの質を高めてエッジを拡大することはできるでしょうか? 理にかなったエッジを確立し、その理由がわかったら、このエッジを最大化できるよう資金を管理することが必須になります。
当然ですが、成功するベッティング戦略を見つけたとしても、努力はそこで終わりというわけではなく始まったばかりにすぎません。残念ながら、ブックメーカーの中には、提示しているオッズよりも何とかして正確な予想を立てようとするベッターに対し、出入り禁止にしたり制限をかけたりするところもあります。
そのため、可能なうちにエッジを最大化すること、またモデルを改良し続け、いくら勝っても出入り禁止や制限の対象にならないブックメーカーで試すことが、一層重要になります。そして、Pinnacleはこうしたブックメーカーの1つであることをお伝えしておきます。