無観客試合の開催が濃厚とされる中、ベッターの皆さんは観客の不在が市場にどんな影響を与えるか見極めているところでしょう。無観客によって、サッカーの試合にはどういった影響が及ぶのでしょうか?詳しくは続きをお読みください。
無観客試合でのホームアドバンテージ
無観客試合に関して、ベッターの皆さんが第一に考えること。それはホームアドバンテージの概念でしょう。
サッカーのホームアドバンテージに関する以前の記事で、私は0.25から0.5ゴールぶんだけ、ホームチームが優位性を得られると書きました。Pinnacleの最終オッズが示唆する、欧州五大リーグ全体でのホームチームの勝率は約45%に上ります。
問題は、こうしたホームアドバンテージのうち、どのくらいの割合が、熱狂的なファンによって生じているかということです。
ホームアドバンテージの要因
ホームアドバンテージに関する以前の記事で、私はその要因をいくつかのカテゴリーに分類しました。無観客試合がこれらの要因に与える影響を見ていけば、その効果を見極めるのに役立ちそうです。
地元ファンと判定の偏り
私は以前の記事で、VARのデータから、地元ファンが判定に与える影響を見極められると示唆しました。
理論上、VARシステムは客観的なもので、ファンの歓声には左右されません。そのため、ホームとアウェイに与えれるペナルティ数の比が多少なりとも下がっていたら、主審は実際に地元ファンの影響を受けていると考えられます。
観客が主審の判断に与える影響については、いくつか科学的な証拠も見つかっています。
こんな実験があります。1998~99年シーズン中のアンフィールドでのLiverpool対Leicesterの試合で、その録画映像を観てもらいながら、40人の審判員に主審を務めてもらいました。20人の審判員はファンの歓声が聞こえる映像を、もう20人はまったくの無音で映像を観ました。
ファウルのあったホームチームにペナルティを与える数は、歓声にさらされていた審判員たちのほうが、無音で観ていた審判員より少なかったのです。この事実は、VARがホームチームのペナルティ数に与える影響を分析した結果とも一致します。
無観客の影響がもっとも現れやすいのは間違いなく、試合のこうした部分でしょう。
慣れとなわばり意識
サッカー場に慣れているぶんだけ、ホームチームが優位性を得られるという証拠もいくつか見つかっています。アウェイチームはなわばりに入り込む侵略者のようなもので、そのためにホームチームのパフォーマンスが本能的に上昇するのではないか、とこれまで説明されてきました。
ある研究ではホームチーム側でテストステロン値の上昇が見られ、ホルモンレベルとホームアドバンテージ、なわばり意識に関する以前の発見を裏付けています。
スタジアムやグラウンドの形状への慣れもまた、ホームアドバンテージの要因と考えられるかもしれません。例えばメジャーリーグの野球では、特に有力とされている説です。
これらの要因は地元ファンの存在とは関係なく存在するため、無観客試合の場合でも、ホームチームの優位性が残存している可能性はかなり高いと考えられます。
移動
移動の影響もホームアドバンテージの合理的な要因ですが、無観客試合が常態化しても、その影響は変わらず残り続けます。試合会場が変更された際も、やはり注視するに値しそうです。
無観客試合でのホームアドバンテージ
手元にいくつか、サッカーシーズンの中断前に行われた無観客試合のサンプルがあります。最近ではEuropa League、Champions League、Serie Aのマッチで、スタジアムに観客を入れずに試合が行われました。
これらの試合でのホームアドバンテージの効果を見極める際、問題となるのはサンプル数の少なさです。それに加えて、ファーストレグの結果や対戦カード、先発メンバーといった要因からも多くのノイズが生まれます。
さらに今季のSerie Aでは、直感的に違和感を覚える厄介な状況も見受けられます。例えば、Pinnacleのオッズが示唆するホームチームの勝率が、実際のところ上がっているのです。なぜそうなっているのかは、こうした無観客試合に参加したチームのリーグ順位を見ると察しがつきます。
試合カード |
ホームチームのリーグ順位 |
アウェイチームのリーグ順位 |
Juventus対Inter Milan |
1 |
3 |
Sassuolo対Brescia |
11 |
20 |
Milan対Genoa |
7 |
17 |
Parma対Spal |
9 |
19 |
ご覧のとおり、無観客で行われたこの節の試合はたまたま、すべて格下のアウェイチームとの対戦が組まれていたのです。中にはリーグ最下位を争う2チームが、ホームを離れてアウェイで戦ったカードもありました。
これらのサンプルから多くの結論を導き出すことは事実上、不可能です。ここで示唆されるホームチームの勝率を、今季のSerie Aの平均と比較したところで、誤解を招くだけでしょう。
開始オッズと最終オッズ:さらなる検証の試み
こうした問題を回避する試みのひとつは、当初はファンを入れて試合をする予定が、実際には無観客で行われた試合の開始オッズと最終オッズを活用することです。こうすることで、ホームアドバンテージの減少に応じて、オッズがどのくらい変動するかわかります。
幸い、そうした試合がいくつか見つかりました。Europa League決勝トーナメント2回戦、ファーストレグの最初の4試合がそうです。元々通常開催でしたが、その後無観客へと変更されました。
試合カード |
開始時の黙示的勝率 |
最終的な黙示的勝率 |
ホームの黙示的勝率の差異 |
Olympiacos対Wolves |
38.61% |
33.78% |
-4.83% |
Wolfsburg対Shakhtar Donetsk |
47.17% |
57.45% |
10.28% |
Eintrackt Frankfurt対Basel |
61.39% |
59.59% |
-1.80% |
LASK対Mancheter United |
26.74% |
21.10% |
-5.64% |
ご覧のとおり、4試合のうち3試合で、試合開始時間までにホームチームの黙示的勝率が低下しました。ところがWolfsburg対Shakhtar Donetskの一戦では、ファンの不在にもかかわらず、数字がホームチーム優位へと大きく動いています。
ひとつの要因として考えられるのは、Shakhtarの主力選手であるStepanenkoとTiteが負傷で欠場となり、先発メンバーの力量が低下したことでしょう。加えてWolfsburgは、予想よりも強力と思われるメンバーを投入してきました。
こうした事実は、ここで使われているデータが抱えている、おそらく克服できない大きな問題を示しています。先発メンバーの変更などの要因によって、数字がホームチーム優位へと動き、失われたホームアドバンテージを相殺してしまうのなら、数字がアウェイチーム優位へと動いた場合に、どうしてそれがホームアドバンテージの喪失によるものだと言えるのでしょうか?
無観客試合のオッズは有効か
こうしたやり方で試合を検証する試みには、別の問題もあります。すなわち、「そもそもオッズが有効である」という前提に立っていることです。開始オッズが有効だったとしたら、Europa Leagueのこれらのゲームではすでに、試合が無観客に変更される可能性がある程度は予測されていたのかもしれません。
- 読む:市場効率性のモデル化
特殊な環境や情報不足のせいで、オッズが実際の可能性を正しく反映していないケースは過去にもありました。今回もそうした特殊な環境と言えそうなのは確かです。
FrankfurtがBaselにまさかの大敗を喫するなど、Europa Leagueのこれらの試合で、すべてのホームチームが勝てたわけではないという事実は、試合前のオッズが有効でなかった可能性を示しているのかもしれません。それでもやはり、サンプル数が少なすぎるため、確信をもってそうだと結論づけることは難しいでしょう。
問題とチャンス
無観客がホームアドバンテージに与える影響を見極めるのは、実際のところ難しそうです。落胆させられる結果でしょうが、ベッターにとっては難しいからこそ、付け込む余地もあるはずです。
地元ファンが判定を偏らせている証拠から、無観客ではホームアドバンテージが減少することは確か。ただ、その割合を特定することが難しいというだけです。
ホームアドバンテージの影響をオッズに反映させるのが困難なら、ベッターにとっては、市場がホームアドバンテージを見極め、効率性を取り戻してしまう前に、多少の価値を確保しておくチャンスが潜んでいるかもしれません。この分野はしばらく、興味深い研究対象となりそうです。
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