ピナクルは、ベッティング業界でも他に類を見ないほどアービトラージベッターに対して寛容なことで有名です。制限は他のベッターの場合と変わらず、他のブックメーカーのようにアカウントを制限したり閉鎖したりもしません。なぜピナクルはアービトラージに有利なのでしょう?詳しくは続きをお読み下さい。
ピナクルがアービトラージベッターを容認できると主張しているのは、アービトラージベッターの「リスク管理がオンライン上で最も優れていると見なされている」からです。実際、ピナクルは一貫してアービトラージを容認しています。この記事では、いくつかのデータを検証しながら、これが何を意味するのか、そして他のブックメーカーが及び腰になるなかでなぜピナクルがアービトラージのチャンスを提供し続けるのか、という点について探っていきます。
アービトラージとは?
簡単に言うと、アービトラージベッティングとは、ベッターが結果にかかわらず確実に利益を確保できるように、適切な額の賭け金をコンテストのすべての側にベットすることです。
- 参照記事: アービトラージベッティング解説
簡単な例として、チームAのオッズが2.10、チームBのオッズが1.95であるとします。適切な賭け金(デシマルオッズの逆数として計算するのが最も簡単)をベットした場合、チームAとチームBのどちらが勝利するかにかかわらず、101.11%のリターンを得ることになります。さらに一般化すると、期待されるアービトラージリターンはアービトラージの掛け金の合計の逆数として計算することができます。
アービトラージの機会が発生するためには、ブックメーカー間で、間接的な勝率(マージンを含む)の合計が100%未満になるようなオッズが発生するくらい十分に異なる意見が必要となります。ブックメーカーのマージンが小さいときに有利なのは明らかです。つまり、アービトラージの機会が発生するのに必要な意見の差が少なくて済む場合です。
ピナクルは他の多くのブックメーカーと比較するとこうしたマージンが小さいため、ベッティング市場で考えられる最良のオッズの提供が可能であり、これはアービトラージの機会が成立しやすくなっています。
ブックメーカーの観点から見たアービトラージ
ベッターからすれば、結果にかかわらず利益を確保しているので、どのオッズが正確かどうかは実際には問題ではありません。しかし、ブックメーカーからすれば、少なくともいずれかのオッズが間違っているはずで、これは支払いにつながります。
ピナクルは、正確なオッズを提供すること、少なくともマージンの分以上に「真の」価値から逸脱しないオッズを提供することを心がけています。おそらくベッターにとっては、利益を上げるためには最良のオッズモデルとなります。
上記の例で、チームAとチームBの「真の」オッズが2.00である、つまりそれぞれの勝率が50%であるオッズを想定してみましょう。通常、マージンが2.5%のブックメーカーは、双方にとってプラスが期待できるように両チームに対して1.95のオッズを公表します。
ここでは、あるブックメーカーがそれとは違う考え方をして、チームAのオッズを2.15、チームBのオッズを1.87としたとします。マージンを加算すると、公表オッズは約2.10と1.82になります。
ブックメーカーの観点から、チームAは否定的に予想されています。したがって、アービトラージの機会に常に収まるようなオッズを提示するためには、「真の」結果の確率を正確に評価できることがブックメーカーの利益にかかってきます。データを使って、ピナクルがうまく機能しているかどうかを調べることが可能です。
サッカーの試合のベッティングオッズにおけるアービトラージの機会
2001年以来、ベッティングオッズを集め、ベッターがサッカーベッティングのシステムを開発しテストするのを支援してきました。これらのオッズには、ピナクルの試合のベッティングオッズと同時に市場で有効な最高のオッズが含まれています。
2012年7月27日から2019年3月5日の間に行われたヨーロッパサッカーリーグ50,210試合のサンプルから、ホーム、ドローおよびアウェイの間接的な確率の合計が100%未満であり、理論的なアービトラージ機会が発生しうる16,861の市場閉鎖前の機会を見つけることができました。アービトラージリターンの平均は100.81%(つまり0.81%の利益)であり、各アービトラージで100ユーロをベットした場合、理論上の資金は13,670ユーロになります。
下図を見て、その利益がどのように積み上げられたかを比較してみましょう。4つの時系列があります。全体的な資金の増加、ピナクルのオッズにベットした場合のリターン、そしてスリーウェイサッカー試合のベットにおける他の市場ベスト2にベットした場合のリターンです。
ベッターからすると、他のブックメーカーが全体的なアービトラージリターンの一因となっている一方で、ピナクルが一貫してマイナスの予想オッズを提供していることは完全に明らかです。他のブックメーカーのアービトラージが102.7%だったことと比較すると、ピナクルのみの実際の取引高のリターンは95.5%、つまり4.5%の損失でした。
必要であれば、このような図は、サッカー試合のベット市場ではピナクルのほうが常に他のブックメーカーより正確にオッズを把握しているという証拠になるでしょう。
だからといって、他のブックメーカーが「真の」オッズを評価するのがあまり得意ではないということではありません。実際、他のメーカーが事実上損失になるようなオッズを公表する理由はほかにあるということです。たとえば、新しい顧客を明らかに優れた価値に引き付けることもそのひとつです。もちろん、このようなブックメーカーは、ほぼ確実にユーザーがそのような機会を繰り返し利用するのを妨げようとすることを忘れてはいけません。
ピナクルはアービトラージを活用しているのでしょうか?
95.5%というピナクルのリターンは、16,861の試合に対してピナクルの平均マージンによって予想される値(97.6%のリターンつまり2.4%の損失)よりかなり低いものです。
被害を被るのは自身でなく他のブックメーカーであることが分かっているので、ブックメーカーは正確なオッズを出し、ユーザーが常にアービトラージを実行してメリットを得ているのです。
ピナクルは、他のブックメーカーのオッズがアービトラージの機会を利用できるくらい十分に気前のよいものである限り、アービトラージハンターが状況を気にかけないことを分かっているために、これらのアービトラージオッズにおけるブックメーカーのマージンを意図的に増やしているのでしょうか?また、アービトラージを発生させないピナクルの他のオッズは何らかの価値を生むということでしょうか?
サッカーの試合ベットにおけるピナクルの他2つのオッズからのリターンは98.3%で、アービトラージの機会が発生したピナクルのオッズよりもよかったのですが、着実に価値を提供するには十分ではありませんでした。この違いに意味はあるのでしょうか。いいえ、2つのサンプルについての片側t検定では、8%のp値が返ってきました。 つまり、この差は8%の確率でランダムに発生する可能性があるということです。もっと意図的なことを論証しようとするには、5%以下のp値が必要です。
- 参照記事: ベッティングにおけるランダム性の再検討
さらに、アービトラージに出されるピナクルの平均オッズ4.74が他の2つのオプションの平均オッズ3.61よりもはるかに見込みが薄いと考えると、この違いの大部分はおそらく 本命-大穴バイアスによって説明が可能です。このバイアスのおかげで、より見込みが薄いオッズでは、マージンが比例的に増加することになります。
アービトラージの機会が発生したピナクルのオッズの79%はドロー、またはアウェイの勝利だったので、その平均オッズが他の2つよりも見込みが薄いということが理解できます。最後に、そもそも不釣り合いなほど見込みが薄いピナクルのオッズがアービトラージの機会に出されているのは、本命-大穴バイアスが、より大きなマージンのある他のブックメーカーよりも弱いからという理由なのです。
試合のサンプルが増えれば、統計的な有意性は明らかになるでしょうが、今のところ、他のブックメーカーの損失を導くような気前のよさによって発生したアービトラージの機会を、ピナクルが意図的に悪用しているとは言えません。ピナクルは、オッズをどう設定すべきか分かっているだけで、おおむねそれに厳密に従っているだけと考えられるでしょう。
市場閉鎖によってどうなるのでしょう?
ベッターがピナクルのオッズを使ってアービトラージの機会を活用し、それによって市場のその側に極端に多額の資金を充当しようとしているなら、ピナクルは支払い限度を守るためにこれらのオッズを下げる必要があるでしょう。
この例のピナクルのオッズは、市場閉鎖により下げられますが、平均オッズは4.73であり、2つの間で統計的に有意差はなく(両側t検定でp値が74%)、ほとんど目立ちません。一方、誰もあえてベットしなければ、これらの最終オッズのリターンは95.0%となっていたでしょう。他の2つのオッズのリターンは平均で98.7%で、依然としてベッターに価値を提供しているとはいえません。
ピナクルの集合知についてもっと知りたいですか?
ここ数年、サッカー試合のベッティング市場に対するピナクルの集合知、効率性、正確さを探求する記事をたくさん書いてきました。もちろん、記事の結論は完璧ではありません。具体的には、平均の効率性が必ずしも特定の試合基準での効率性を意味するわけではないということです。
そもそも不釣り合いなほど見込みが薄いピナクルのオッズがアービトラージの機会に出されているのは、本命-大穴バイアスが、より大きなマージンのある他のブックメーカーよりも弱いからという理由なのです。
しかし、我々は、マージンと本命-大穴バイアスを考えるとき十中八九当てはまる方法を考慮に入れているので、ピナクルのサッカー試合のベッティング市場は、平均的に真の結果の見込みをよく表している、と主張し続けていきます。
アービトラージの機会に関するこの分析は、この見解をサポートするためのさらなる証拠を示してくれます。ピナクルは、正確なオッズを提供すること、少なくともマージンの分以上に「真の」価値から逸脱しないオッズを提供することを心がけています。おそらくベッターにとっては、利益を上げるためには最良のオッズモデルとなります。
かなり自信をもって言えることは、他のレクリエーションブックメーカーと違って、ピナクルは無料で何かを提供するという習慣がないことです。利益率を最大限に高める目的で市場の効率性から体系的な逸脱があるとしても、それはサッカーのアービトラージ市場ではいつも明確とは限らないでしょう。
もちろん、被害を被るのは自身でなく他のブックメーカーであることが分かっているので、ブックメーカーは正確なオッズを出し、ユーザーが常にアービトラージを実行してメリットを得ているのです。