量で勝負か、バリューで勝負か? それが問題だ

量で勝負すべきか?

バリューで勝負すべきか?

期待値を理解する

量で勝負か、バリューで勝負か? それが問題だ

クロージングラインのバリュー運と技術の区別、高い投資利益率を実現する方法などのトピックと並んで、意欲あるスポーツベッターの間で頻繁に話題になるのが、低バリューベットを大量に行うべきか、少数の高バリューベットを選択的に行うべきかです。

量で勝負か、バリューで勝負か? それが問題だ

多くの場合、この質問はベッターを二分します。バリューはベットにおける最も重要な側面だと考えている人々は常に最大のバリューを求め、バリューが低いと利益も少ないので低バリューの機会を拒否するでしょう。

それに対して、量で勝負するグループは、分散や運の影響をコントロールすることの方がずっと重要で、そのためのベストな方法は、たとえバリューが低くても、大量にベットすることであると主張するでしょう。正しいのはどちらでしょうか? これが、私の最新記事で取り上げるトピックです。

簡単におさらいすると、ベッティングにおけるバリューとは、ベッターの期待利益を表すために使用される概念です。ベットの期待値(EV)は、1ベットあたり平均でどのくらい勝てるか、または負けるかを表しています。

最も簡単な計算方法は、ブックメーカーのオッズを真のオッズで割り、1を引きます。

これは、真の勝率をブックメーカーの暗黙の勝率で割り、1を引くことに相当します。

もちろん、ベッティングで最も難しいのは真の勝率を計算する作業ですが、この記事ではそのことには触れません。

例えば、真のオッズが2であるとしましょう。ブックメーカーが間違って2.1を設定した場合、期待値は2.1/2 – 1 = 0.05、つまり5%となります。同じ期待値の1ユニットベットを1,000回行うと、ベッターは平均で50ユニットの利益を獲得します。

2.25を設定した場合、期待値は12.5%です。通常、間違いを犯すのはベッターの方です。1.95というオッズを受け入れれば、期待値は-2.5%です。

もちろん、平均とは可能性が最も高いという意味であり、何度かベットすると、運の良し悪しによって違う結果になります。オッズが2でバリューが5%の1,000件のベットから得られる期待利益は50ユニットですが、運が悪ければもっと少なくなり、運が良ければもっと多くなります。

結果の分布については、以前公開したベッティングでリターンが得られる範囲に関する記事で詳しく説明しています。以下に、このシナリオで期待できる利益の分布を示します。

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この分布の計算に関心がある場合は、私のウェブサイトにその方法を説明する簡単なExcel計算ツールがあるので、そちらをご覧ください。また、最近の拙著『Monte Carlo or Bust - Simple Simulations for Aspiring Sports Bettors』でさらに詳しく説明しています。

期待値5%が正しいと仮定した場合、最も可能性の高い結果は5%の利益であることがこの分布から分かります。1ユニットの賭け金のベットを1,000件行った場合、これは50ユニットの利益に相当します。

また、非常に運が悪かったときと極めて運がよかったときの可能性の範囲も視覚的に確認できます。最終利益が-5%より少なかったり、+15%を超えたりする可能性は極めて低いです。

また、損失を出す可能性も視覚的に評価できます。それは、利益 = 0%の縦軸の左側にあるベル型曲線下の面積です。この面積は数学的に計算することができ、約6%です。

ベットの数を変えると、結果の分布がどうなるかを見てみましょう。以下に、100ベットに対して同じ計算を繰り返し、最初の計算と分布を比較してみました。

両方の曲線が入るようX軸の目盛りを大きくしてありますが、青い曲線は前とまったく同じです。ここで重要なのは、比較です。

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次の2つのことが顕著です。まず、可能性の範囲がずっと広がっており、より大きな損失とより大きな利益を獲得する可能性はどちらも比較的高くなっていますが、最も期待される結果を獲得する可能性は比較的低くなっています。

統計用語でいうと、分散が大きくなっています。つまり、運が果たす役割が大きくなったと言えます。

次に、その結果として、損失領域にあるベル型曲線下の面積が大きくなっています。なんと、約31%です。

つまり、100ベットで期待値が5%であるにもかかわらず、損をする可能性が3分の1近くもあるのです。ベッティングの期待値が正であれば、ベットの数が増えるほど、運による影響が少なくなるため結果の分散が減り、ひいては、負ける可能性が減ります。

つまり、大量のベットを支持する人々に軍配が上がります(スコアは1-0です)。

しかし、待ってください。選択的にベットする人は高バリューベットを狙っているので、より正確に選ぶでしょう。つまり、彼らの期待利益はもっと高いことを意味します。これを反映するために、上のオレンジの曲線を調整する必要があります。

100ベットのみの高バリューベッターは平均20%の期待値を持っているものと仮定しましょう。さて、最初の高バリューベッターと比較して、どうなるでしょうか? ご覧ください。

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高バリューベッターの利益分布はやはり同じ形状ですが、今は期待(平均)利益が20%になったので、15%ポイント分右側に移動しました。結果の分散はやはり同じ高さですが、損をする可能性はずっと低くなりました。

事実、たったの2%であり、これは1,000ベット、期待値5%の高バリューベッターよりも少なくなっています。

これら2つのベッターの分布を比較するための簡単な方法が、Zスコアと呼ばれる指標です。Zスコアは、期待利益を分布の標準偏差で割って求めます。要するに、Zスコアは分散のユニットあたりの期待利益の評価基準であり、スコアが大きいほど良いということになります。

金融業界では、この指標はシャープレシオと呼ばれています。標準偏差σは分布の分散の評価基準です。標準偏差を2乗したものが分散です。

同じオッズoによる一連のベットの場合、以下の式を使って計算できます。

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pはベットの真の勝率で、nはベット数です。これは、賭け金のサイズが同じであることを条件に、ベットのオッズが異なる状況で使用できる信頼性の高い数式です。この場合、oは単純に平均オッズです。

pを計算するには、期待利益に1を足して(期待リターンが得られる)、オッズで割ればよいだけです。したがって、期待利益5% (0.05) の大量ベッターの場合、p = (1+0.05)/2 = 0.525、つまり52.5%となり、σ = 0.0316 (3.16%) となります。

大量ベッターの分布の全取得可能利益のほぼ3分の2が、期待値5%の上下3.16%以内に見つかります。最後にZスコアを計算すると、5% / 3.16% = 1.58となります。

高バリューベッターについても同様に計算すると、Zスコアは2.04になり、大量ベッターのスコアを凌駕します。

これで、量かバリューかの争いは1-1になりました。

量が増えるほど結果の分散は減りますが、より選択的にベットして期待利益を上げることでZスコアおよび分散のユニットあたりの期待利益を増やすことができます。

これまで、期待値とベット数は私が勝手に選んでいました。高バリューベッターの期待値は大量ベッターの4倍、ベット数は10分の1としていましたが、これらの数値はどのくらい現実的なのでしょうか?

ベッティングオッズが2の場合、期待値20%のベットに遭遇することはほとんどありません。期待値5%のベット1,000件ごとに期待値20%のベットを100件見つけられると本当に期待できるのでしょうか? それを確認するための手段が必要です。

ベッティング市場にどのくらいバリューが存在するかを評価するための間接的な手法は、オッズの動きを調べることです。

まず、市場の平均クロージングオッズが真のオッズを正しく反映していると仮定した場合(以前のトピックで説明済み)、直近の動きの大きさを使用してオッズに存在していた可能性のある直近の期待値のおおまかな評価基準を計算できます。

動きが大きいほど、期待値が大きくなります。クロージングオッズにはバリューがないと言っているわけではありません。ただ、平均して、この2セットのオッズの差は、その裏に潜む真の有効なバリューを合理的に反映していると言っているのです。

サッカーの試合に対するPinnacleでのベッティングのオープニングオッズとクロージングオッズを表す大量のデータセットを使って、現実的に使用できる期待値の相対的利用可能性を計算しました。これを以下に示します。

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このベッティングマーケットには、期待値が5%以上のベッティングの機会の利用可能数が、20%以上の機会のおよそ20倍存在します。

したがって、大量ベッターが期待値5%のベッティングの機会を1,000件見つけられるとしたら、高バリューベッターは現実的には同じ市場、同じ期間で50件の機会しか見つけられないと予想されます。これは、私が前に仮定した数の半分です。

この情報を踏まえて、この小さいサンプルサイズを使用して高バリューベッターのZスコアを再計算してみましょう。

すると、Zスコアは1.44になり、大量ベッターの値よりも小さくなっています。50ベット後の負け率は、7.5%です。その結果、さまざまなサイズの期待値の相対的利用可能性を考慮すると、このシナリオでは大量ベッターの方がリスク管理の点において優れた戦略を持っているように見えます。

2-1で量がバリューをリードしました。

これまで、ベッティングの利益率についてのみ検討してきました。しかし、結局のところすべてのベッターがより関心を抱いているのは実際に創出する利益です。

1,000件のベットから5%の利益率を得る場合、1ユニットの賭け金から50ユニットの利益が得られます。一方、50件のベットから20%の利益率を得る場合、得られる利益は10ユニットのみです。

3-1で量がバリューに対するリードを広げました

もちろん、ケリー基準を利用した賭け方の支持者は期待値の高いベットでは賭け金のサイズが大きくなると指摘するでしょう。この場合、同じオッズについては、4倍のバリューであれば賭け金のサイズが4倍になるのは正しいと言えます。賭け金のサイズがこのように増えると期待利益も40ユニットに増え、最初のベッターが得る50ユニットの利益にずっと近づきます。

議論の的であるというペナルティによって、バリューが1点取り戻しました。

量かバリューかの勝負における最終スコアは3-2で、量が僅差で勝利しました。この演習はちょっとした遊びにすぎませんが、(大量にベットすることによって)分散を減らすことと(より選択的なベットによって)期待値を増やすことによる、競合する影響力を説明する助けになると思います。

少なくともサッカーベッティング市場には、大量にベットして分散を減らす戦略と比較して、選択的にベットする戦略を十分に正当化できるような、より期待値の高い機会は十分に存在しないようです。

それでも、極めて僅差です。生み出される相対的な機会は市場によって異なるため、結果が逆転する可能性はあります。

分散を減らすことはどのベッターにとっても望ましい目標ですが、この思考実験は、それだけが考慮すべき要因ではないことを示すのに役立つはずです。

大量ベッターはおそらく、高バリューニッチベッターを嘲笑し、高バリューニッチベッターは大量ベッターを嘲笑し続けるでしょう。しかし実際には、すべての意欲的なベッターは、量とバリューの相対的な影響をより深く理解することで、目標とする結果を最大化することができるようになるでしょう。

Pinnacleのベッティングリソースで情報満載のJoseph Buchdahlの記事をさらに読み、スポーツベッティングの予想にお役立てください。

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