効率性の問題をどう解決するか:パート2

オッズ動向は不規則ではない

アンカリングがオッズ動向に与える影響を検証する

効率性の問題をどう解決するか:パート2

この記事のパート1では、ピナクルのオッズの効率性に関する調査を紹介し、市場効率性をモデル化する方法を説明しました。今回は、Joseph Buchdahlがオッズ動向やベッターのアンカリングバイアスの分析によって、ピナクルのオッズの効率性に関してさらなる知見が得られることを検証しました。詳しくは続きをお読みください。

オッズ動向は不規則ではない

ここまで論じて来たモデルシミュレーションは、1つの有名な仮説に基づいています。クロージングオッズはオープニングオッズから完全に独立したものである、すなわち、クロージングオッズは過去の記憶を持たないというものです。私たちは、ベットの時系列において1つ1つの結果は以前の記憶を持たないこと、連勝は続かないこと、そしてギャンブラーの誤謬はこの自明の理を理解できない人が陥るものだということを知っています。ただし、オープニングオッズとクロージングオッズの関係は、まったく別の話だと言って良いでしょう。

もし発表されたオッズが「本当の」オッズよりも大きければ、そのオッズがクローズする時点でも「本当の」オッズより大きいままである可能性が高いです。逆に、「本当のオッズ」より小さいオッズが発表されたら、クローズ時点でも「本当の」オッズより小さいままである可能性が高くなります。

なぜ、こうしたことが起こるのでしょう? ブックメーカーとその顧客がともに「本当の」オッズを知ることはできない以上、オープニングオッズの実際のバリューはある種のアンカーや基準点のように働き、判断を偏らせたり、将来の動向の大きさを制限したりすると仮定できます。もちろん、オッズの設定が誤っていればそこをベッターに利用されるでしょうが、実際はそこまで利用されないでしょう。それが意図なのです。

オープニング/クロージングオッズ動向をどれくらい利用してベッターの予想利益を推測できるかというと、オッズのアンカリングや不規則なばらつきによって相殺されます。

アンカリングは、行動的心理学者にとってはなじみ深い認知バイアスです。ベッティングの文脈においては、ベッターが試合を評価する際、ブックメーカーが公表するオッズによって無意識に影響を受ける可能性があります。ベッターが試合について調べた後にブックメーカーのオッズを知った場合、オッズ発表の前後でベッターの評価が変わってしまうのは無理からぬことです。

おそらく大多数のベッターは、自ら分析して「本当の」結果の確率を判断するのではなく、オッズを見てからベットするかどうか決めるでしょう。たとえば、ブックメーカーのオッズが2.25であるのを見たベッターは、「本当の」オッズは2.00ではなく2.05だと考える可能性があります。2.25というオッズを見る行動がベッターの判断に影響を与えたため、ベッターは「本当の」オッズから乖離し、アンカーとなるオッズに傾くかもしれません。「本当の」オッズよりも小さいオッズの場合にも、同じ考え方を適用できます。

アンカリングがオッズ動向に与える影響を検証する

私のモデルでは、予想クロージングオッズを2.00とするのではなく、オープニングオッズがアンカリングされた各ベットに対するバリューを選択しました。10%(オープニングオッズとアンカリングされたクロージングオッズがそれぞれ2.20と2.02)から90%(2.20と2.18)まで、さまざまなアンカリングの強度をテストしました。やはり、アンカリングされたクロージングオッズは、標準偏差(0.15~0)の範囲で不規則に変化しました。

したがって、オープニングオッズが「本当の」オッズより大きくても、固有の不規則なばらつきによってクローズ時には「本当の」オッズより小さくなる可能性はあります。ただしアンカリングによって、クロージングオッズが「本当の」オッズより小さくなった場合の乖離は、平均すると「本当の」オッズより大きかった場合の乖離よりは小さくなりました。オープニングオッズが「本当の」オッズより小さい場合はその逆になるため、10,000件のベットを集めたサンプルの平均クロージングオッズはやはり2.00で、全体的に見れば効率的です。

以下の3つの表は、3つの不規則なクロージングオッズの可変性(σ = 0.09、0.06、0.03)を表しており、クロージングオッズのアンカリングが持つ効果を20%で示しました。これらを、上の同じ表とアンカリングなしで比較してみましょう。

今回、オープニング/クロージングオッズ比率(マイナス1)と利益(または収益)(またはこの記事のパート1で言及したOCRYCOP)の間の比例定数は、傾向線の傾きの値です。1の値は、OCRYCOPの値が高くなる完璧な比例を示しています(0.73対0.81、0.88対1.00、0.96対1.17)。実際に、最後の表ではOCRYCOPが1よりも大きく、最大のオープニング/クロージングオッズ比率において、クロージングオッズに利益が生じます。根本的にアンカリングの影響があるため、2.00より大きいオープニングオッズは、クローズ時の予想値をある程度含んでいます。「本当の」オッズより小さい場合、逆のことが言えます。

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上の真ん中にある表は、20%のオッズのアンカリングと、クロージングオッズの不規則なばらつき(σ = 0.06)というモデルのシナリオを示しており、ピナクルの実際のデータとよく似ています。私たちは、個々のベッティングオッズのレベルで完璧なオッズの効率性がなくても、これを達成することができました。直感的にもうなずける結果です。

前述のように、ピナクルのすべてのクロージングオッズが完璧に正確であるという可能性は非常に低いでしょう。賢いベッターになるために、常にクロージングオッズに打ち勝つ必要は必ずしもないと考える人にとっても、これは朗報です。

個々のベットのレベルにおいては、クロージングオッズが完全に「本当の」オッズではない場合もあるため、利益を生み出す期待値を維持するために、必ずしもこれに打ち勝つ必要はないでしょう。もちろん、「本当の」オッズがどのようなものであれ、常にこれに打ち勝つ必要はあります。

上の表は、3つのモデルシナリオを示したにすぎません。アンカリング強度とクロージングオッズの不規則なばらつきは、他にも多くの組み合わせが考えられます。私は54通りの検証を行いました。OCRYCOPの数値を以下の表にまとめています。覚えておいてください。数値が1より大きければ、「本当の」オッズより大きいオープニングオッズは、平均するとクローズ時も同じ値を維持していることになります。一方で、数値が1未満であれば、「本当の」オッズより大きいオープニングオッズは、平均すると小さくなりすぎることを示します。

さまざまなモデルシナリオにおけるOCRYCOPの数値

-

モデルとなるクロージングオッズの可変性における標準偏差

アンカリング

0

0.03

0.06

0.09

0.12

0.15

0%

1

0.96

0.88

0.73

0.61

0.5

10%

1.11

1.06

0.93

0.77

0.63

0.49

20%

1.25

1.17

1

0.7

0.64

0.48

30%

1.43

1.32

1.08

0.83

0.62

0.46

40%

1.67

1.5

1.17

0.84

0.6

0.45

50%

2

1.74

1.21

0.83

0.56

0.39

60%

2.5

2.01

1.25

0.76

0.52

0.35

70%

3.33

2.32

1.21

0.69

0.38

0.29

80%

5

2.5

0.99

0.51

0.31

0.2

90%

10

2.04

0.62

0.3

0.17

0.09

「本当の」オッズ(σ = 0.09以上)に関してクロージングオッズに固有の不規則なばらつきが多すぎる場合、ピナクルのデータに近いモデルシナリオを作ることはどうやら不可能のようです。オープニング/クロージングオッズ比率は、オッズのアンカリングにかかわらず、必ずターンオーバーに対する予想利益を過小評価します(OCRYCOP < 1)。

本質的に、OCRYCOPを収益性に関する有益な指標とした場合、「本当の」オッズに関するクロージングオッズの不規則なばらつきには上限があることを示唆しています。実際、上限はσ = 0.075で生じ、オッズのアンカリングは50%です(つまり、オープニングオッズの標準偏差の約半分)。

上の表が示すように、OCRYCOP = 1でモデルシナリオを作成する方法は複数あります。オッズのアンカリングとクロージングオッズの不規則なばらつきには、さまざまな組み合わせが考えられます。最後の表は、オープニング/クロージングオッズ比率の標準偏差でOCRYCOP≃ 1を生成できるモデルシナリオを示しています。

オープニング/クロージングオッズ比率=ターンオーバーに占める予想利益(OCRYCOP = 1)となるモデルシナリオ

アンカリング

クロージングオッズσ

オープニング/クロージングオッズ比率σ

0%

0

0.749

1%

0.015

0.744

2%

0.02

0.741

5%

0.033

0.729

10%

0.045

0.071

20%

0.06

0.068

30%

0.7

0.064

40%

0.073

0.059

50%

0.75

0.053

60%

0.073

0.048

70%

0.7

0.041

80%

0.06

0.033

90%

0.045

0.024

95%

0.033

0.017

たとえば、クロージングオッズの可変性がσ = 0.06だとすると、一致するピナクルのデータは2通りあります。20%のオッズのアンカリングが機能することはすでに説明しました。しかし、80%のアンカリングでも同じなのです。この数字は現実的なものでしょうか? おそらく、そうとは言えないでしょう。たとえ公表されたオッズに重大な誤りが含まれていたとしても、平均するとオッズによってベッターに強いバイアスが生じると考えられるためです。また、示されるオッズ動向も実際に生じるより少ないと思われます。

おそらく大多数のベッターは、自ら分析して「本当の」結果の確率を判断するのではなく、オッズを見てからベットするかどうか決めるでしょう。

完全なピナクルのデータセットにおけるオープニング/クロージングオッズ比率の標準偏差は0.103で、1.5~2.5に制限されたオープニングオッズのセットでは0.082となります。反対に、80%のオッズのアンカリングのモデルシナリオでクロージングオッズの不規則なばらつきがσ = 0.06の場合は標準偏差がわずか0.033となるのに対し、20%のオッズのアンカリングでは0.068です。小さい方のアンカリングの方が、現実世界のデータと直感に合致しているように見えます。

娯楽向けのブックメーカーで賭けるアマチュアのベッターと比べて、ピナクルのベッティングマーケットの賢いベッターはアンカリングバイアスに陥りにくいと考えるなら、より良い組み合わせは10%のアンカリングとσ = 0.045でしょう。アンカリング= 5%とクロージングオッズσ = 0.033の組み合わせも、2%と0.02、1%と0.015の組み合わせと同様に機能します。しかし、個々のベットに基づく完璧なオッズの効率性に立ち戻った私たちにとって、これは非現実的に見えます。

オッズのアンカリングに関して、何か証拠はあるのでしょうか? ピナクルの個々のクロージングオッズがかなり完璧に近い効率性を持っていない限り、実際にOCRYCOPの数値を1にする方法はありません。私のモデルは2.00前後のオッズに集中していますが、ピナクルのデータは結果の確率のスペクトラム全体におけるオッズを網羅していることに、あなたはもうお気づきかもしれません。これは本当のことですから、このOCRYCOPの表はオッズの範囲が1.50~2.50に制限されています(ベッティングオッズの合計は109,619)。

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さらに、私は主なオッズ比較サービスを通じて、複数の娯楽向けブックメーカーのデータを調べました。30,540件の平均ベッティングオッズのサンプルは、OCRYCOPの数値が1.51でした。私が分析したピナクルのデータよりはだいぶ小さいサンプルですが、クローズ時に残る市場の非効率性の根拠としては説得力があります。

覚えておいてください。「本当の」オッズに対してあるべき値よりも大きいオッズはクローズ前に十分小さくならない一方、あるべき値よりも小さいオッズは、クローズ前に十分大きくならないということを、OCRYCOP > 1が示唆しています。私は前に、スチーマーが十分にスチームしない(オッズが小さくならない)ことや、ドリフターが十分にドリフトしない(オッズが大きくならない)ことの根拠について記事を書きました。

娯楽向けのブックメーカーの顧客は比較的練度が低く、アンカリングバイアスに傾きがちです。こうしたブックメーカーは、OCRYCOPの数値を1よりもかなり大きくすると言っていいでしょう。しかし、こうした娯楽向けのブックメーカーは従来の市場の力に自由を与えるよりも、おそらく宣伝目的のため「本当の」オッズよりも大きく魅力的なオッズを維持することを好むかもしれません。その場合も、結果は同じでしょう。

最後に考えるべき論点が1つあります。オープニング/クロージングオッズ比率の可変性が最も大きいモデルシナリオでも、現実世界のデータよりも小さい可変性を示しています。数値は最大(σ = 0.0749)となり、当然ながら個々のオッズは完璧な効率性を持ち、オッズのアンカリングは生まれません。これに対して、上の表にあるデータは0.082です。

大まかに言ってこれらは似ていますが、オッズのアンカリングによってオープニング/クロージングオッズ比率の範囲は狭まります。この違いを説明できるでしょうか? おそらく、ピナクルの最も極端なオープニング/クロージングオッズ比率(オッズが最も大きく変動した場合)を取り上げれば、σの値は小さくなるでしょう。最も極端な1%のみを排除すれば、数値は0.770に下がります。

これらの極端なオッズ動向は、ピナクルのオープニングオッズとクロージングオッズを記録したデータソースの一部に明らかな間違いがあることを示している可能性があります。また、ある種の極端な動向は、モデルにおける不規則な分布の範囲を超えて、対象となるチームの情報に極端な変化があった場合に生まれます。両方の理由を背景に、現実世界のデータはオッズ動向の分布でファット・テールの可能性が高まるため、私の単純なモデルが示すよりも可変性が大きくなります。

ここから学べることは何でしょうか?

ピナクルのベッティングオッズの効率性は標準的なものです。ピナクルのクロージングオッズは、あなたの予想利益を評価するうえで合理的な手段となります。それでも私の調査によって、ピナクルのベッティングマーケットの根底にある効率性には、最初の印象とは違った意味合いが生まれました。

平均すると、ピナクルのクロージングオッズは出来事が起こる「本当の」確率をよく反映しています。しかし、個々のケースに必ずしも当てはまるわけではありません。オープニング/クロージングオッズ動向をどれくらい利用してベッターの予想利益を推測できるかというと、オッズのアンカリングや不規則なばらつきによって相殺されます。

ここまででわかったことは、賢いベッターでいるために、常にクロージングオッズに打ち勝つ必要はないということです。オッズのアンカリングによって、マーケットがクローズする時でもまだ非効率性が残っているのですから。ピナクルでは、「本当の」オッズに関して、オープニングオッズのアンカリングとクロージングオッズの固有の不規則なばらつきは小さい場合が多いです。しかし、市場全体が高い正確性を持つためにすべてのオッズが完璧に効率的である必要はないことと、実際にどのように正確性が保たれているのかがわかりました。

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