インターネットで読んだことをすべて信じるなら、誰もが働かずとも、いくらでもお金を稼ぐ能力があるはずです。残念ながら、格言にあるように、本当とは思えないほどうまい話は、多くの場合本当ではないのです。一攫千金を狙った計画はたいていお金がかかり、これから儲かる「確実な」投資話がとんでもない大失敗に陥ることはよくあり、信じられないほど連勝続きのベッティングの予想屋はすぐに分散の餌食となります。
ただし、望みがすべて絶たれたわけではありません。特にベッティングに関しては役に立つリソースがたくさんあります。興味深い点として、これらのリソースの類は大抵、ブックメーカーを打ち負かすための特効薬を提供するとは主張していません(実際できないからです)。ですが、正しく使えば、ベッターがより長期的な成功をおさめるのに役立つ情報を確実に提供してくれます。
- 参考記事:よく読まれている記事トップ10
一部のベッターは、Googleから始めて、大きな網を広げ、自分が優位に立つのに役立つベッティング関連の資料を見つけようとします。また、記事やポッドキャスト(オーディオコンテンツを好む人の場合)を通して、専門知識を共有しようという専門家のブログも多数あります。多くのノイズをフィルタリングする時間があるなら、Twitterも役に立つリソースです(特に、知識の共有を目的として人とのネットワークを構築しようとしている場合)。
このように、ベッティングを改善するために役立つ情報を探す方法はたくさんありますが、この記事では、直接的または間接的に、ベッターが活用できる豊富な情報が記載されている書籍に注目していきます。今回リストに絞り込むのはかなり困難を伴う作業でした(惜しくもベスト5入りを逃した書籍についても簡単にご紹介します)。また、あらゆるタイプのベッターに対応できるように、多様な書籍が選ばれていることに注意してください。
『偶然と必然の方程式』/マイケル・J・モーブッシン
完全なタイトルは『偶然と必然の方程式 仕事に役立つデータサイエンス入門』といいますが、この本は基本的に、すべてのベッターが理解すべきこと、つまり、運と実力の両方ともパフォーマンスと結果に影響を与えることが説明されています。ベッティングでの良い結果は私たちの予測能力によるもので、悪い結果は単にツキがなかったと考えるのは人間の性(さが)です。このような考え方は極めて一般的ですが、この原則に基づいてお金を投資すると、非常に危険な場合があります。
モーブッシンの著書は、良いベッティングと悪いベッティングといった単純な話ではないと、ベッターが理解するのに役立ちます。実力の有無にかかわらず、幸運と不運を体験することに備える必要があります。つまり、ベッティングで成功したいなら実力のあるベッターになる必要がありますが、幸運の恩恵を受けることも必要です。
因果関係と相関関係の区別、不確実性の理解、運の影響の測定(これらは本書で詳細に取り上げられています)といったことと同じくらい重要で、モーブッシンの著書で最も興味を引かれる要素の1つは、実力のパラドックスに関する彼の研究です。この実力のパラドックスを説明する優れた例としてMLBが使用されていますが、これはベッターがベッティング市場での競争に応用できる例でもあります。
『反脆弱性』/ナシーム・ニコラス・タレブ
今回のリストの候補にはナシーム・ニコラス・タレブの著書がいくつか挙がりましたが、この『反脆弱性―不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』が、『まぐれ』と『ブラック・スワン』を僅差で上回りました。タレブは、その執筆スタイルについては評価が分かれるかもしれませんが、彼の研究の質と知力は誰にも否定できません(金融市場での過去の経験と、NYUのタンドン・スクール・オブ・エンジニアでのリスク工学の著名な教授という地位をあえて紹介するまでもないでしょう)。
『反脆弱性』の前に『まぐれ』と『ブラック・スワン』を必ずしも読む必要はないのですが、お読みになることをお勧めします。タレブの考え方を伝えるやり方に慣れるためだけでなく、この3冊にはおのずと進展があり、ある種自然な秩序に従っているからです。『まぐれ』と『ブラック・スワン』はベッティングにより直接的な関連があり、『反脆弱性』はより社会的主張に進化したと言えるかもしれませんが、他の2冊ではなく本書がリスト入りを果たした理由は、以前のトピックをもう一度取り上げながら、さらに一歩前進させているからです。また、反脆弱性の概念を理解し、ベッティングに適用できれば、良い結果が得られるだろう点も本書を推す理由です。
- 参考記事:緑の木材の誤信
反脆弱性の概念がベッターにとってそれほど重要である理由は、機会を提供してくれるからです。変動性、無作為性や不確実性を受け入れ、変化しないのではなく、反脆弱性は、変化をもたらし、そのようなものにさらされたときに目標を達成できるようにします。
本書が伝える最も重要なことの1つは、「緑の木材の誤信」です。興味深い例の数々は本書にゆだねますが、ある種類の知識(特定のスポーツの知識)を他の種類の知識(そのスポーツのベット方法)より過大評価する傾向があることを理解することは、スポーツベッティングにおける多くのキャリアの重要な転機となりがちです。緑の木材の誤信を認識し、それが自分のベッティングにどのように関連するかを受け入れることにより、何にベットし、どのようにベットし、結果がどのようになるかという点で、大きな変化につながる可能性があります。
『Squares & Sharps, Suckers & Sharks (生真面目と明敏、カモと名人)』/ジョゼフ・ブチダール
ジョゼフ・ブチダールは、ベッティングの仕組みと長期的に勝つことがどんなに難しいかを人々に伝えるという真面目なアプローチにより、「ベッティングの死神」と称されています。『Squares and Sharps, Suckers and Sharks: The Science, Psychology Philosophy of Gambling (生真面目と明敏、カモと名人―ギャンブルの科学、心理学、哲学)』は、ブチダールの3冊目の著書(2013年出版)です。他の2冊も読む価値が十分にありますが、今回リスト入りしたのは彼の最新作です。
タイトルが示すように、本書はベッティングに関して広範なトピックをカバーしており、おそらく、弱気な人には向かないという警告が付くでしょう。ブチダール自身が説明するように、ベットをするのには多種多様な理由があり、あなたが純粋な娯楽としてベットしているなら、本書は知りたいことよりも多くのことが明らかになるかもしれません。
本書では数々の優れた思想を探求しており、その一部はPinnacleの記事でブチダール本人によってさらに掘り下げられています。そしてその多くは、確率の考えに結び付いています。確率論からはじまり、スポーツベッティングの世界で確率がどのような形で現れるのか、ベッティングでの成功の確率を計算しようとすることまで、運以外のあらゆることです。ブチダールは疑いなく非常に知的な人物で、独自の解釈と研究によって非常に複雑なトピックに挑み、研究結果を凝縮して読者に提示してくれます。
彼のTwitterをフォローする人には分かることですが、ブチダールは、予想屋をフォローすることは多くの場合、無駄な努力であることを人々に気付かせたいと思っています。『Squares & Sharps, Suckers & Sharks』には、その理由をはっきりと示す調査と分析がふんだんに盛り込まれています。
なぜ自分がそのような決断を下すのかや、確率、期待値の意味、なぜそれが重要で、有料サービスから提供される可能性が少ないのかをよりよく理解するのに役立つ本を探しているなら、本書ほど適したものはありません。
『Logic of Sports Betting(スポーツベッティングのロジック)』/エド・ミラー&マシュー・ダヴィドフ
『Logic of Sports Betting』は2019年に出版されると、たちまちベッターの間で人気に火が付きました。概念的には初心者レベル向けに書かれていますが、実際には誰にとっても得るものがあります。本書が出版以来、これほど高い評価を受けている理由は簡単にわかります。複雑な主題にも関わらず、比較的短くて読みやすいからです。ベッティングの背後にある数学を理解することと、それがベッターとしての経験にどのように変換されるかのバランスが完璧に取れています。
2人の著者は、どちらも素晴らしい経歴の持ち主です。エド・ミラーはポーカーについて多くの著書があり、マシュー・ダヴィドフは業界のモデリング側での経験があります。両者は現在、ライブオッズプロバイダのDeck Prism Sportsを運営しています。
- 参考記事:あなたはどのタイプのベッター?
『Logic of Sports Betting』は、単なるベッターの出発点ではありません。「総合的なホールド」という概念は、すべてのベッターが理解する必要がある基本原則の1つであり、土台となる優れたプラットフォームを提供するものです。ブックメーカーがベッターに対して持つアドバンテージの分類もまた、ベッターにとって非常に有益であり、この考え方を実践すれば、確実に良い結果がもたらされます(アドバンテージプレイヤーになることを禁止される可能性もあります)。
ベッターとしての成長の大部分は、知識を深め、間違いから学び、実力を磨くだけでなく、何と対決しているかを理解することでもあります。ベッティングがベッターとブックメーカーの対決であるというのは実際のところ俗説がかっており、あなたが市場で打ち負かそうとしているのは他のベッターですが、ブックメーカーがどのように機能しているかや、さまざまなタイプのブックメーカーとその潜在的な弱点を理解することは、非常に有益です。
『超予測力』/フィリップ・E・テトロック&ダン・ガードナー
ベッティングを成功させる秘訣が正確な予測を行うことだとすると、その点について書かれた本を含めることは当然のことに思えます。本記事を読んでいる多くの人は、まさにその理由からネイト・シルバーの『T(シグナル&ノイズ)』を推奨するでしょう。ただし、テトロックとガードナーの共著は、少し違ったものを提供します。
テトロックは20年にわたる研究から、予測のエキスパートは「ダーツを投げるチンパンジーとほぼ同じくらい正確」であると結論付けました。
本書を手にして読む場合、何の問題もなく勝てるベットを選べるようになると期待しているなら、相当がっかりするでしょう。しかし、予測を行い、避けるべきものを理解するというプロセスを改善するのに役立つものを探しているなら、本書ほどふさわしいものはありません。本書は、正確な予測を行うために必要なこと、考えられる落とし穴、なぜ最も正確な予測でさえその通りでないかもしれないのかという点について、包括的な概観を示します。
本書を読むときに認識しておくべきことの1つは、将来の出来事の予測に実際に長けている人の数が信じられないほど少なく、多くの人が考えるよりもはるかに少ないことです。これは、1984年から2004年にかけて、300人の専門家による予測を使用したテトロックの20年間におよぶ研究によって強調されています。彼の結論は、サンプルから得られた平均は単純にあてずっぽうと同等、つまり「ダーツを投げるチンパンジーと同等の正確さ」でした。
次点
本記事の目的は、ベッティングを向上させるための書籍ベスト5を提示することでしたが、5冊に絞り込むには優れた書籍が多すぎます。アンドリュー・マックの『Statistical Sports Models in Excel (Excelの統計的スポーツモデル)』のように、市場がどのように打ち負かされる(打ち負かされてきた)かについて読者に本当のインサイトを与えるものや、マイケル・コニックの『Smart Money (スマートマネー)』、ジョー・ペータの『Trading Basis (トレーディング基準)』のように、ベッティングの経験や、ベッティングの世界のとても興味深いキャラクターの信じられないような話を紹介する書籍もあります。