パート1:ブックメーカーは得点スプレッドでポジションを取るのか?

パート1:ブックメーカーは得点スプレッドでポジションを取るのか?

得点スプレッドは、ベッターにとって最も人気のあるベッティングマーケットの1つです。このマーケットは、参加するチームの「力の差をなくす」ことを目的としていますが、ブックメーカーは、私たちが信じさせられているよりもさらにマーケットを均一化できるかもしれません。ブックメーカーは得点スプレッドマーケットでポジションを取るのでしょうか? 詳しくは続きをお読みください。

2005年に、Steven Levitt(経済学者で『ヤバい経済学』の共著者)が、スポーツベットのマーケットは効率的であり、参加するベッターは集合的には賢明で、ブックメーカーは行動のバランスを取ることによってコミッションを稼いでいるという定説に疑問を投げかける影響力の大きな報告を発表しました。

Levittは逆に、ブックメーカーはむしろ、マージンを考慮した後の、結果の遡及的分析に基づく真のオッズ、つまりマーケットの均衡プライスから逸脱するオッズを公開する点において、試合の結果に関してリスクを取っていると主張しました。ブックメーカーがこうするのは、ゲームの結果予想についてブックメーカーほど能力がなく、合理的に行動する可能性も低いベッターのバイアスを体系的に利用することによって、より高い利益を達成するためです。

Levittは表向きには、2つの重要な観察結果から結論を導きました。第1に、1980年から2001年までの21回のNFLシーズンでは、どうにかスプレッド(両チームのプライスを均す目的でフェイバリットに適用されたマイナスポイントのハンディキャップ)をカバーしたフェイバリットは48.2%のみでした。第2に、NFLベッティングコンテストで285人が参加して242試合(2001年のシーズン)に19,770回ベットをした際、60.6%がフェイバリットに置かれました。実際のマーケット環境でこのようにベットがフェイバリットに偏ることが一般的であるならば、この2つの数字は、受動的なマーケットメーカーの従来の役割と一致しないことになります。 

いくつか注意事項を認識する必要があります。第1に、Levittのプレイヤーサンプルは少量でした。第2に、プレイヤーはコンテストに参加したのであって、実際にマーケットで行動したのではありませんでした。そして、第3に、賭け金の割合については何も分かりません。当然のことながら、ブックメーカーはそのデータを決して明らかにはしません。60.6%という数字はベット数に対するものであって、ベットの総額に対するものではありませんし、この2つは必ずしも相関しません。最後に、Levittは分析対象をただ1つのマーケットに限定しました。

この2部構成の記事では、分析をさらにNBAの得点スプレッドに広げて、ブックメーカーが実際にポジションを取ることができるかどうかを調べたいと思います。ブックメーカーがポジションをとるのであれば、これは、オッズは真の結果の確率を反映する値として信頼できるという、効率的市場の仮説に影響します。パート2では、NBAのスプレッドマーケットの証拠が、Levittの結論を支持するかどうかを見ることにします。しかし、パート1ではまず、ポジションを取るブックメーカーとは実際にはどのようなものかを確認することから始めましょう。

ちょっとした思考実験

2チームで競う単純なコンテストがあり、チームAとチームBの真の勝率が各50%であるとします。この場合、両者に公平なオッズは2.00になります。次に、ブックメーカーが適用する2.5%のマージンが均等に分けられるとしましょう。ブックメーカーは1.95のオッズを提供することになります。このようなコンテストごとに、チームAまたはチームBのいずれかに$1を賭けるベッターが100人います。そして、このようなコンテストが100あるとすると、ベッターのターンオーバーは、合計で$10,000になります。チームAとチームBへのベット割合や、どちらかのチームが勝つ頻度がさまざまだとすると、ブックメーカーはどれだけの利益を得ると見込むことができるでしょうか?

行動のバランスを取る 

まず、最も簡単なケースを考えましょう。受動的なブックメーカーが、チームAとチームBの両方の金額を等しくしようとしています。チームAとチームBの両方が50%の確率で勝つ場合、ブックメーカーがチームAのベットを$125、チームBチームのベットを$125とすれば、総利益が$250、つまりベッターのターンオーバーの2.5%となり、マージンが完全に反映されます。

SimmonsとNelsonは、スプレッドがフェイバリットに対して操作されていることを参加者に話した場合でさえも、やはり、ほぼ同数の参加者たちが、フェイバリットがカバーするだろうと信じようとすることを発見しました。

チームAの方がチームBより勝ち数が少ない、または多い場合はどうなるでしょうか? チームAが決して勝たないという極端な例を考えてみましょう。ブックメーカーは、チームAに対するベット金額$5,000すべてを受け取り、チームAに賭けたベッターに支払う必要は一切ありません。一方、チームBに賭けられたベットはすべて勝ちです。1.95のオッズで、ブックメーカーは、チームBのベッターに利益から$4,750を支払わなければなりません。したがって、ブックメーカーに残る純利益はやはり$250です。

チームAまたはチームBのどちらかがどれだけの頻度で勝つかにかかわらず、同じになります。たとえば、チームAが70%の確率で勝つ場合、ブックメーカーは、チームAが勝った場合のベットに$3,325、Bが勝った場合のベットに$1,425を支払う必要があります。同時に、それぞれが負けたベットで$1,500と$3,500を受け取ります。賭けの純利益はやはり$250です。

チームAまたはBに賭けられたベットからのブックメーカーの利益と損失の正確な配分は変化しますが、収支の合った賭けを提供する場合の純利益は、常にブックメーカーのマージンと一致することになります。したがって、ブックメーカーは行動のバランスを取ることを目指ざしているという仮説が一般に普及していることは、驚くには当たりません。 

バイアスのかかったベッターの影響

次に、ベッターが、チームAとチームBに同じ割合ではベットしないとしましょう。ブックメーカーの利益はどうなるでしょうか? チームAとチームBが50%の確率で勝つとした場合、やはり、$250、つまり2.5%で同じになります。チームAに誰もベットしない例も考えてみましょう。 

上述のシナリオでは、チームBが50%の確率で勝ち、ブックメーカーは、負けたベットで$5,000を得ますが、勝ったベットに$4,750を支払う必要があります。賭けの純利益は$250です。ベッターの80%がチームAに賭けるとするとしましょう。ブックメーカーは、チームAとチームBでそれぞれ$3,800と$950を支払い、$4,000と$1,000を受け取ります。賭けの純利益はやはり$250です。

ブックメーカーが正確なラインを設定したい理由を見るのは簡単です。ラインが真の結果の確率を反映する値として信頼できるのならば、ベッターの好みがチームAあるいはチームBの一方にどれほど偏向していようとも、そこは実際には重要ではないのです。

ポジションを取る 

勝率とベッターの行動の量の両方が50-50の均衡から逸脱すると、物事はより面白くなります。Levittの調査結果に倣って、ベッターの60%がチームAに賭けるが、チームAの勝率は48%しかないとしましょう。 

このとき、ブックメーカーはチームAとチームBで勝ったベットにそれぞれ$2,736と$1,976を支払う一方、負けたベットで$3,120と$1,920を受け取ります。チームBのベットに対する純利益は$56の損失ですが、これは、チームAのベットに対する利益と損失の差の方が大きい($384)ことによって相殺されます。賭けの純利益は$328となります。ベッターのターンオーバーの割合にすると3.28%です。 

このシナリオでは、チームAに金額が偏っているため、チームAの勝率が50%未満であれば、ブックメーカーはリターンを増やすことができます。この思考実験では、真の結果の確率を50%に設定しているため、ブックメーカーはついているということになります。

しかしながら、Levittは、実際のベッティングマーケットでは、50-50のプロポジションであるかのようにスプレッドを設定したブックメーカーが、ベッターが好んで賭ける側の勝率が50%未満になるだろうということを密かに知っていた場合、ブックメーカーの宣伝する利益率を超えてリターンを増やすことになるだろうと推定しました。 

このように行動することは、ベッターに関してリスクポジションを取ることにはなりますが、Levittは、ブックメーカーは、真の結果の確率を予想することにおいて自分が顧客よりも優れていること、また、合理的に行動する可能性が高いことを知っているので、喜んでそうすると主張しました。

次のヒートマップは、チームAへのベットの割合とチームAが勝つ頻度の両方が変化するにつれて、ベッターのターンオーバーに対するブックメーカーの実際の利益がどのように変化するかを示しています。ベッターのターンオーバーに対するブックメーカーの利益は、小数点1桁までのパーセントで示されています。

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行動のバランスが取れているところ、またはチームAが50%の確率で勝つところでは、ターンオーバーに対する利益が理論上の利益率と一致することがはっきり確認できます。対照的に、ベッターがチームAに比例的により多く賭けるところほど、ブックメーカーは実際にはさらにうまくやることができますが、勝ちは少なくなります。チームBについても同様です。ヒートマップは基本的に左上から右下への対角線に沿って左右対称です。

得点スプレッドのフェイバリットのバイアスがあるのはなぜでしょうか?

Levittの調査結果に戻りましょう。特に、ベッターが、得点スプレッドのフェイバリット、マイナスの得点ハンディキャップがある側に賭けることを好むように見えるはなぜでしょうか? Levittからの説明はありませんでしたが、他の人がこれを説明しました。ペンシルベニア大学ウォートン校のJoseph Simmons教授と、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクールのLeif Nelson教授は、バイアスがどこから生じるのかについて、直感からくる自信という心理学的説明を提供しました。

Levittのデータは20年以上前のものであることに留意する必要があります。この間、オンラインスポーツベッティングの世界は様変わりしました。ブックメーカー、ベッター、予想モデル、マーケット、金額、何もかもが増大しています。

Levittの結果と大体同じで、SimmonsとNelsonは、2003年と2004年のNFLシーズン中にオンライン予想を行ったベッターのほぼ3分の2が、フェイバリットがスプレッドをカバーする方に賭けたことを確認しました。大学フットボールでは、70%にも上りました。さらに、直感的な自信を持つベッターが一方の勝利を強く主張する場合ほど、そのチームが得点スプレッドもカバーするだろうというベッターが抱く自信も大きくなりました。

このような直感的なバイアスは、チーム間の得点差を予想するという認知的にはより複雑な判断を、どちらのチームが勝つかを単純に予想するより簡単な方法に置き換えることによって発生します。対照的に、チームが互角に近くなるほど、どちらが勝つかについての直感的な自信は弱くなり、そのため、どちらか一方がスプレッドをカバーすることに賭けるというバイアスは小さくなりました。 

残念ながら、Levittの調査では、調査は賭けの金額が考慮されず、ベッターのパーセントのみが考慮されていました。SimmonsとNelsonは、仮説の賭け金を使って2007年のNFLシーズンにおける日曜日の226試合の結果を予想するように求められた178人の参加者の判断を分析することによって、この欠点を正そうとしました。

結果は同じでした。もっと興味深いことには、2人は、スプレッドがフェイバリットに対して操作されてることを参加者に話した場合でさえも、やはり、ほぼ同数の参加者たちが、フェイバリットがカバーするだろうと信じようとすることを発見しました。 

ブックメーカーが、ベッターに気付かれないようにスプレッドを少し操作するだけで、自分たちの取り分を2.5%から3.3%に増やすことができるのなら、もしかしたらブックメーカーがその道に踏み込むということはあるのでしょうか? 得点スプレッドで、45%の確率で勝つフェイバリットに賭けるベッターが60%いると、ブックメーカーのリターンは4.5%に増えます。フェイバリットがスプレッドをカバーする確率が40%しかなければ、リターンは6.4%に増えるでしょう。

これに対する答えはおそらく常識的なものです。最終的にはベッターが気付くだろうというのが答えです。直感的なバイアスは48%から50%の差をあいまいにするのには十分に強力かもしれません。しかし、スプレッド操作をもう少し増やすと、ベッターの行動判断はおそらく新しい均衡に近づき、フェイバリットがスプレッドをカバーする方に賭けるベッターは少なくなります。

上のヒートマップから、その割合が50%を下回ると、ブックメーカーは理論上のマージンよりも悪くなることを確認できます。現実的には、ベッターが気付く前にブックメーカーが逃げきることができるケースは限られています。固定オッズのベッティングマーケットにおける本命-大穴バイアスに関しては、認知バイアスが存在しますが、そのバイアスは弱いため、利用するには限界があります。 

市場効率への影響

ブックメーカーは単に受動的にコミッションを稼いでいるのではなく、得点スプレッドマーケットを操作することで、顧客に対して積極的にリスクポジションをとり、リターンを増やしているというのがLevittの結論ですが、これは、ブックメーカーのプライスが効率的ではない、真の結果の確率とは一致し得ないということを示しています。それどころか、50%の成功率を示すスプレッドプライスが48%の確率しかカバーしていないとしたら、どうなるでしょうか?

Levittのデータは20年以上前のものであることに留意する必要があります。この間、オンラインスポーツベッティングの世界は様変わりしました。ブックメーカー、ベッター、予想モデル、マーケット、金額、何もかもが増大しています。スポーツベットのような相対的能力のマーケットでは、競争の激化は通常、能力のパラドックスで説明されるプロセスを通じて、より効率的でより正確なプライスの促進を意味するはずです。 

スポーツベッティングは金融市場のようなものではないというLevittの提言には、理にかなっているところがたくさんあります。行動の促進者は自分の利益を増やすためにその行動の一部に加わることを選択しています。しかし、より最近のデータ分析では、この仮説に対する支持をさらに提供していくことができます。この記事のパート2では、NBAの得点スプレッドマーケットを見て検証するつもりです。

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