アービトラージベッティングとバリューベッティングの比較 - 誤解を紐解く

ピナクルのトレーディングディレクターによるベッティングリソースへの初寄稿

アービトラージベッティングとバリューベッティングを詳細に比較

バンクロール管理と分散の重要な役割についての検証

アービトラージベッティングとバリューベッティングの比較 - 誤解を紐解く

ピナクルのトレーディングディレクターである私に課せられた任務はリスク管理です。リスク管理はまた、賞金を稼ぎたいと望むすべてのベッターにとっても重要です。ベッターによるリスク管理やバンクロールの管理のアプローチについて書かれた記事を読んでいるうちに、ベッティングリソースへの最初の寄稿は、最も幅広く議論され、かつ誤解されがちなトピックのひとつ、つまりアービトラージベッティングとバリューベッティングにまつわる誤解を紐解くものにしようと決めました。

ピナクルには、アービトラージベッティングを歓迎する、という他に類を見ないポリシーがあります。アービトラージベッティングは、価格差を利用してリスクフリーの利益を探るというもので、よく行われる手法です。これは、ブックメーカーが潜在的な確率を真に反映していないオッズを提示しているために可能な手法です。 

リスクフリーの利益を見越せることを考えれば当然のことながら、アービトラージの入門書は、ベッティングリソースのベット戦略に関する膨大なアーカイブの中で最も人気のある記事のひとつとなっています。リスクに晒されないことが保証された利益の約束は、話がうますぎて信じがたいと思われるときの意見と矛盾するものです。1

アービトラージ

いくつかのブックメーカーで、プライスの不一致をうまく利用して収益を保証するために、1つのマーケットのすべての選択肢に賭けること。

アービトラージは健全なベット戦略といえます。1 事実、1兆ドル規模の投資銀行業務では、利益を生み出す大部分の基盤となっています。ほとんどのブックメーカーはアービトラージをする人を嫌がります。彼らがターゲットとするプレーヤー像にはふさわしくないからです。しかし、私の取引モデルはアービトラージを含むボリュームに焦点を当てています。私はベッターが我々のルールに従う限り、彼らのベットの意図が何であるかはまったく気にしません。

アービトラージベッティングは、価格差につながる状況からどのように利益を得ようとしているのかについて、独自のコミュニティと考え方の傾向を持つまでに至りました。アービトラージが行われる潜在的な理由についていくつか説明されていますが、なかでも最も一般的なのは、ブックメーカーが特定のイベントの潜在的な確率について異なる評価を行っているということです。彼らは過度に気前のいいオッズを提供していることがあります。

アービトラージベッティングはすべてのポジションが完全にヘッジングされるため、安定した成長パターンを示します。リスクはないので差は生まれません。あなたのベースはすべてカバーされます。

そのような状況でアービトラージを行うには、その市場で最も正確な評価を探し出し、比例する賭け金で両面を賭ける必要があります。ピナクルは業界最高のブックメーカーのひとつであり、アービトラージベッティングを行う方々のお手伝いをいたします2。よく目にする提案に、オッズが間違っている場合には正味のアービトラージポジションをとってその値に賭けてみよう、というものがあります。このなんとも単純な評価はリスク管理とバンクロール管理の重要な問題点を無視しています。そこで、この記事を書こうと思い立ちました。

この問題の答えを導くために、まずアービトラージの機会の例について説明しましょう。

アービトラージベッティングの例

オプションオッズブックメーカー
バルセロナがUCLで勝利(はい) 2.120 ピナクル
バルセロナがUCLで勝利(いいえ) 1.950 某ブックメーカー

比例ベットでは、ピナクルで倍率が2.120のバルセロナ勝利に賭け、かつ、某ブックメーカーではバルセロナ敗北に賭けることで、試合結果に関係なく利益が保証されることになります。

アービトラージベッティングにおける利益の例

オプションオッズリスク利益の見込み正味の利益
はい 2.120 95.82 203.134 3.14
いいえ 1.95 104.18 203.15 3.15

バリューベッティング

アービトラージの手法を使って間違ったオッズを示すが、そのオプションにのみ賭けを行うことで、結果として本当のリスクが生じる。

バリューベッティングとアービトラージベッティング

アービトラージは某ブックメーカーのバリューベッティングの機会を単に明らかにしているだけであるという考え方があります。某ブックメーカーで「敗北」に賭けてピナクルで「勝利」に賭けるというヘッジ(分散)を行う代わりに、バリューベッティングは、ピナクルラインの方が、バルセロナがチャンピオンズリーグで勝利する真の確率をより反映しているということを示唆しています。つまりピナクルの価格は正しく、某ブックメーカーの価格は正しくないということを意味しています。このオッズは間違っているので、アービトラージを行わず、単に「価値ある」不正確さを利用すべきです。

バリューベッティングとアービトラージベッティングの例

ブックメーカーオプションオッズ間接的な確率
ピナクル はい 2.120 0.472
ピナクル いいえ 1.810 0.553
某ブックメーカー はい 1.910 0.524
某ブックメーカー いいえ 1.950 0.513

ピナクルのプライスが正しいという仮定を受け入れると、バルセロナがUCLで敗北する(つまり「いいえ」)確率は53.9%です(上の表に示しているブックメーカーのマージンを省いた数値)。これは、某ブックメーカーの評価である49.5(53.9 - 49.5)と4.4%の差異があります。某ブックメーカーで「いいえ」に賭けると、払戻金は正しい確率からベット確率を引いたものとなります。 1.95では51.3%になります。つまり、期待できる払戻金は(53.9 - 51.3)= 2.6%となり、ほとんどの銀行口座の利息よりは高くなります。しかしこれがすべてでしょうか?

バリューベッティングとアービトラージベッティングの例

ブックメーカーオプションオッズ正しい確率
ピナクル はい 2.120 0.461
ピナクル いいえ 1.810 0.539
某ブックメーカー はい 1.910 0.505
某ブックメーカー いいえ 1.950 0.495

バリューベッティングと分散

オッズ1.95のベットと51.3%のマージンを伴う潜在的な確率は、損益なしにするためにはベットの51.3%を勝たなければならないことを意味します(コイントスなら半分つまりベットの50%を勝てば損益なしです)。しかし、この1回のイベントでバリューベッティング手法の効率性をテストするのは不十分です。サンプルのサイズを大きくして検証してみる必要があります。

たとえば、オッズが1.95のベットを1,000回行うと、512.8回のベットで勝つことになります(下のグラフを参照してください)。つまり、二項分布において、この一定のエッジでの成功ベットの数が512以下である確率が18.6%であることを示しています。この一定のエッジでの成功ベットの数が450以下である確率は4.91%です。

アービトラージベッティングとバリューベッティングの比較

期待される成長率

バリューベッティングの成長曲線(時間がたつにつれてより多くの賭けをすることで利益率がどう変化するかを示す)は、基本となる正しい確率に大きく依存します。ケリー基準を用いて適切な賭けを決定する際に、前述のバルセロナの例で示したようなエッジが重要な要因となるからです(ケリー基準について詳しくはこちらを参照してください)。

アービトラージベッティングはすべてのポジションが完全にヘッジングされるため、安定した成長パターンを示します。リスクはないので差は生まれません。あなたのベースはすべてカバーされます。最初のバンクロールを1,000ユニットとし、2.66%のエッジでケリー基準に基づいたベット戦略を適用してモンテカルロシミュレーションを1,000回行い、それぞれ1,000回ベットするとします。下のグラフは、その場合の予測値を示しています。

アービトラージベッティングとバリューベッティングの比較

1,000回のモンテカルロシミュレーションで500ユニット以下の利益が生まれています。上位10%では3,000ユニット以下の利益が生まれています(これが今回のベストケースです)。下の10%では500ユニット以下の損失が生まれています。1,000回を超えるベットでは、アービトラージベッティングではモンテカルロシミュレーションの上位10%の結果と同じような良い結果が生まれます。これまで述べてきたように、それは変わりません。

ケリー基準はバンクロールの成長にとって賢明な戦略であり、売り買いを交錯させる戦略を採用している場合には、バンクロールの健全な成長を確保するためケリー基準が推奨されます。

バリューベッティングがアービトラージベッティングと比較してこのように実行される理由は、潜在的なリスクに比例しなければならないバンクロール管理と関係しています。この方法でベットを行っていない場合は、この賭け方に関する記事を読んでください。さもないとすぐに手持ちのバンクロールがなくなってしまうでしょう。アービトラージベッティングでは、この問題は発生しません。リスクがないため、かなりの割合のバンクロールを賭けることができます。

200ユニットまでを賭けた前述の例は、1,000ユニットで始める平均的なベッターにとってより現実的であるため意図的に選ばれました。リスクとバンクロールの関係についてすでに述べられている点を踏まえれば、実行可能であるためには、バリューベッティング戦略では2.66%のエッジベットで最初のバンクロールの20%をリスクにさらすことはできません。損失の可能性が大きすぎます。

確かに、バンクロールと賭け金の制限のないバリューベッティングはアービトラージに勝るものですが、現実の世界ではケリー基準はバンクロールの成長にとって賢明な戦略であり、売り買いを交錯させる戦略を採用している場合には、バンクロールの健全な成長を確保するためケリー基準が推奨されます。

理論的なアービトラージは数学的な観点からみればリスクフリーですが、これは外部性を考慮していません。これには、某ブックメーカーがあなたの賭けを受け入れる意思があるかどうか(アービトラージベッターをプロファイリングするかもしれません)、提示するオッズが受け入れられないほど「間違った」オッズであるという認識があるかどうか、さらに、ピナクルでの賭けと比較して、某ブックメーカーの比例ベット金額でベットできるか(上限値は問題ではありません)どうかが含まれます。

ピナクルのオッズはかなり正確であるため(独自に評価しています)、彼らは特定のイベントの潜在的な確率について必ずしも正しく反映させる必要はないのです。その正確性には数多くの要因が関係しています。

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