サッカーのベッティングにおけるランダム性と効率性に関する別の知見

効率性はどのように見えるのでしょうか?

ランダム性と効率性の理解

まだまだ学ぶべきこと

サッカーのベッティングにおけるランダム性と効率性に関する別の知見

ジョゼフ・ブチダールは、サッカーのベッティングにおけるランダム性の測定や、オッズがいかに効率的であってそれに勝つことがいかに難しいかに関して、参考になる記事を数多く執筆しています。彼の最新の記事では、この主題をもう一度掘り下げ、サッカーのベッティングにおけるランダム性と効率性に関する別の知見を示しています。

私が思うに読者はおそらく、サッカーの試合でのベッティングが難しいのは主にランダム性があって効率的なためだというメッセージに辟易していることでしょう。私もそう感じるのですが、ロックダウン中でサッカーの試合が無い今、もう一冊本を書くのを先延ばしにすること以外にすることも無いので、以前の考え方を再考してみることにしました。

この記事は、その再考による成果です。特に目新しい発見はありませんが、以前の考え方に別の角度から光を当てています。お役に立てば光栄です。

効率性はどのように見えるのでしょうか?

長い間、私はサッカーにランダム性は無いという人たちと議論してきました。Manchester UnitedがCambridge Unitedに勝つ可能性が高い場合、どれほどランダム性が影響するのでしょうか?彼らの言うとおりです。しかし私たちはサッカーの話ではなく、サッカーベッティングの話をしているのです。

基本的に、オッズには各チームの実力差を考慮に入れてハンデが付けられます。強いチームのオッズは低くなります。十分な数の人が各チームが勝つチャンスに関してお金を使ってその意見を表明すると、オッズは価格発見として知られるプロセスによって、「真のオッズ」に(それが分かればですが)かなり近づく傾向があります。この傾向が群衆の英知によるものなのか、あるいは頭の切れるベッターの知恵なのかは、どうでもいいのです。

まあ、少なくともイングランドのサッカーリーグでPinnacleのオッズに勝つことは、弱気な人には絶対できません。

ブックメーカーの仕事はオッズをできるだけ真の値に近づけ、想定されるリスクを最小にするようにして、マーケットメイクによって長期的にコミッションを得ることです。ベッターの仕事は、ブックメーカーの誤りを見つけることです。

ブックメーカーが平均して真のオッズに近づいているかどうかを判断するひとつの方法は、全部にベットするとマージンを適用する前であっても私たちが破産するかどうかを見ることです。さらに、ベットの小量のサンプルからのリターンが公平なコイントスのようにばらついていて、またそのリターンが平均値に回帰すれば、そのオッズが効率的で、成績の変動は何かの信号ではなく単なるノイズによるものであることがより明確に示されます。

それではいくつかのデータを見てみましょう。イングランドのプロサッカーリーグでの過去3シーズン(2016/17 ~ 2018/19)のデータから、マージンを除いたPinnacleのクロージングオッズ(「公正」なオッズ)を使って、各試合のチームの評価点を計算してみました。評価点のルールはシンプルで、前にも使いましたが、次のようなものです。

あるチームが勝つと、1 - 1/オッズの評価点が与えられます。

あるチームが勝てないと、- 1/オッズの評価点が与えられます。

つまり、各試合でのチームの評価点は理論的に最高が+1、最低が-1となります。

3シーズンにわたっての4ディビジョンの試合(6,108試合で12,216評価点)では、平均評価点が0.0030、標準偏差は0.4557でした。このことから、もし公正なオッズが平均して完全であれば、予想される評価点の平均は0にかなり近づくように見えます。

評価点はランダムに分布するのでしょうか?

評価点サンプルの分布についてはどうでしょうか?チームと試合日でデータを整理し、各チームの連続した6試合での評価点の移動平均を計算しました。当然ですが、シーズンの最初の5試合には評価点がありません。

6試合の平均評価点は0.0032で、標準偏差は0.1866でした。以下のチャートでは、その分布を青い線で示しています。オレンジの線は、評価点をランダムに生成した場合の理論上の正規分布です。それと実際の結果に基づく評価点の分布との差を示しています。

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さらに標準偏差は、平均値の標準誤差を使って最初の原理で予測した値とほとんど変わりません。

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ここで、σはこのケース6での各試合の全母集団の評価点の標準偏差であり、nはサンプル数です。そのため、

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これは実測数値の0.1866とは大きく異なっています。標準誤差の公式をもう一度使うと、この標準誤差の数値において予想される標準偏差を計算できます。言うなれば、標準誤差の標準誤差です。6試合のサンプル数は10,836ありますが、その計算方法を次に示します。

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このように、0.1860は0.1866から1/3標準偏差だけ隔たっているにすぎず、統計的な有意性の境界内に収まっています。実測値とランダム性の予測値の差は、偶然によって生じたのです。

これから言えることは、Pinnacleのオッズは真の値に非常に近い優れたもので、しかもベッターが少なくとも6試合でのベットで経験するリターンの圧倒的多数は、単に幸運か不運かによるものだろうということです。

これは非常に受け入れがたい主張であり、私は常に批判を受けています。主な批判は「平均で」というフレーズにまつわるものです。Pinnacleのサッカーオッズは平均すればかなり効率的かもしれませんが、ベッターは平均に対してベットしているわけではありません。それは確かにそうですが、ベッターにとって難しいのは、ブックメーカーの具体的な誤りを体系的に見出す方法を知ることです。圧倒的多数がそれをランダムに「見出して」いることは、証拠が示しています。

この計算を12試合と24試合のサンプルでも繰り返してみました。それらの評価点の分布を合わせて以下に示します。それらの分布は、6試合での評価点の場合よりも、ランダムに生成した正規分布に一層近づきます。

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平均の12試合の評価点は0.0037、24試合では0.0049です(3種類の場合におけるわずかな差は、偶然によるランダム性と、対象とする試合の母集団の大きさの差に起因すると思われます)。標準偏差はそれぞれ0.1301と0.0916です。平均の標準誤差を使って計算した値はそれぞれ0.1315と0.0930となっています。予想値との差異はそれぞれ1標準偏差程度であり、やはりこれも偶然によるランダム性によってのみ起こると考えられます。

平均値への回帰

6試合の平均評価点の偏差が体系的であれば、何が起こるかを予測することができるでしょう。例えば、6試合で正の平均評価点を挙げた状態の良いチームは、次の6試合でもまた正の平均評価点を挙げると予測できるかもしれません。悲しいかな、そうはならないのです。6ゲームのサンプルでは、ほぼ完全に平均値への回帰が見られます。

ここで注意してほしいのですが、私は別に、6試合で強かったチームが次の6試合では強さに陰りが出る傾向にあると言っているのではありません。それどころか、強いチームは強いままでいる傾向があります。今シーズンのLiverpoolがそうですよね。私が言っているのは、ベッティングマーケットではチームが本来持っている実力を考慮に入れてハンデが付けられているため、ベットにより受け取る評価点の報酬は、平均に回帰していくということです。

下のチャートは実際には不可能ですが、あるチームの1~6試合目での評価点に基づいて、7~12試合目での6試合の平均評価点がどのようになるかを、平均で予測したものです。サッカーチームは連勝する場合がありますが、ハンデを付けた報酬に賭けるベッターにはそれがありません。

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ブックメーカーがオッズを設定するスキルと、誤りがあった場合にベッターがそれを利用するスキルは、マーケットのクローズによって、ベッティングの評価点で見られるほとんどすべての変動が、偶発的不確実性の結果、つまり偶然によるものであることを意味します。

評価点のルール

先月、私は階層別確率スコア(RPS)を得点ルールとして使用して、Pinnacleのサッカーベッティングマーケットの効率性を測定する指針とすることを述べました。同様に、この記事で使用した評価点のルールも実際に考えられるかもしれません。

Pinnacleのオッズが完全に効率的だったら、母集団の平均評価点は正確にゼロになります。もちろんRPSに関しては、ゼロからの偏差のどれほどが偶発的不確実性の結果(結果におけるランダム性)であり、どれほどが認識論的不確実性の結果(ブックメーカーのオッズ設定モデルの誤り)なのかは不明です。私はPinnacleのオッズからマージンを除くという方法を取ったので、もしかすると二次的な認識論的誤りを犯したかもしれません。マージンをどう扱うべきか正確には分からないので、除き方を推定しなければならなかったのです。

にもかかわらず、母集団の平均評価点がゼロに近づき、試合のサンプルの平均評価点の分布がランダム分布に近づくというのは、Pinnacleのサッカーの試合におけるベッティングオッズの効率性を示す強力な証拠となります。

ホットハンドの誤謬についてはどうでしょう?

いろいろ考察しましたが、未解決の問題が残っています。2年前に私は、ホットハンドの誤謬により生じることがあるPinnacleのサッカーオッズにおける非効率性を利用するように試みる、ベッティングシステムを提案しました。

そこでの仮説は、ベッターが連勝を信じる可能性があるということでした。その結果、ベッターは連勝中のチームにベットしすぎて、実際の結果の可能性と比較してオッズを下げる可能性がありました。一方、調子の上がらないチームへのベットは少なくなり、オッズが上がって一儲けする機会が生じることも考えられます。

比較的調子の悪いチームと、比較的調子のいいチームに対する6試合連続のベッティングの差異はそれほど大きくありませんでした(分析した試合の母集団に対するp値は0.02です)。最弱チームと最強チームの場合はもっと大きくなり(p値は0.001)、5000以上の賭けのサンプル(平均オッズは3.9)での実際の利益として2.7%が、Pinnacleのクロージングオッズで得られた可能性があります。しかし、この分析によってマーケットがほぼ完全に効率的であると示されるなら、すべては幸運という名の幻影に過ぎないのでしょうか?

ブックメーカーの仕事は、できるだけ真のオッズに近づけることです。ベッターの仕事は、ブックメーカーの誤りを見つけることです。

それは可能です。2.7%の利益は、偶然に任せると100回に7回起こり得ます。つまり統計学的にはほとんど保証されないのです。しかしながら、6試合の評価点平均分布をもう一度よく見てみると、大きな負の評価点が偶然で予想するよりも少なくなることが分かります。-0.3より小さいものは438ありますが、ランダムに生成した場合は563です。

これについて考えられる説明としては、連敗中のチームに賭けるベッターが少なくなり、オッズが本来あるべき値より高くなるからでしょう。つまり負けるたびに評価点が比較的より小さい負の値になるということです。6試合の平均評価点が-0.30以下の438チームの7目の試合に賭けると、11.6%の利益が得られた可能性があります(平均オッズ3.22、p値0.06)。

実際のところ、-0.3より小さい評価点がたった438というのは、かなり幸運な結果でした。こういったオッズでは、暗示的確率に基づいて結果をランダム化すると予想される数値は513となり、モンテカルロシミュレーションでは438より少なくなるのがわずか2.5%でした。次にこの予想される数値513を、完全な正規分布と母集団の平均評価点がゼロであると仮定した場合に予想される値と比較します。この値は、期せずして584でした。実施したシミュレーションのうち、-0.3より小さい6試合平均評価点を持つものが584より多かったのは、わずか3.5%でした。統計学上、これはそれほど重要ではないと結論付けることができます。多分、実際の6試合の評価点分布はやはりランダムではないのです。

もちろん、同じ推論を「好調な」チームにも適用すべきです。連勝しているチームのオッズは、真の結果の可能性と比較して低めになります。つまり、大きな正の評価点は予想よりも少なくなるはずであることを意味します。しかし、このデータサンプルではそうなりませんでした。

サッカーのベッティングでは、ランダム性と効率性に関してまだまだ研究が必要です。

サッカーベッティングの評価点の分布に関して非ランダム性があるとすれば、この分析はその発見が難しいことを示しています。ランダムノイズと潜在的に活用できる体系的な信号との境界はまったく微妙であり、体系的な信号は非常に優秀で活発に活動しているベッターに対して、長期間繰り返し行われるプレイにのみ現れるのです。

この記事は、その再考による成果です。特に目新しい発見はありませんが、以前の考え方に別の角度から光を当てています。お役に立てば光栄です。

一般的に、Pinnacleのオッズは非常に効率的であり(たとえ平均した場合だけだとしても)、体系的な非効率性、例えばホットハンドの誤謬などは、なかなか見出しにくいことが明らかです。さらに、ほとんどの場合でPinnacleは良い仕事をしており、もし非効率な部分があったとしても、大部分はそのマージンのなかに収まるようになっています。まあ、少なくともイングランドのサッカーリーグでPinnacleのオッズに勝つことは、弱気な人には絶対できません。

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