本命-大穴バイアスがバイアスではない理由

本命-大穴バイアスがバイアスではない理由を知る

ブックメーカーはどのようにマージンを適用しているのか?

本命の低いエッジが受け入れられるのはなぜか?

本命-大穴バイアスがバイアスではない理由

長い間、マーケットプライスを検証することで、イベントの真のオッズを解明する方法について議論が交わされてきました。この記事では、本命-大穴バイアスがバイアスではない理由を見ていきます。読み進めて詳細をご確認ください。

これを正確に行うには、まず真のオッズを正確に反映していると信じられるオッズを見極め、そこからブックメーカーのマージンを排除する必要があります。多くのマーケットで、Pinnacleは真のオッズを正確に見極めるための優れた資料を提供しています。というのも、勝っているベッターを見つけ出して制限するのではなく、彼らの意見を集めることに時間と資金を費やしているからです。

しかし、ブックメーカーのマージンを取り除くときのプロセスはややこしくなるので、所定のマーケットのラインからそれを取り除く最適な方法をじっくり見ていきましょう。そのためには、ブックメーカーの考えをよく理解して、まずマージンを適用する方法を解明する必要があります。

一般的に、ラインに平等にマージンを適用するのがブックメーカーにとって一番利益があるとされています。つまり、彼らが1つのラインでオッズをフェアオッズの91%に減らした場合、同じ割合で他のライン(またはマルチプルライン、マルチウェイマーケット)のオッズを減らす必要があります。例えば、NFLスプレッドやトータルの場合、ほとんどのブックメーカーが約4.8%のマージンを適用します。スプレッドは両サイドが50/50の確率になるように作られているので、マージンを100%に足してオーバーラウンドを作ることでオッズを決め、この数字に真の勝率を掛けて、ベッターにとって損益分岐点の勝率を算出します。

50% * 104.8% = 52.4%

次の式に基づいて、これが両サイドの-110/-110のラインになります。

100 * [(52.4%/(52.4% - 100%)] ≈ -110

ブックメーカーはこの方法で、ベッターがベットするラインやオッズに関係なく、ベッターと同等のエッジまたは期待値(EV)を得ます。どれだけアンバランスなマネーでもブックメーカーは理論上同じエッジを持つため、どちらがよりリスクが高いかに関心がありません。本当でしょうか?

この従来の理論の問題点は、多くの事例で誤りであることが証明されていることです。実際のスポーツイベントの結果を検証して、利用可能な最も鋭いクロージングラインと比較することで、有資格の複数の執筆者が「本命-大穴バイアス(FLB)」があることを示しています。 つまり、ブックメーカーがラインにマージンを追加する方法にバイアスがあり、大穴には本来より多く、本命には少なく追加しているということを意味します。ここで2つの疑問が生じます。ブックメーカーはどのようにマージンを適用しているのか、そして、ブックメーカーが本命に対して低いエッジ、大穴に対して高いエッジを受け入れるのはなぜなのか、という根本的な問いです。

マーケットのEVのバランスをとることと、MEGのバランスをとることには微妙な違いがあります。

ブックメーカーがマージンを追加する手法についてもたくさんの理論があるように、バイアスが生じる理由にも多くの理論があります。しかし、両方の疑問に同時に答えるために、もう1つの理論を付け加えたいと思います。

私の理論はこうです。マーケットの両サイドに同じエッジを作ると、従来のスポーツブックの最大の利益はもたらされません。例えば、バランスの悪いアクションがあると、マーケットメーカーは資金にリスクを持つ可能性があります。代わりに、マーケットのどちら側がよりリスクが高いかに無関心でいると、最大の利益が得られます。これは、マーケットの両サイドに同じ最大予想成長率(MEG)を作った場合に起こります。ラインのMEGは、ケリー基準に基づくフルケリーでベットした場合に得られる予想成長率になります。

マーケットでEVのバランスをとることと、MEGのバランスをとることには微妙な違いがあり、ブックメーカーがこの方法でマージンを適用しているとしたら、マージンを取り除くための式を解くために大いに数学に取り組む必要があります。私のケリーの最適化理論(TKO)で疑問に答えるには、いくらかの対数関数と多くの代数関数を使用する必要があります。しかし、もし私が正しければ、ラインのセットからマージンを取り除き、ベットで高いエッジを得る方法を特定する正確な方法を得たことになります。そして、ブックメーカーがその方法で最大の利益を得ている理由がわかります。

私の理論が正しいことを示すには、ツーウェイマーケットにおいて、ブックメーカーの資金の最適な配分に対して各サイドでリスクがある場合に、両サイドの資金の予想成長率が等しくなることを証明する必要があります。この配分はもちろんケリー基準によって決まります。ちなみにこの手法は、2019年3月にPinnacleのために執筆された記事「本命-大穴バイアスの要因となるのは誰か?でJonathon Brycki氏が提案した理論と概念の点で似ていますが、彼は最適なマージンの配分について最終的な答えにたどり着いていないようです。マーケットの両サイドで資金の対数の期待値に関する次の方程式が正しい場合に、MEGの正しいバランスが発生します。

E = p * log(1 + f1b1) + q * log(1 – f1) = q * log(1 + f2b2) + p * log(1 – f2)

このとき、

p、q = 本命と大穴それぞれの真の勝率。

f1、f2 = 本命と大穴それぞれのリスクがある資金の最適な配分

b1、b2 = 本命と大穴それぞれについて公開したオッズ(例:デシマルオッズ – 1)

マーケットの両サイドの真のオッズ(公開したオッズの暗示的確率の関数として)を求める場合、

p1、p2 = 本命と大穴それぞれの暗示的勝率

b0 = 大穴の真のオッズのネット分数

1/b0 = 本命の真のオッズのネット分数

真のオッズを見つけるには、ブックメーカーのリスクにさらされる資金の配分がまさに最適な金額であると想定するので、単純なケリー基準の式を配分f1、f2のときのオッズと確率に対して代用できます。すると、次のような式になります。

E = p * log(1 + f1b1) + q * log(1 – f1) = q * log(1 + f2b2) + p * log(1 – f2)
p * log(1 + f1b1) - p * log(1 – f2) = q * log(1 + f2b2) - q * log(1 – f1)
p [log(1 + f1b1) - log(1 – f2)] = q [log(1 + f2b2) - log(1 – f1)]

次が成り立つ場合、

f1* = p – q/b1   と     f2* = p – q/b2
 f1、f2に代入し、簡約します。
p [log(1 + pb1 - q) - log(1 – q + p/b2)] = q [log(1 + qb2 - p) - log(1 – p + q/b1)]
p log[(1 + pb1 - q)/(1-p+q/b1)]
= q log[(1 + qb2 - p) - log(1 – p + q/b1)]
p log[(p + pb1)/(p + p/b2)] = q log[(q + qb2)/(q + q/b1)]
p log[(p (1 + b1))/(p + p/b2)] = q log[(q (1 + b2))/(q + q/b1)]
p log[(p (1 + b1) * b2)/((p (1 + b2))] = q log[(q (1 + b2) * b1)/((q (1 + b1))]
p log[((1 + b1) * b2)/(1 + b2)] = q log[((1 + b2) * b1)/(1 + b1)]

この時点で、便宜上デシマルオッズ(O1、O2)に変換し、暗示的確率に変換できます(暗示的確率はデシマルオッズの逆数であるため)。

p log[O1(O2 - 1)/O2] = q log[O2(O1 - 1)/O1]
p log[p2(1/p2 - 1)/p1] = q log[p1(1/p1 - 1)/p2]
p log[(p2/p1) * ((1 - p2)/p2)] = q log[(p1/p2) * ((1 - p1)/p1)]
p log[(1 - p2)/p1] = q log[(1 - p1)/p2]
b0 = p/q = log[(1 - p1)/p2] / log[(1 - p2)/p1]
b0 = log[p2/(1 - p1)] / log[p1/(1 - p2)]

b0 = log[p2/q1]
/ log[p1/q2]

これこそが、ブックメーカーが最適なケリー配分をリスクにさらす場合の答えです。このとき1つのマーケットでは大きなリスクになります。この答えはいずれかのサイドのケリー配分が小さくなることと合致するでしょうか? このシンプルな式をExcelに入れて、フルケリーの小さく等しい配分の予想成長率(EG)を検証したら、ブックメーカーが本命または大穴のどちらで資金をリスクにさらすかどうかに関係なく、各サイドのEGがほぼ一致することを見つけました。つまり、ブックメーカーが個別のマーケットでリスクをさらす金額が最適な金額よりもはるかに少ない場合でも、いずれにしろ同じEGとなるので、マーケットのどちら側にリスクがあるかに無関心なのです。そして、数百(または数千)の様々な同時マーケットの小さなEGを組み合わせて、エッジとリスクの最適なバランスを作っているのです。

これで、検証可能な予測を行う式ができました。実際のデータによって裏付けられる場合、理論は十中八九正しいと言えます。私はデータの使い手ではありませんが、そういう人を数人知っています。その1人がJoseph Buchdahl氏で、サッカーの試合結果のデータを何年も積み重ね、「The Wisdom of the Crowd (群衆の叡智)」という論文でそれらのデータを使用してマージンフリーのオッズを見つける様々な方法を検証しました。

もう1人はMatt Buchalter氏で、Twitterでは@PlusEVAnalyticsで知られています。数年前にvigを取り除く様々な方法を調べ、プロビットスケールを使用する方法がデータと良く一致することを見つけました。私にはプロビットスケールが何なのかわかりませんが、彼は寛大にもそのための式を含むExcelスプレッドシートを投稿してくれているので、彼の手法とMEGが等しくなる私のTKO手法を比較しました。同じくBuchdahl氏が調べたオッズに比例するマージン対数関数オッズの比率手法とも比べました。様々な暗示的確率の数字をかみ砕き、(とても効率的なPinnacleマーケットで見かけるような)1.8%のトータルツーウェイマージンを想定し、各ランナーに追加される暗示的マージンの割合をグラフにしました。結果はこのようになりました。

inarticle-graph.jpg

等しいマージンを表す黒の線は、FLBがない場合にどうなるかを示しています。他とはかなり異なります。対数関数の曲線もやや異なりますが、少なくとも他のFLBベースの手法と同じ方向に傾斜しており、大穴の暗示的確率にマージンが追加されるほど、本命へのマージンは少なくなります。オッズに比例するマージンのBuchdahlの手法の結果はプロットしませんでした。この方法でマージンを適用すると暗示的確率によらず各ランナーのパーセンテージが一定になるため、各ランナーの暗示的マージンが0.9%で水平線をたどるだけだからです。確率が10-90%の間の部分については、この答えと私の答えの差はかなり些細なものであるため、余計な線で他の手法との小さな違いを分かりにくくしたくないと思いました。それらの違いは実際とても小さいものです。

こうしたツーウェイマーケットについては、オッズの比率プロビットスケール手法はほぼ正確にTKO手法をたどっています。これは、それらすべてがとても正確であるか、すべてがほぼ間違っていることを意味しています。実際に、プロビットスケール手法はzスコアに基づいているため、数学的にTKO手法と同一である可能性があることを示唆するBuchdahl氏の新しい著書「Monte Carlo or Bustでそのことが証明されています。

Buchdahl氏の論文では、データ分析によって対数関数モデルが彼の手法とかなり近いことが示されており、おおよそ同じ優れた結果が導かれています。では、なぜ私のグラフではこんなに違って見えるのでしょうか?対数関数は特にスリーウェイマーケット(Joseph氏が分析した英国サッカーの1X2マーケットなど)に適していますが、オッズの比率手法はツーウェイマーケットにより適しているからです。

TKO手法は、FLBに基づくマージン配分の3つの最良近似とほぼ一致しているので、ブックメーカーがどのように、なぜその方法をとっているかという両方の疑問の答えを見つけたことになると考えます。EVベースの視点ではなく、EGの視点(分散を考慮に入れる)からブックメーカーがベッターに対して有利であることに目を向けると、いわゆるFLBが全く「バイアス」でないことがわかります。ベッターがマーケットのどちらのサイドにベットしても、ブックメーカーはこのようにマージンを適用してベッターから等しく利益を得ているというわけです。

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