2016年10月、ピナクルは記事賭け方の考察: «»ベッティングの改善を図るを公開しました。賭ける対象よりも、賭ける金額のほうが実は重要であることを実証するためです。もちろん、期待値がプラスでなければ、どんな資金管理手法でも、負けを勝ちに変えることはできません。とは言え、一部の賭け方法は他よりも本質的にリスクが高く、そしてそれを見分けられるようになることは有益です。
2016年10月の記事では、オールイン法、定額法、マーチンゲール法、フィボナッチ法、比例法について、二者択一形式で模擬ベットを(2.0のオッズで)500回行いました。ベッターは手持ち資金1000ドルで開始し、各方式の初回ベット額を100ドルとしました(初回ベットが1000ドルになるオールイン法は除く)。これらは賭け方法に応じて変動し、10%の期待値を維持しています。すなわち、勝率55%ということです。
この記事では、同じシリーズのベットで同じ賭け方法を比較します。ただし今回は、モンテカルロ法でのシミュレーションを10000回繰り返し、ベッターに役に立つ実際のリスクの確率(破綻するリスクと、利益を得る可能性)を推定します。
5種類の賭け方法の真価を試す
以下の表は、二者択一形式の模擬ベット500回を1セットとして10000セット繰り返し、手持ち資金(残高)の平均値、中央値、最大値をまとめたものです。また、これらを基に、破綻する場合と利益を得る場合の推定確率をまとめています。500回のベットの途中で手持ち資金がなくなった場合は、その時点でそのセットは終了です。
二者択一形式のベットを500回実施した後の手持ち資金
二者択一形式のベットを500回実施した後の手持ち資金
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オールイン法
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マーチンゲール法
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フィボナッチ法
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定額法
|
比例法
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平均
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0
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8,167
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6,489
|
5,473
|
137,486
|
中央値
|
0
|
0
|
0
|
5,800
|
12,234
|
最大
|
0
|
32,400
|
19,500
|
14,000
|
37,459,336
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破綻(%)
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100%
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72%
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54%
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13%
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0%
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利益(%)
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0%
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28%
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46%
|
87%
|
87%
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予想どおり、オールイン法の賭けでは毎回損失が出ました。二者択一形式の賭けを連続500回行って勝つ確率(毎回55%の勝率)は1.518 x 10-130です。たとえ500回の賭けを毎秒実施できたとしても、宇宙の終焉が予想される1グーゴル(10の100乗)年を迎えるまでに勝ちのセットが発生するのに十分な時間があるとはいえません。幸運を祈るしかありません。10000回実施したところ、破綻するまでに最も連勝が続いた回数は17回でした。
定額法と比べた場合の比例法の明らかな強みは、比例法では理論上、絶対に破綻しないという点です。
もちろん、大半のベッターは、1回に手持ち資金をすべて投じるような愚かな賭けはしません。しかし、多くのベッターは、賭けを成功させるために賭け金を増やし、それまでの損失を取り戻そうとします。マーチンゲール法とフィボナッチ法は、累進型と呼ばれる賭け方法です。二者択一形式のベットの場合、マーチンゲール法では負ければ賭け金の額を前回の倍に増やし、勝てば初回の賭け金に戻します。
負けが数回続けば賭け金は恐ろしいほど膨れ上がり、手持ち資金がかなりのリスクにさらされることになります。マーチンゲール法ほど過激ではありませんが、フィボナッチ法では、負ければフィボナッチ数に従って賭け金を増やします。フィボナッチ数は、数列の前の2つの数字を足したものが、次の数字になります(1、1、2、3、5、8、13、21…)。勝てば賭け金が前の2つの数字に戻ります。したがって、勝てば必ず、過去2回分の損失を取り戻すことができます。
残念ながら、マーチンゲール法もフィボナッチ法も、ベッターにとって安全なベッティングとはいえません。マーチンゲール法に従った場合、4分の3近くのベッターが、ゲームを500回続けられなくなることが予想されます。フィボナッチ法でも、その確率は半分以上です。確かに、平均的な(予想される)払い戻し額は、毎回同じ金額(100ドル)を賭ける定額法に比べて多くなります。しかし、そのためにこのようなリスクを冒したいと思いますか?
上記のデータを見ると、最終的な手持ち資金がゼロに(中央値のように)なることがほとんどです。また、ここでは、損失を取り戻すために賭け金を累進的に増やす場合に、ブックメーカーの許容限度を超えた賭けを行うことになる可能性について考慮していません。
定額法の賭けと比例法の賭けのそれぞれのメリット
最良の戦略を2つ選ぶなら、定額法と比例法であると断言できます。比例法では、賭け金をそのときの手持ち資金の一定比率(ここでは10%)で賭けます。したがって、最初のベットで100ドル勝った場合、次の賭け金は1100ドルの10%、つまり110ドルになります。負けた場合には、次の賭け金は90ドルになります。などといった具合です。
このシナリオでは、定額法でも比例法でも、500回賭けて利益を得る可能性が非常に高くなっています(87%)。定額法と比べた場合の比例法の明らかな強みは、比例法の賭けは理論上、絶対に破綻しないという点です。ただし、実際には手持ち金が少なければ賭け金がごくわずかになる可能性があります。また、基本的に定額法よりも大きな金額を賭けることから、予想される最終的な手持ち資金はかなり多くなります。
ただし、大きな値が平均値に大きく影響するため、予想される手持ち資金の分布はかなり非対称的になります。平均値が10万ドルを大きく上回っていても(そして実際に、1回の実施で最終手持ち資金が3700万ドルを超えることもありました)、中央値の(つまり標準的な)手持ち資金は1万2千ドル程度です。実際、比例法では、正規分布で平均値と中央値が非常に近い(手持ち資金ゼロを差し引いた*)定額法とは対照的に、予想される手持ち資金の分布はほぼ対数正規分布になっています。


選択した賭け方法によって破綻する可能性
二者択一形式のベットでの期待値は10%ですが、長期的に見ると可能性は信じられないほど低くなります。このビジネスにおいて最も成功している部類のハンディキャッパーでも、このような利益率は提供していません。おそらく、それぞれの賭け戦略が、少しのアドバンテージに対してどのように機能するかを調査する必要があります。以下のグラフは、 6つのレベル(8%、6%、4%、2%、0%(差し引きゼロ)、-2%(ピナクルのマージンのおよその大きさ))の期待値に対する破綻の確率と利益を得る確率を示しています。


ここに表示されたデータはそれほど驚くべきものではありません。累進型の賭けは常にリスクが最も高くなりますが、定額法の賭けも、ブックメーカーに対するアドバンテージがなくなれば、累進型より少しましなだけです。あまりピンとこないかもしれませんが、二者択一形式のベットを500回実施した場合には、アドバンテージが小さいほど、定額法の賭けは比例法の賭けよりも勝算があるという結果です。なぜでしょうか?
その主な理由として、手持ち資金が失くなると、定額法よりも比例法の賭けの方が修復が難しくなることが挙げられます。本来これは、すべてを損失することはない戦略に従うためのトレードオフです。
長期的に見れば、比例法の賭けは定額法の賭けに比べて利益が大きく、理論的にも安全かもしれませんが、短期的、特にアドバンテージが小さいときには利益を得にくくなります。つまり、勝利すれば大きく勝てますが、負ければ修復までに時間がかかるということです。これは、2つの戦略の最終的な手持ち資金の中央値を比較することによって確認できます。
定額法対比例法 最終的な手持ち資金の中央値
期待値
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定額法の賭け
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比例法の賭け
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10%
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5,800
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12,234
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8%
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4,040
|
4,962
|
6%
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2,800
|
2,461
|
4%
|
1,800
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1,492
|
2%
|
1,200
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1,105
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賭け金額の変更が利益率に及ぼす影響
累進型の賭けは本来は非常にリスクが高い戦略です。定額法の賭けを好むベッターにとっては、13%の破綻リスクでさえ容認できないでしょう。賭け金額を減らした場合、各戦略のリスクはどのように変化するか次の表は、ベッターに10%のアドバンテージがある場合の初回の賭け金への追加(8%、6%、4%、2%)に関して、その破綻の確率と利益を示しています。

当然ですが、手持ち資金の量に応じて賭け金を減らせば、予想される最終的な手持ち資金の量も減りますが、破綻のリスクは低下し、利益を得る可能性が高まります。これは単純にリスクと報酬のトレードオフだといえます。より多くの利益を得たければ、より多くのリスクを負わなければ手に入れることができません。近道はないのです。それにもかかわらず、マーチンゲール法に従う勇敢(愚か)な人は、初回の賭け金をわずか20ドルにしても、500回のベットが終了する前にすべてを失う確率が50%近くあります。初回の賭け金を1ドルにしても、すべてを失う確率がまだ5%もあります。
自分に最適な賭け方法を見つける
異なる賭け方法を対象としたモンテカルロ解析で、以下の広い見解が得られています。
1) マーチンゲール法やフィボナッチ法などの累進型の賭けはリスクが高い。ブックメーカーに対して大きなアドバンテージがあったとしても、賭け金を劇的に減らさない限り、それまでの損失を取り戻そうとして破綻する可能性が非常に高い。
このような事情から、これまでの損失を取り戻そうとすることにはほとんど意味がないといえそうだ。ブックメーカーを打ち負かせるほど優秀なベッターであれば、そもそも損失を取り戻す必要などない。そこまで優秀でなければ、損失を取り戻そうとどんなに頑張っても、負けている流れを勝ちに変えることはできない。手持ち資金の額を長期的に増やすことはできるかもしれないが、それは「すべてなくなる」リスクを負っている。
2) アドバンテージが大きい、または賭け金の額が妥当である場合、定額法はベッターにとって最小限のリスクで長期的な利益率を確保する方法になるはずである。
3) 比例法の賭けは、賭けの必勝法のように思えるかもしれない。実際それは、破綻しないという点において特に大きな価値がある。ただし、連敗が続いた場合、定額法よりも修復に時間がかかる。連勝が続くのであれば比例法の賭けが向いていると思われる。ただし、短期間で利益を得ることを好み、エッジも大きいと確信しているのであれば、単純な定額法の賭けを選んだほうがよい。