ベッティング市場は非常に効率的で、バリューを見出すのが難しくなっています。この記事では、あるイベントのタイミングと構造が、ベッターにとって型破りなチャンスを生み出しているかどうかについて考察します。
バリューを見出すこと
ベッティング市場の効率性によって、従来の方法ではバリューを見出すのが非常に難しくなっています。しかし以前に指摘したように、ベッターが市場を打ち負かそうなどと思ってはいけないというわけではありません。
1回限りのイベントの値付けが概ね正確である一方、バリューが無いと思われる市場からなんらかのバリューを導き出すための道筋を見落としている場合には、そのイベントの構造を利用できることもあります。
その例としてまず考えられるのは、ベッターがアウトライト市場を利用してチャンスを生かせるスポーツイベントにおける、試合のスケジュール方法です。
タイミングを見計らう:その理論
では、理論的な例を見ていきましょう。アウトライトベットで、チームAのトーナメントでの合計得点が0のベットがあるとします。オッズは5.10です。
チームAの試合のスケジュールは次のようになっています。
試合1:チームA対チームB
試合2:チームA対チームC
試合3:チームA対チームD
ここで、チームBとチームCがこのトーナメントでの強豪チームで、チームDが最弱だとします。つまり、チームAは強豪2チームからは得点を挙げることが難しいものの、チームDからは得点する可能性がずっと高いということになります。トーナメント前には、個別の試合でこのチームに得点が入らないオッズが次のようになっていたとします。
チームBに対して得点1.2
チームCに対して得点1.7
チームDに対して得点2.5
よって、このチームに得点が入らないというアウトライトが示す可能性は正しいのですが、最初の2戦よりも最終戦で得点が入る可能性が高くなります。
しかし、これらは独立したイベントではありません。チームDとの試合で得点する可能性は、チームB、チームCとの試合での得点に応じて増える、または減ると考えていいのでしょうか?
そこで、各試合の開始直前のクロージングラインオッズは次のようになるでしょう。
対戦相手 |
オープニングオッズ |
クロージングラインオッズ |
チームB |
1.2 |
1.2 |
チームC |
1.7 |
1.65 |
チームD |
2.5 |
2.3 |
この場合、イベントでベッターが得る実際のオッズは5.1で、クロージングラインの合計は4.55です。ベッターは、単にチームDに対して得点を挙げることにクロージングラインオッズで賭けて、利点を確保することが可能です。
例:World CupグループG
これからお話しする例は、2018年のWorld CupグループGの試合で起こったことです。トーナメントでの弱小チームであったパナマは最初にベルギーと、次にイングランドと戦い、最も組みしやすい相手であったチュニジアとはグループステージの最終戦で当たりました。
パナマがトーナメントの全チームで最少得点となるというベットのオッズは9.00でした。考えられる実行可能な戦略としては、パナマが最強チームと対戦する最初の2試合が終わってから、トーナメントの他のチームがどれだけゴールを奪うかを確認した上で、チュニジア戦で得点を挙げるベッティングをしてヘッジングするというものでした。
実際には、パナマはイングランドから衝撃的な得点をあげ、試合ごとのベットで無得点に賭けていたベッターに損害を与えました。幸運なことに、パナマがチュニジアと対戦する前に他の全チームが2試合ずつ得点を挙げたため、一連のベットが次のようになりました。
トーナメントでパナマが最小得点になる:9.00
パナマがチュニジア戦で得点を挙げる:1.57
アウトライトにベッティングすると、ベッターは各ゲームに先立ってベッティングするよりも少しだけ柔軟に対応できたでしょう。
複雑さの増加
しかしながらこの例が示しているのは、こういった種類のベットがベッターのバリュー計算にある程度の複雑さをもたらしているということです。
ベッターは、パナマの得点が最も少なくなる可能性を知っておく必要があります。このことは、パナマのゴール数の可能性を知っておくだけではなく、この大会に参加している他の31チームについての知識も必要であることを意味します。これで手間が増えますが、チャンスも増えるのです。
この余分な手間によって、その他のバリューベットのチャンスも生まれます。イングランドとベルギーが最初の2試合で弱小チームと対戦したことで、それらのチームの選手はゴールデンブーツ賞に近づいたと言えるでしょうか?
これはトーナメントで最も実力差のあるような楽な試合に勝つことで、ベスト16の試合に先立って、得点することが難しいグループステージの最終戦でしっかり主力を休ませられる利点が得られるという考え方に基づいています。
これは十中八九、トーナメント前のオッズによる影響を受けていましたが、バリューを得るチャンスがあったとも言えます。
未開拓のエッジを探す
この記事の要点は、こういった利点がとにかく存在することを示唆しているのではなく、ベッターはベッティング市場でバリューを見出すために何ができるかに関して先入観を抱いてはいけないということです。
主要な市場が現状どおり効率化されている場合に、「トーナメントの構造から、他の人が見落としているチャンスが得られないか?」といった疑問によって、利点を見いだせる場合があります。ベッティング市場での不確定要素が多いほど、間違う可能性が増えます。
ベッターは、イベントの特定の参加者に注目し、バリューのないベットを見送ることができるという利点を持っています。よって、独創的な考え方を絶対にはねつけてはならないのです。