能力のパラドックス

能力のパラドックス
金融からスポーツまで、ベッティングには能力と運が混在しています。長期的な成功の秘訣は勝者を予想することではありません。バリューを特定して着実に利益を出すことです。高い的中率を断言しているベット予想屋がいますが、長期にわたって安定した成績を出すことは可能なのでしょうか。能力のパラドックスと呼ばれるものにその答えはあります。

ベットの結果の可変性、つまり利益の可変性とは、能力の分散と運の分散の組み合わせです。スポーツの結果というのは本質的に偶然性の影響を受けるものですが、結果の確率(いわゆるオッズ)をブックメーカーが公開するものより適切に判断すれば、プラスの期待値を得ることができます。 

オッズが意味するものとは

しかしブックメーカーのオッズには、マージンの影響を無視しても、結果の確率に関する市場の評価がかなり影響してきます。市場とはそれは、結果の確率に関してベッターが金額によって表した見解の集まりでしかありません。

言い換えると、予想競争に参加したプレイヤーの見解を加重平均して表したものが単純にベッティングオッズであるということです。この競争では相手よりも優れた予想能力が成功の鍵となります。優れた予想能力があれば、バリューを特定して長期間にわたって利益を生み出せる可能性があります。こう聞くと、わりと簡単なようです。ではなぜ、一貫してバリューを見つけることがこれほど難しいのでしょうか。能力のパラドックスと呼ばれるものにその答えはあります。 

結果の確率(オッズ)をブックメーカーが公開するものよりも、平均して適切に判断すれば、プラスの期待値(長期的な利益)を得ることができます。

野球から得られる教訓

メジャーリーグベースボールのBoston Red Soxに所属していたTed Williams選手は、1941年に打率0.406を記録しています。1870年代にプロ野球が始まって以来、一般的な打率が大きな変化もなく推移していることを考えると(およそ0.25~0.28)、これは並外れた成績であり、今だに破られていません。

ただし、トレーニング、健康状態、食事、そして全般的なプロ意識の向上を考慮すると、現在のリーグであればWilliamsがそのような打率を出すことはほぼ間違いなく不可能でしょう。それでは、現在何が起こっているのでしょうか。まず打率は、一方のピッチャーともう一方のバッターの間で相対的な能力を単に表したものです。

メジャーリーグベースボールはより専門化してきているため、バッターは個々にバッティングの技術を上げてきています。ただし同時に、ピッチャーのピッチング技術も向上しています。「The Success Equation」の著者Michael Mauboussinは、これを軍拡競争になぞらえています。絶対的な能力が一律に向上しても、相対的な能力は平均してほとんど変化していません。

次に、総合的な技能レベルが向上した一方で、上位と下位のバッター(ピッチャー)の成績の差は縮まってきています。これは、人間の能力には「限界」があることを考えれば説明がつきます。初期のプロ野球でも、「限界」に迫りつつあった選手はわずかにいましたが、大半の選手は遠く及びませんでした。時間と共に優れたバッター(ピッチャー)が徐々に能力の低いバッターに取って代わり、結果として上位と下位の能力の差が狭まりました。

能力が上がるほど運が重要に

結果で認められる分散は能力の分散に運の分散を加えたものですから、能力の分散における減少が(運の分散はそのまま)、標準偏差の測定によって定量化された打率で認められる分散にそのまま表れます。

能力の分散が運の分散を減少させるので、結果すなわち利益の算出では運がますます重要になります。

やはり米国プロ野球の最初の数年間(1870年代)は、打率の標準偏差は約0.05でした。つまり全打率のおよそ2/3が0.2~0.3の範囲にほぼ収まり、約95%が0.15~0.35の範囲内であったということです。

現在、標準偏差はかつてのおよそ半分です。その結果として、極端な異常値の発生は少なくなっています。19世紀には、打率0.40を出すバッターは1,000人に1人と考えられていましたが、今では100万人に1人程度です。

Mauboussinは、能力の分散が運の分散を減少させるため、結果の算出では運がますます重要になるとも述べています。「全選手の能力が向上したら、運が勝敗の決定に果たす役割はより重要になる。」

ベット予想屋の場合

野球と同じく、ベッティングはまさにバッカーとレイヤーの間の相対的な能力の対立です。金融の世界ではこれが買い手と売り手になります。一方が他方よりも予想能力(試合の結果や資産の本質的価値の予想)で優れている場合、運・不運が相殺され、長期的なプラスの期待値を確保できる可能性があります。

ただし能力のパラドックスによって、未来予想のより高度な方法を採用するプレイヤーが増えるにつれて、能力の差は縮まり運がベットの結果に与える影響は大きくなることが明らかになっています。

Mauboussinは組織化された職業投資家の実績に関して、「全員の能力レベルが似通っていればいるほど、資産運用機関に対する超過リターンの範囲が狭まると考えられる」と語っています。確かに、これはまさしく現在の状況です。

2007年から2014年にかけて、市場を出し抜こうと難題に挑戦する人がますます増え、「真実の壁」に向かって収束していくより正確な予想によってその実現はさらに難しくなりました。

1960~1997年の間、Morningstar投資信託の超過リターンにおける標準偏差は、約13%~8%の減少傾向でした。野球同様に強力なバッターは姿を消したのです。これは決して彼らのリターンを予想する能力が劣っていたわけではなく、ほぼ互角の相手と競い合ったからです。 

同じように、2001~2015年にかけてベット予想屋を検証すると、5年連続の合計利益における標準偏差が、2002~2007年の約2.5%から2009~2014年の1%まで減少していたことが認められました。

この期間は、オンラインスポーツベッティングが急成長を遂げているとも言えます。しかし市場を出し抜こうと難題に挑戦する人がますます増え、「真実の壁」に向かって収束していくより正確な予想によってその実現はさらに難しくなりました。

絶対的にプレイヤーの腕は上がっていますが、利益となるリターンを獲得することはより難しくなっています。市場効率が向上するにつれて、ベット予想屋の「打率0.400バッター」は姿を消していく可能性があります。 

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