割合賭けで得られるリターンを定量化する

割合賭けで得られるリターンを定量化する

この記事では、ベッターが資金管理手法として割合賭けを採用した場合に期待できるリターンの範囲の定量化をJoseph Buchdahが試みます。割合賭けの仕組みとは? 詳しくは続きをお読みください。

2019年2月に、ベッティングで得られるリターンの範囲をモデル化している私の記事がピナクルの「ベッティングリソース」で公開されました。その記事には、結果の期待値を中心として、幸運や不運によって起こり得る結果の分布を掲載しました。数学的に正規分布として定義される分布です。ベッターがこれをグラフ化しやすいように、私はシンプルな成績分布計算機を用意しました。

この分析では同額の賭け(均等賭け)だけを考慮していました。私はこの資金管理戦略を強く支持しているのですが、当然別の戦略を好む人もいます。最も一般的な戦略は、資金の現在高に基づいてある割合の金額を賭けるものです。

この方法は、ごく自然に割合賭けと呼ばれています。これは、私が以前にピナクルで公開した均等賭けとの比較で検討した戦略です。その最も単純な形としては、すべてのベットでオッズに関わりなく同じ割合をベットするものです。ケリー賭けなど、さらに高度な戦略では、割合の決定にオッズとベッターの期待値の両方を考慮します。

割合賭けの仕組みとは?

ベッターが100ユニットの資金から始めるとしましょう。そして、資金の1%をベットで賭けることにします。したがって1回目のベットは1ユニットです。2.00のオッズで勝ったとすると、資金は101になります。すると、次のベットの賭け金は1.01ユニットになります。これは101の1%です。1回目のベットで負けた場合は、資金は99ユニットになり、次のベットの賭け金は0.99ユニットになります。

ケリー賭けの場合、適用する割合を具体的には、期待値を(デシマル式オッズ - 1)で割った値とします。たとえば、オッズが3.00で期待値が10%(0.1)の場合のベットでの賭け金の割合は、0.1 / 3 – 1 = 5%になります。ケリー賭けは割合の数字が非常に大きくなることがあるため、リスクが大きすぎて現実的な資金管理戦略とは見なせないという意見もあります。このリスクを緩和するには、部分ケリーがしばしば考慮されます。

割合賭けで得られるリターンの非対称な分布

下のグラフ(ピナクルにおける私の以前の記事から再掲)は、あるベッティング条件においてモンテカルロシミュレーションで生成した均等賭けと割合賭けで得られるリターンの分布を比較したものです。均等賭けに比べて割合賭けは、運に恵まれれば資金が非常に大きくなる可能性があります。

この分布は、正の方向に歪んでいると言われるものです。この条件では、7,000をかなり上回る利益が出る場合もありましたが、分かりやすさを考慮してそれらは省略しました。

qps1.png

リターンを数学的に定量化する

実際、オッズとすべてのベットでの賭け金の割合が同一という最も単純な条件については、モンテカルロシミュレーションに頼る必要もありません。分布を数学的に導き出すことができます。

次の例を考えてみてください。ベッターが1回目のベットを五分五分として10%の賭け金で行います。賭けに勝てば、資金はもとの110%(1.1倍)になります。負ければ、資金はもとの90%(0.9倍)になります。以降の各ベットでも同じことが言えます。したがって、10回ベットを行って6回勝つ場合の資金の増加率は、次のように簡単に計算できます。

資金の増加率 = 1.16 x 0.94 = 1.162 (116.2%)

勝ち負けの発生する順序は関係ありません。開始後6回連続で勝ち、4回連続の負けで終わることもありえます。また、4回連続で勝って6回連続で負けることもありえます。または、勝ち負けのこのような組み合わせの並びの総数210のうちのどのような場合もありえます。しかしどのような場合でも、最終的には116.2%になります。

つまり、n回のベットをS%の賭け金で行い、w回勝つ場合は、次のようになります。

資金の増加率 = (1 + S)w(1 – S)n-w

上記のモンテカルロシミュレーションにおける資金の増加率の最大値は948.8でした。実際の勝ち負けの回数の記録は残していませんが、1,000回のベットを2.0のオッズに対して賭け金の割合5%で行ったことは分かっているので、実際の勝ちの回数は上の公式を使って581回と求められます。

さらに、ベットの期待値(EV)が分かっていれば、資金増加率の期待値は次のように計算できます。

期待資金増加率 = {(EV x S) +1}n

たとえば、このベッターのEVが20%(0.2)であれば、期待(平均)資金増加率は{(0.2*0.1)+1}10 = 1.0210 = 1.219(121.9%)になります。10回中6回勝ちの場合より資金増加率が高いことにお気付きかもしれませんが、これはEVが20%であることによるものです。

これは、勝ちの回数が多い場合の資金増加率は、勝ちの回数が少ない場合の資金増加率よりも平均に対する寄与が不均衡に大きいためです。得られるリターンの分布は正の方向に歪んでいることを思い出してください。つまり、この例における最も典型的な(メジアン)資金増加率は116.2%、期待値(平均値)は121.9%になります。

もちろん、これはEVがすべてのベットについて同じであるという極端な単純化を前提としていますが、これは数学的に定義するために必要なことです。

(EV x S) + 1を期待資金増加率係数Fとして書き直すと、

期待資金増加率 = Fn

となり、したがって

n = LogF(期待資金増加率)

となります。Fは対数の底です。

賭け金の割合とEVがすべてのベットについて同じである場合、期待資金増加率の対数はベット回数に比例します。同様に、実際の資金増加率の対数も勝ちの回数に比例します。これは、今回のべッターの例でグラフに表れています。2番目のグラフは最初のものと同じですが、y軸が対数目盛になっています。

勝ちが5回と負けが5回の場合、均等掛けのベッターならば毎回同額を賭けて損得なしになるところですが、割合賭けではわずかな損失が出ていることにお気付きかもしれません(資金増加率 = 0.951)。前回の損失を回収するには賭け金の割合を大きくする必要があり、割合が同じままでは負けの後に勝っても負けた損失分を完全には取り戻せません。同様に、1回の勝ちの後に1回負けると最初のベットでの得た額より大きな損失を出すことになります。10回以上(あるいは何回でも)ベットする場合にも同じことが言えます。勝ち1回と負け1回の場合の資金増加率が0.99 (1.1 x 0.9)ならば、勝ち5回と負け5回の場合は0.995 = 0.951です。

割合賭けによるリターンの非対称な分布は、対数正規です。

一連のベットにおける勝ちの回数が資金増加率の対数に比例するならば、得られる資金増加率は対数正規分布になるはずです。

対数正規分布は、データの対数が正規分布(お馴染みのベル型曲線)する分布です。下のグラフに上で言及したのと同じモンテカルロシミュレーションで観察した資金増加率10,000個の自然対数(Ln)の度数分布をプロットしました。

資金増加率の数字を対数的に変換するのではなく、対数目盛を使ってもとのままの数字を示すことができます。結果は視覚的に等価です。

このモンテカルロ標本の期待(平均)資金増加率は12.2でした。これは、最初の原則から上記の式を使って計算した数字と比べてどうでしょうか。1,000回のベットの期待値を5%(0.05)、賭け金の大きさを5%(0.05)とすると、答えは1.00251000 = 12.1となり、よく一致しています。予想されるように、資金増加率のメジアン(分布の中央)は3.49とかなり低くなり、資金増加率の21.7%だけ期待値の12.2よりも高くなりました。数個の非常に大きな資金額が平均をずらすことに注意してください。

資金増加率の確率を推定する

特定の資金増加率を達成する確率を計算する方法はあるでしょうか。上のグラフを見て推定することはできますが、対数目盛であり、簡単な作業ではありません。その代わりに、最終的な資金額があるしきい値を超えた回数を数える方法があります。たとえば、このモンテカルロ標本では最終的に資金が初期額(資金増加率 = 1)より増えたのは全体の78.5%で、2倍以上になったのは63.5%です。

しかし、Excelを使うとさらに簡単になります。シミュレーション結果のすべての資金増加率の自然対数を(=Ln関数を使って)計算するならば、次の関数を使用できます。

1 – LOGNORM.DIST(x,mean,SD,true)

ここで、xは資金増加率のしきい値として選択した値です(たとえば、倍になる場合は2)。meanおよびSDはそれぞれ自然対数値の平均と標準偏差で、trueは累積確率を求めることを意味します。この公式を使うと、最終的な資金が初期額より大きくなる(x = 1)確率は78.2%、資金が2倍を超える(x = 2)確率は63.6%、さらに期待値を超える(x = 12.2)確率は21.7%と推定され、回数を数える方法とほぼ同じ数字になりました。

割合賭け用資金計算機

すべてのベットのオッズと賭け金の割合が同じ場合について、上記の資金増加率の式を使い、勝ち負けの内訳ごとに起こりうる資金増加率の分布グラフを生成する計算機を作成できます。下のグラフは、筆者のウェブサイト用に作成したExcel計算機による、各種条件のベッティングに対する出力です。

1番目は、3種類のオッズで1,000回のベットにフルケリー(full Kelly)法を適用した場合の成績の比較です。ベットのEVを5%とし、オッズ1.5、2.0、5.0に対する賭け金の割合は、それぞれ10%、5%、1.25%です。これら3つのオッズに対する期待資金増加率は、147、12.1、1.87で、資金増加率のメジアンは12.7、3.49、1.36です。モデルに対する入力が同じ場合、緑の分布は上のモンテカルロ分布によく一致しています。

次のグラフは、資金増加率の分布がEVによって変わる様子を示しています。3つの場合、つまり、1%、3%、5%について、すべてオッズが2.0で1,000回のベットにフルケリー(それぞれ、1%、3%、5%)による賭け金を適用したものです。それぞれの場合に対する期待資金増加率および資金増加率のメジアンは、1.11、2.46、12.1および1.05、1.57、3.49でした。

3番目のグラフは、ケリー分数を小さくした場合に、資金増加率の分布が変化する様子を示しています。オッズが2.0でEVが5%の場合、フルケリー、1/2ケリー、1/4ケリーの賭け金はそれぞれ5%、2.5%、1.25%です。これらに対する期待資金増加率および資金増加率のメジアンは、12.1、3.49、1.87および3.49、2.55、1.73でした。

既に述べたように、部分ケリーはリスクを抑えるとよく言われます。上の分布はその理由を示しています。悪い成績の確率が大幅に小さくなっている一方、(青および緑の分布の、資金増加率 = 1の左側の面積を比較)、資金のメジアンは少しだけ小さくなっています(3.49に比べて2.55)。

たしかにフルケリーの場合、期待(平均)資金増加率が大幅に大きいですが、ほとんどの場合そのようにはなりません。この状況で起きることを予測するには、メジアの方が良い尺度であると言ってほぼ間違いありません。フルケリーの場合、それでも損失を出す可能性が21.5% あります。ハーフケリーの場合、それが11.8%に下がります。

期待資金増加率と資金増加率のメジアン

既述の計算機を使うと、ベット回数に応じて期待資金増加率が変化するかを確認できます。上記の式から、これが対数的になることは既にわかっています。資金増加率のメジアンも対数的に変化します。

最後に、資金増加率のメジアンがEVに応じてどう変化するかを見てみましょう。今回もオッズが2.0の場合ですが、他のオッズでも同様なグラフを生成できます。

オッズが変わる場合、賭け金が変わる場合

これまでに挙げた式も計算機も、すべてのベットを同じオッズと賭け金の割合で行うということに基づいています。両方が変化する現実的な状況において、これらはどの程度、信頼できるのでしょうか。モンテカルロシミュレーションに対するテストを行うと、オッズをかなり変化させても、この計算機の出力の信頼性にそれほど大きく影響しないことがわかります。ただし、それは賭け金の割合を常に同じにした場合だけです。もちろん、ケリー賭けには当てはまりません。

この計算機は、賭け金の割合がたとえばケリー戦略にしたがって変化しても、オッズがそれほど大きく変化しない場合には信頼できます。典型的な例は、ほとんどのオッズが1.95付近で偏差がごく小さい、アジアハンディキャップまたは得点スプレッドの場合です。

こうした種類のベットのEVも変化する場合は信頼性が下がりますが、ベットのオッズもEVもあまり大きく変化しなければ、やはりこの計算機は成績の期待値を推定する合理的な手段になります。

均等賭けによる期待値を定義するのは比較的、単純明快であることがわかっています。しかしこの記事では、割合賭けの場合も同様に行えることを示しました。均等賭けの成績は正規分布にしたがうのに対して、割合賭けでは対数正規分布にしたがいます。この知識を利用して、割合賭けを採用したベッターが期待値の範囲を求めるのに役立つシンプルな計算機を作成することができました。

ベッティングリソース - あなたのベッティングをパワーアップ

オンライン最高クラスの充実度を誇るピナクルのベッティングリソースでは、専門家によるベッティングのアドバイスをご覧いただけます。ベッティング経験の長さを問わず、ベッターの皆様がパワーアップできる知識をお伝えすることが目的です。