ベットする:分散のコスト

ベットの価値をどのように判断するか?

分散には真のコストがあることを理解する

分散のリスクで金銭的なコストがかかるか?

ベットする:分散のコスト

ベットした後に、そのベットの価値を判断するにはどうすればよいでしょうか? 分散のコストを理解すれば、長期的に利益を出せるベッターになる可能性が高まります。詳しくは、この記事をお読みください。

私は最近、真剣なベッターが計算する際に役立つ数字として「スワップ等価」を定義しました。その目的は、リスクの高いポジションの期待値(EV)と、それに対応する確実性等価(CE)の関係を計算することです。ポジションの期待値にスワップ等価を掛けると、確実性等価(すなわち、オープンベットではなく、いくらあるのかあまり気にならないポケットの中の現金の額)が得られます。ところが、その重要な変換に加え、これは分散のコストを計算することにも使用できるのです。

多くの人々にとって、分散という考え方は曖昧でわかりにくいものですが、賢明なスポーツベッターにとっては、長い期間を経て夢のような大金を入手する過程で避けられない利益のアップダウンを示すものです。分散は、理論的な投資利益率(ROI)を実現するために耐えるべき単なる頭痛の種ではなく、実際にコストを持っているのです。どうしてそうなるのでしょうか? なぜなら、もしコストを持っていなければ、既存のあらゆるベットに対する確実性等価は現時点での期待値と同じになるからです。そして、私はこれまで執筆したいくつかの記事で、それらが同じでないことを説明しています。

実際の分散のコスト(CoV)は期待値と確実性等価の差であると定義できます。それが一般的に各ベットに対する資金のわずか数パーセントであったとしても、長期的に見れば大きな利益となります。ここで、等式を使用してスワップ等価を表してみましょう。以下の等式は、いずれも真であると言えます。

CE = s * EV
CoV = EV - CE

これらを組み合わせると、真の分散のコストは期待値 × (1 – スワップ等価)となります。

CoV = EV - CE = EV - s * EV
CoV = EV * (1-s)

たとえば、今日行われるDiamondbacks対RockiesのMLBの試合に関するラインがスポーツブックXYZに載っており、D’backs +130/Rockies -150 (またはデシマルオッズでD’backs 2.30/Rockies 1.60)となっていたとします。あなたはPinnacleのラインを見て、Rockiesの勝率がちょうど60%であると推定します。理論上は、スポーツブックXYZでRockiesにベットして、正味の期待値をゼロにできます(すなわち、ベットの期待値がベットする金額と同じになります)。実際、このように中立的な期待値のベットを何度も繰り返すと最終的に安定するため、ポケットにある金額を維持するのと同等以上の結果になると思うかもしれません。

しかし、これらの数字で全体像を把握できるわけではありません。ベッティングのキャンバスの一方向(価値の側面)で起こっていることがわかるだけなのです。結果に影響を及ぼすその他の側面があります。それがリスクです。期待値にかかわらず、Rockiesにベットする場合はお金をリスクにさらし、それを取り戻すためにある程度の分散を受けることとなります。分散によってどのようなコストがかかるでしょうか? 考えてみましょう。

$1,000の資金があるとします。期待値は失われないため、Rockiesに$50をベットすることに決めました。あなたは60%の確率で勝ち(リターンは$83.33)、40%の確率で負けます(リターンはゼロ)。試合後のあなたの資金の期待値は、次のようになります。

0.6 * $83.33 + 0.4 * $0 + $950 = $50 + $950 = $1000

しかし、ベットを行った時点で、チケット(賭け)のスワップ等価はどうなるでしょうか? それは次のように計算できます。

s = ((1 + w) ^ p - 1) / pw
s = ((1 + 0.088) ^ 0.6 - 1) / (0.6 * 0.088)
s = (1.052 - 1) / 0.053
s = 0.985、すなわち98.5%

ここで、

w = ベットのペイアウト(総支払額) (資金のパーセンテージとして)

p = ベットに勝つ可能性(この例では60%)

ベットした後に残る資金は$950となるため、ペイアウト(総支払額)wは$83.33/$950 = 0.088になります。そのため、チケット(賭け)の期待値は$50でも、確実性等価は($50 * 98.5%)、すなわち$49.25となります。これで、あなたが負う分散のコストを次のように示すことができます。

CoV = EV * (1 - s)
CoV = $50 * (1 - 0.985)
CoV = $50 * 0.015
CoV = $0.75

資金の滑りやすい坂道

これはささいな額に思われますが、このベットを何度も繰り返すとしたら、毎回の小さなコストが理論的に重なり、おそらくいつか破産するでしょう。実際、このベットを10,000回行ったシミュレーションでは、資金が81.6%の確率で破産しました(一般的な5種類のシミュレーション結果を以下に示します)。

In-Article-The-Cost-of-Variance-.png

より直感的に考えるために、勝った場合と負けた場合に資金がどうなるかを計算してみます。勝った場合は資金が$1033になるため、次回$50をベットすると、資金の4.8%ということになります。一方、負けた場合は資金が$950になり、次回$50をベットすると、資金の5.3%ということになります。そのため、勝った場合は次回ベットする資金の割合が小さくなり、負けた場合は大きな割合になります。その小さな差は、下降線をたどっている時には雪だるま式に膨れ上がり、最終的に非常に大きな割合となります。これは、富を築くための方程式でも、元を取るための方程式でもありません。

資金の100%をベットすることがないため、破産することも絶対にないはずです。確かにこれは優れた理論です。しかし、完璧と言えるでしょうか?

比例的に賭けることで、この問題を解決できると思うかもしれません。毎回$50をベットするのではなく、現在の資金の5%をベットすれば、勝った時にはより多く、負けた時にはより少なくベットでき、万事安定しそうです。さらに、資金の100%をベットすることがないため、破産することも絶対にないはずです。確かにこれは優れた理論です。しかし、完璧と言えるでしょうか? まず、「破産」することについて考えてみましょう。比例的に賭けることで、資金全体を失うことが技術的にできなくなるというのは本当ですが、残り$10まで減ってしまった場合にどう感じるでしょう? おそらく、破産した場合に近い感覚ではないでしょうか。そこで、別のシミュレーションを行います。上記と同じ条件で資金の5%をベットしますが、資金が$10を下回ったら破産したと考えます。このシミュレーションの結果はどうなるでしょうか?

さらに酷いものとなります。なぜなら、仮に最初は幸運に恵まれたとしても(おそらく10,000回のベットで破産しない唯一の方法は運に恵まれることですが)、資金が上昇傾向になるとベッティングの金額が増えるため、その後の下り坂は急傾斜になるのです。このように、一般的には以下のチャートに示すような結果が見られ(わかりやすくするため、Y軸を対数目盛で示しています)、88%以上の確率で破産します。

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これは、それほど驚くことでもありません。ベットの割合がそれほど大きく、エッジがないとすると、そのベットを1回行う際の期待増加率(EG)は-0.083%になります。それほど大きな割合とは思えませんが、ベットを5,600回行うと、$1,000の資金が少しずつ減少して平均で$10以下まで下がります。同じオッズと3.3%のエッジで期待される投資利益率(ROI)を計算してみると、Rockiesに対するベッティングのケリー分数が5%であり、期待増加率は+0.083%になることがわかります。この値は、前述の例で得られたマイナスの期待増加率と同じ大きさでプラスになっています。つまり、3.3%のエッジでベットすれば良いため、中立的な期待値のベットを行うのは残念なことなのです。

これは、中立的な期待値のラインでベッティングすることが最悪のミスであると言っているわけでも、マージンが4%以上の市場でランダムにベッティングするほど悪いことだと言っているわけでもありません。しかし、資金が無限でない限り、結果が安定して計算上の期待値と等しくなることを当てにするべきではありません。理論的な報酬メリットと同程度のリスクがあることにとにかく目を向けるべきです。

もし、あなたが平均的なベッターではなくジェフ・ベゾスであり、$1,000億の資金を持っていたならば、チケット(賭け)のスワップ等価は基本的に100%となるため、ギャンブルに対する経済的コストはゼロになります。その場合のスワップ等価と分散のコストは、以下のような式で表されます。

s = ((1 + w) ^ p - 1) / pw
s = ((1 + 0.00000000083) ^ 0.6 - 1) / (0.6 * 0.00000000083)
s ≅ (1.0000000005 - 1) / 0.0000000005
s = 1、すなわち100%
CoV = EV * (1 - s)
CoV = 50 * (1 - 1)
CoV = $0

結論

分散には真のコストがあることを理解すれば、単に期待値がプラスのベットを見つけることだけに集中したり、マイナスや中立的な期待値を無視したりすべきではない理由を簡単に理解できます。株式取引を行う際の手数料のように、分散のリスクには費用がかかります。つまり、リスクを減らせば真の利益を得られます。最初はベッティングの額を少なくすることで辻褄が合うこともあります。しかし、ベットを正しく(最適なサイズ以下で)行ったとしても、ベットの期待値が変化して確実性等価を大きく超える状況になることはよくあるのです。

そのような状況では、リスクをヘッジする(Pinnacleのようにマージンの低いブックメーカーで対極的なベッティングを行う、または取引所でポジションの一部または全部の中からトレードを行う)行為が、予防手段として機能します。そして、その手段のコストが分散のコストよりも少ないなら、その方法を採用すべきです。そうすることで利益を増やせます。

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この記事は、Dan Abramsによって執筆されました。

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