外れ値の問題

論理上における外れ値

Jeremy Linとコソボナショナルチーム

持っているもので対応

外れ値の問題

見落とされた外れ値に価値を見出すことは、実行可能なベッティング戦略でしょうか?そのような外れ値は、どうしたら見つけることができるでしょうか?この記事では、ベッティング市場で見過ごされたチームを見出すことでわかった機会と困難について解説します。

論理上における外れ値

以前、ベッティングにおける情報の重要性(Importance of information in betting)について説明しました。価格は市場で入手可能な情報の総和によって作られます。では、個人のベッターはどうしたら優位にベットできるでしょうか?

見落とされた外れ値を発見することは、意欲的なベッターにとって直感的なもので、理論的に理にかなっています。ブックメーカーは膨大な範囲のスポーツとイベントをカバーして手を広げ過ぎているのに対して、ベッターは1つに注力することができます。

一般的に市場は効率的ですが、楽観的なベッターは1つの機会(外れ値)を見つけさえすればと期待し、もしブックメーカーがある試合の一側面を見落とせば、外れ値が存在することになります。

でもこのことは、非常に効率的であることが証明されている市場で、どれだけ現実的でしょうか?

外れ値の事例:賢い人も物事を見落とす

非常に賢明な人が、一見するととても賢いとは言えないことをしている、ということがよくあります。後から考えれば明白なことというのは、多くの場合、その市場の大多数によって見落とされたことです。見落とさないようにインセンティブが与えられていても、見落としてしまうのです。

有名なところでは、元NBAプレイヤーのJeremy Linが、その「一見賢そうな多数の人があまり賢くないことをする」ことによって犠牲となった可能性があると言えるでしょう。

Jeremy Linは、NBAクラスの才能を備えていたにもかかわらず、どういうわけかディビジョン1のバスケットボール奨学金のオファーを受けたことがありません。そのため、ハーバード大学へスポーツ奨学金なしで入学し、結局NBAドラフトで指名されませんでした。このことは、統計上、彼が高い価値のある候補者であることが指摘されていたにもかかわらず起きています。

Michael Lewis氏の書籍「The Undoing Project」の中で、Houston RocketsのGMであるDaryl Morey氏は、RocketsのプレイヤーモデルでのLinの高スコアから1巡目指名の可能性があったにもかかわらず、Linをドラフト指名しないことを選択した理由について話しています。その理由は、彼が「運動神経に劣る」と見なされたためです。そしてこのことが、賢い人が賢くないことをする結果となったのです。

「Houston Rocketsは、Jeremy Linをドラフトで獲得しなかった1年後、プレイヤーの最初の2歩の速度を計測し始めました。Jeremy Linの最初の速度は、測定した他のどのプレイヤーよりも速かったのです。彼には瞬発性があり、ほとんどのNBAプレイヤーよりはるかに素早く方向転換できたのです。」

Linは、信じられないほど運動神経の発達したスポーツ選手だったのです。このことは、彼の外見とNBAまでの異例な経歴による先入観から、プレイヤー獲得に最良の決断をするようインセンティブを与えられた知性ある人々にさえ気づかれなかったのです。Linの能力を証明するデータが目の前にあったというのに。

あるイベントが発生する可能性というのは、その市場で入手できる情報(他よりも価値があるとされる一部の情報源を含む)の総和によって決まります。しかし、スポーツのトップレベルで最近までこのような非効率な見落としが存在していたということは、ベッティングの世界にも存在している可能性があるのではないでしょうか?

外れ値を見つける:市場はコソボを見落としたのか?

コソボは、2016年5月にFIFAメンバーとなり、ナショナルチームが正式大会への出場を認められました。コソボ初の正式大会の試合では、FIFAによって世界最下位チームの1つとランク付けされていたチームに対して厳しい結果が予想されました。コソボは、正式大会での初戦となるフィンランド戦で意外にもドローとなりますが、その後クロアチア戦での惨敗を含む9連敗を喫してしまいます。

コソボの記録と世界ランクを一目見れば、多くの人がヨーロッパ最下位チームの1つと見なすでしょう。

しかしながら、「一目見る」だけでは重要な情報を見逃す可能性があります。新しいコソボチームは、ヨーロッパで最も若いチームであり、まだ公式戦をホームでプレイするというアドバンテージがなかったことから、マルタやアンドラなどと同じランクを付けることは明らかに不公平でした。

チームの素質や才能を見れば、差し出された単純な統計よりも良いパフォーマンスが生まれる可能性を十分に見込むことがきたのです。このことは、特にUEFA Nations Leagueグループステージでの対戦相手が決まったときに明らかになりました。

チーム

チームの移籍市場評価(単位:100万)

アゼルバイジャン

9

フェロー諸島

2.48

マルタ

1.73

コソボ

31

コソボが持つ、他のチームと比較にならないほど著しい市場価値の優位性にもかかわらず、コソボは、グループ1位と予想されるアゼルバイジャンに次ぐ順位として、2.75という数値が付けられました。

この数値は、グループ初戦の対戦オッズに反映されています。コソボ対フェロー諸島(ホーム)(Pinnacleのオッズ):

コソボがフェロー諸島戦で勝利するオッズ1.61(ホーム)

アゼルバイジャンがフェロー諸島戦で勝利するオッズ vs. 1.53(ホーム)

市場価値だけで見ると、コソボはハンガリーチームに非常に似ていました。ハンガリーはワールドカップ予選でフェロー諸島とホームで対戦しています。この対戦では、コソボより強くないチーム力という理論に反して、ハンガリーには1.33と付けられ、勝利すると見られました。

このケースで、コソボはJeremy Linのような外れ値であった可能性があります。それ以上の調査は行われず、うわべだけで弱いチームとしてランク付けされたのです。これはちょうど、Linを一目見ただけのスカウト達が、彼の身体能力について間違った印象を持ったのと同じです。

コソボと、コソボと同等または下位レベルのチームとの値の差は、コソボチームの強さについて市場が過小評価しているためでしょうか?それとも、単純に市場価格を構築するコソボの経験が相対的に少なかったからでしょうか?

外れ値についての事実:コソボの潜在的な価値を判断するのは、なぜ不可能なのか

コソボが見落とされて外れ値となった事例は、実は道理にかなっていてやむを得ないところがあります。実際の能力レベルより過小評価された新しいチームというと、高い価値が提案されそうです。

しかし、ここで重要な問題は、そこに価値が存在していたかどうか判断すること、そして価値があったとしてもその程度を判断することが、不可能であるということです。たとえ短期間で好成績を収めたとしても、同様のシナリオを何千回と再現して、その価値を判断できる統計的に意味のある見解を得ることが必要なのです。

同様に、Jeremy Linは大学レベルで見落とされたと言うのは非常に簡単ですが、Linの成功は、彼のように高いレベルの有望な人物が他にも(例えば現在オフィスなどに)いると言うには十分な例とは言えません。

実際、もしLinが大学時代に大きな怪我をしていたり、「リンサニティー」とまで言われるほどの活躍をする前にNBAを退いていたら、彼はまったく話題に上らなかったでしょう。コソボも、Linと同じく、単に生存者バイアスの典型的な例なのかもしれません。

ここで、選択バイアスを避けることは不可能です。私たちは成功した外れ値については覚えていますが、負けを喫したコソボや、成功を収められなかったLinについては忘れてしまいます。

完全なあて推量:持っているもので対応                                                                             

こうして、外れ値の価値を評価することの困難を認識しましたが、ベッターが外れ値を完全に無視することは勧められないと感じます。

Linのケースで言うと、結果としてもたらされたデータから、彼が確かに見落とされたプレイヤーだったことがわかります。これは、Rocketsがプレイヤーをスカウトする際のアプローチでLinを見落としたという事実によって証明されたため、すぐにリーグ内で対応策が導入されました。

各NBAチームは、Linのように過小評価されたプレイヤーが見落とされていなかったか、競争市場におけるプレイヤーの価値判断を再評価することを強いられました。そしてRocketsは実際、優位性を持つプレイヤーを見つけたのです。

ベッティング市場がコソボのようなチームを見過ごすかもしれないという可能性の存在について判断することは、コソボチームの好成績にもかかわらず、困難を極めます。

しかしながら、ベッターがコソボのようなチームに対してどのような優位性を期待できるか数値化することがほぼ不可能だとしても、そのような優位性が存在しないということにはなりません。

ただし、どのような優位性を持っているか解明することが困難になるため、こういったベットを賭けの戦略に当てはめるのは非常に難しくなります。

さらに、リターンのモデル化が困難となるため、コソボに類似した外れ値のイベントやチーム(例えばMayweather対McGregorの一戦)を見つけることは、実行可能ですが、数量化がかなり困難でイレギュラーなベッティング戦略となるでしょう。それは、概して効率的な市場であったとしてもです。

そして残念ながら、スポーツのベッティングでは、もしそのような優位性が存在しても、すぐに消えてしまいます。Morey氏の言う「すべてのチームが市場原理をいったん知ってしまえば、優位性はなくなる」です。

もしベッターが、有利に働く可能性のある外れ値を見つけたら、それが存在している間に利用するのが賢明です。

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