前回の記事で、 Mark Taylorは、「運」がベットに与える影響と、利益が大きいほどそのベッティングスキルが優れているといえるかどうかについて説明しました。Markはコイン投げを例にとり、二項分布を用いて、10回連続で賭けた場合に利益が出る確率を計算しました。
この二項分布は、得点スプレッドなどフィフティーフィフティーのプロポジションや、各チームのオッズかイーブンマネーに近いか、ベットマージンの適用後に少し低くなるアジアンハンディキャップ市場に大変適しています。しかし、多くの場合、ベッターはあらゆる種類の賭け金で、あらゆる種類の価格に賭けるものです。サッカーの1X2市場やテニスのマッチベッティングなどがその例です。
このような場合、t分布や「スチューデントのt検定」を使用して統計的有意性を確認することができます。本記事では、t分布を使用してベット予想屋のパフォーマンスを評価する方法について説明します。
予想屋の実績の長さ
t分布は釣鐘型の正規分布とよく似ており、賭け数がおよそ30を超えれば正規分布とほぼ一致します。t検定を用いて、一連の賭けによって利益が発生する可能性を調べます。
10.00以上のオッズで100回ベットして120%のリターンを得るのは、ほとんど運によるものだといえます。勝ち目の高いオッズで同じリターンを得た場合、それは技術がある証拠です。
利益を得られる可能性が低いほど、ベッターの技術など何か他の要素が、得られた利益の要因になります。t検定では、ベッターが観測したリターンを、彼らがベットする市場により設定された理論的な期待値(確立のみを想定)と単純に比較します。
通常これは、ベッターが手間をかけ、オッズ比較ツールを使用して最高価格を見つけた場合でも、ブックメーカーのマージンと等しい損失か差し引きゼロになります。結果として得られたtスコアを見て、この差が統計的に有意であるかどうかを判断します。
利益率が大きいほどtスコアは高くなります。また、ベット実績が統計的に有意であるほど、技術がその役割を果たしているといえます。これらのことは直感的に理解できます。tスコアは、期待値を上回るベッターの超過平均リターンに直接比例します。
同様に、ベット実績が長いほど、偶然以外の何かが働いている可能性が高いということです。例えば、120%の投資利益率を獲得した2人のベッターを見てみましょう。1人は10回賭け、もう1人は1000回賭けてその利益を得ています。技術が高いベッターはどちらでしょうか?
疑問に思われる場合は、もう一度コイン投げについて考えてみましょう。コインを10回投げて6回以上表が出る確率が、コインを1000回投げて600回以上表が出る確率よりもはるかに高いことは明らかです。600回以上表が出れば、コインが操作されているのではないかと疑いたくなるでしょう。
同様に、私たちは、長期的に利益率の実績を挙げているベッターを、技術のあるベッターだとみなすことができます。実際に、tスコアは賭けた数の平方根に比例します。
ロングオッズとショートオッズ
直感的に明らかとは言い難いのが、ベットオッズの影響です。実際、1.25程度のベットオッズで120%の投資利益率を獲得するのは、5.00程度のベットオッズで同等の投資利益率を獲得するよりも、はるかに優れた技術の指標になります。低い確率の結果(ロングオッズ)への賭けはもともとリスクが高い(同等の賭け金を想定)といえます。確率変数に左右されやすいからです。
別の言い方をすれば、リターンは変化しやすいものです。5.00のオッズで勝利した19から21人の勝者は、それぞれ95%から105%のリターンを得ることになります。一方、1.25のオッズで勝利した79から81人の勝者は、98.75%から101.25%のリターンを得ることになります。ロングオッズに賭けることは、より多くの報酬を得るためにより大きなリスクを取ることを意味します。
ベット実績の損益の標準偏差を用いて、ベットオッズの影響を理解することができます。均等な賭けでは、標準偏差を次の式によって見積もることができます。
oをベット実績の平均オッズ、rをベッターの実際のリターンとする場合。5.00のオッズで賭けた場合の損益の標準偏差は、1.25のオッズで賭けた場合の8倍以上になります。予想されるリターン(運のみに基づく)を100%(または差し引きゼロ)と仮定すると、tスコアは次の式によって求められます。
nを賭けた数とする場合。その結果、同等のリターンとベット実績に関するtスコアは、1.25のオッズで賭けるよりも5.00のオッズで賭けるほうが、8倍以上小さくなります。
競馬のような市場によく見られるように、ロングオッズに賭けて高い利益を得ることは、必ずしも予想の才能が優れていることを意味するものではありません。同じ程度の運があれば、大きなリターン率を獲得することができるのです。
そのため、予想屋をランク付けするときによく見られるような、リターン率のみを考慮することは根本的に間違っています。ベットオッズを考慮に入れれば、tスコアによって、期待値を超えるリスク調整後リターンの基準が得られます。
偶然の計算
最後のステップは、tスコアを確率(p値)に換算することです。p値とは、偶然によってのみ発生する利益率の実績です。Microsoft ExcelではTDIST関数を利用することができます。これはTDIST(t、自由度、尾部)の形式で、tをtスコアとし、自由度は独立したデータの数であり、賭け金から1を引いた値に相当するものとします。
尾部の引数は1(片側t検定)または2(両側t検定)です。ここで重要なのは、利益が統計的に有意であるかどうかという点ですので、前者を推奨します。また、これらの値を入力可能なオンライン計算機を使用することもできます。
以下の表は、100回ベットして120%の投資利益率を獲得したベット実績に関する、tスコアとそれに相当するp値の例です。
オッズ |
tスコア |
p値 |
1.5 |
3.33 |
0.06% |
1.75 |
2.46 |
0.78% |
2 |
2.04 |
2.19% |
2.5 |
1.60 |
5.63% |
3 |
1.36 |
8.83% |
4 |
1.09 |
13.89% |
5 |
0.94 |
17.56% |
10 |
0.62 |
26.98% |
25 |
0.37 |
35.45% |
50 |
0.26 |
39.72% |
ベットの平均オッズを見てみると、平均オッズが、その利益率の要因が運または技術のどちらにあるかということに大きな影響をもたらしていることは明らかです。10.00以上のオッズで100回ベットして120%のリターンを得るのは、運によるものが大きいと言い切れます。
一方、勝ち目の高いオッズで同じリターンを得ている場合、利益率が上がったのは技術によるものである可能性がはるかに高いといえます。つまり、例えば予想屋のベット実績を比較する場合には、リターン率だけでなく、記録の長さや、勝利したときのオッズも分析する必要があるということです。