ホットハンドがまさに熱い

サンプリングバイアスの定量化

NBA All Starスリーポイントコンテストにおけるホットハンドシュート

ホットハンドの誤謬:直感 vs 分析

ホットハンドがまさに熱い

スポーツでは、運についての一般論として、ホットハンドというものがあります。ただし調査研究では、その概念は間違っていると主張されているものです。ベッターは、この好不調の概念を捨てるべきでしょうか? この記事では、その概念を捨てるのは誤りかもしれないという説を論じます。

1985年、マイケル・ジョーダンがNBAで新人王を獲ったのと同じ年、Journal of Cognitive Psychology誌に1つの論文が発表されました。バスケットボール選手には偶然で期待される以上に高いシュート成功率を示す期間がある、という一般に支持されていた認識の嘘を暴くと主張するものでした。

具体的には、論文の著者(Gilovich、Vallone、Tversky - 略称「GVT」)の結論は、バスケットボール選手にはシュートが勢いに乗る期間があるという広く浸透した説は「認知的錯覚」であるとされました。この現象は「ホットハンドの誤謬」として知られるようになり、より一般的な意味の「ギャンブラーの誤謬」と関連付けられています。この明らかなバイアスは、パターンを求め、ランダム性に意味を持たせようとする人間の欲求として説明されています。

スポーツでの勢いのムラ、つまりホットハンドが信じられているのは、もちろんバスケットボールに限った話ではありません。「好調」「火が付く」「ゾーンに入る」「運が向く」などの言い回しは、さまざまなスポーツ解説や分析で、ずっと当たり前に使われ続けています。

これは、GVTの発見や、これに続いてホットハンドの誤謬を調査した数多の論文を無視するものです。現在でも、スポーツを観戦する場合に、パフォーマンスにおける何らかの運、あるいはランダム性からの逸脱を示唆するこの手の用語に触れる解説なしで見ようとすると、苦労することになるかもしれません。

それでは、スポーツファンや解説者が30年以上も延々と、スポーツにおける勢いというこの考え方を持ち続けてきたのは、なぜでしょうか。新しい調査では、勢いの存在に関する直感は最初から正しかった可能性があるという説を示しています。

Surprised by the Gambler's and Hot Hand Fallacies? A Truth in the Law of Small Numbers』と題された研究論文で、MillerとSanjurjoは、GVTの調査ではバスケットボール選手には実際にホットハンドがあり、ホットハンドの誤謬はそれ自体が誤謬だ、と説いています。1985年のGVTの研究で誤った結論が出た原因は、単純ではあるものの重大な標本誤差にあります。例を使って説明するとよくわかるでしょう。

公平なコイン投げを5回行う場合を考えてください。2連続でコインの表が出た直後の結果を観測して記録するものとします。5回投げた後、あなたの記録では表が出た割合はどうなっていると予測されるでしょうか? 50%? 50%未満、あるいは50%超?

GVTが考えたように、コインは公平なのだから確率は50%のはずだと考える人もいるでしょう。しかし、正解は50%未満です。公平なコイン投げを5回行う場合、可能性は32通りあり、一連の結果は同様に確からしいものです。これは下記の2列目で示されています。

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可能性のある32通りのうち16通りで、5回目を投げる前に少なくとも2回連続で表が出ます。つまり、記録の必要があるということです。この16通りの記録について表が出た割合を見ると、8通りで0%、3通りで50%、1通りで67%、4通りで100%です。この16通りはどれも同様に確からしいとすると、2連続で表が出た後に表を記録する予想確率はわずか38.5%です。

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この結果は直感に反するものと思われますし、GVTの論文に含まれる、またこれに続く「ホットハンド」の研究で見られる誤りにつながるものです。バイアスについて視覚的に理解するために、1回表が出た後に続けて表が出る可能性を知る、単純なシナリオを考えてみましょう。次の図は、公平なコイン投げを500回まで行う期待値をグラフ化したもので、5,000回のシミュレーションで導きました。

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サンプリングバイアスの定量化

このバイアスは、オレンジ色の線と無条件の真の期待値50%との垂直距離として定量化が可能です。コインをちょうど10回投げた場合、表が後に出た表を記録する確率は44.5%です。したがって、バイアスは5.5ポイントです。

スポーツの話題で考えると、シュートをたった1回決めた後、あるいは1点取った後でホットハンドに言及するのを聞くことはないでしょう。下の図は、k回の連続成功に続いて成功する確率のバイアスを、真の確率を50%と想定してグラフ化したものです。こちらも、5,000回シミュレーションを使いました。

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連続回数の長さとともにバイアスが上昇し、試行数とともに下降するのがわかります。GVTは研究の中で、制御されたバスケットボールシュート実験を考案しました。その実験では、25人の大学生選手がそれぞれ100回シュートして、k回成功あるいは失敗した後のシュート成功率が記録されました(k = 1,2,3)。

各選手のシュート位置は、成功率50%を想定することで決定しました。GVTは直接、一連の連続成功後のシュート成功率と、同等の一連の失敗後のシュート成功率を比較しました。彼らの仮説は、k回成功後に成功する確率と、k回失敗後に成功する確率は等しいというものでした。

しかし、先に見てきた通り、このパーセンテージが同じだとは想定できません。選手の100回の各シュートについて成功する真の確率が50%だと仮定すると、3連続成功後の成功確率は約46%です。対照的に、3回連続失敗後の成功確率は約54%です。

バイアスの大きさを並べると同じですから、ホットハンドシュートというツキに関するGTVの結論を裏返すことができます。大多数の選手には、実際にホットハンドシュートが存在していました。スポーツに関しては、「成功」の確率が50%で一定になることは考えにくいです。たとえばNBAでは、フリースローの平均成功率は75%です。  成功確率でバイアスがどう異なるかを理解するため、成功確率75%のバイアスを、5,000回のシミュレーションから、下の図で推計します。


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2つの図を比較すると、成功確率が上昇するに連れて、バイアスの値が小さくなるのがわかります。たとえば、100回の試行であれば、5回成功後の成功率は、無条件確率が50%と75%の場合で、38%と72%でした。これはそれぞれ、12%(50% - 38%)のバイアス、3%(75% - 72%)のバイアスに等しいと考えられます。

NBA All Starスリーポイントコンテストにおけるホットハンドシュート

次に、ここ4年間(2015 - 2018)のNBA All Starスリーポイントコンテスト出場者に、ホットハンドシュートが見られるかを調べます。コンテストは、状況とシュート位置が同一で、ディフェンスのプレッシャーもありませんから、それ自体がホットハンドの分析に適しています。この形式では、選手は各ラウンドで、アークの周りの5つのセットポジションから、25投のスリーポイントシュートを試みます。

4年にわたって、46人の選手が競い、合計1,150投が放たれ、成功率は54%でした。下の表は各選手のシュート成功率を、1回成功後、1回失敗後、2回成功後、2回失敗後という条件付きで示したものです。

NBAスリーポイントコンテストの統計

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シュート成功率は、1回あるいは2回成功した後では平均よりも高く、また1回あるいは2回失敗した後では平均よりも低くなっています。

11列目で、1回成功後と1回失敗後のシュート成功率の差を計算しています(1回成功後の% - 1回失敗後の%)。GVTは、ホットハンドシュートの検証にこの差を用いました。

GVTが行ったように未加工の数値を使うと、4度のコンテストにわたって、24人の選手が正の値、21人が負の値で、平均すると選手の成功後の成功率の方が10ポイント高かったことがわかります。ただし、今はサンプリングバイアスを知っているので、これを考慮する必要があります。

もし基本的な仮定として各選手の成功率が54%(平均)だとした場合、1度シュートを決めた後のシュートを決める確率は約52%です。対照的に、1度ミスした後のシュートを決める確率は約56%です。したがって、サンプリングバイアスを考慮するため11列目に4%を足すことができます。

補正を行ったので、正のパーセンテージは選手がシュートを決めた後の方が失敗した後よりも良い結果を出したことを意味する、と統計を解釈できるようになりました。補正後で見ると、32人の選手が正の値、14人が負の値でした。平均では、各選手のシュート成功率は、成功後では14ポイント高くなりました。これは、ホットハンドシュートの強力な証拠を示すものです。 

12列目(2回成功後の成功率 - 2回失敗後の成功率)のそれぞれを補正すると、30人の選手にホットハンドシュート(正の値)が見られ、バイアスを考慮しなかった場合の19人から上昇しています。2回成功後のシュート成功率の上昇は平均で29%で、やはり最近のNBAスリーポイントコンテストでホットハンドシュートが見られたことの強力な証拠となるものです。

直感 vs 分析

ホットハンドの誤謬は30年以上続いてきましたが、スポーツファンや解説者の、ホットハンドの誤謬はそれ自体が誤謬であり、パフォーマンスの勢いは存在するという確信も同様です。「ムラがある」「同調する」「火が付く」といった言い回しがスポーツの表現から消えることはありませんでした。これはスポーツのパフォーマンスを説明しようとするときには、直感や本能が統計的な分析と同様に重要である可能性を示すものです。場合によりどちらもバイアスを含むことが前提です。

スポーツにおける勢いは、学会では最近になって肯定的に立証されたところかもしれませんが、ブックメーカーはずっとその存在に気づいていました。スポーツ、チーム、選手に応じて、試合中のオッズの値付けモデルには一般的に勢いの要素が組み込まれています。

以前の記事では、プロテニスの試合におけるセット間の勢いの効果を紹介しました。統計的な分析による予測であるか、本能による予測であるかに関わらず、どちらのチーム、あるいは選手がオッズに反映された暗示的な確率を上回りそうか、あるいは下回りそうかをより正確に見定めることができれば、ベッターは利益を上げることができるでしょう。

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